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May2014
ある日の日記(14)

骨董市の会場、アレキサンドラ宮殿の入り口。

宮殿から見たロンドンの町並み。右手の遠くに見える高層ビル群は、シティと呼ばれる金融街。

雨がぱらつく中、ロンドンのアレキサンドラ宮殿での骨董市へ。
いつもより少し出遅れてしまって、
朝9時ごろに会場に着いたらすでに大勢のひとで賑わっていた。

まず、ざっとストール(出店)を見てまわったら
19世紀のフランスのガラス製ジュエリーボックスを
とても良心的な値段で販売しているディーラーがいて迷わず購入。
厚みのあるガラスと真鍮のふちどりが雰囲気のある品だ。
イベントでジュエリーを展示するときなどに役立ちそうである。


会場の入り口付近。


メイン会場の中。この女性からヴェネチアンガラスでできた1930年代の花のネックレスを仕入れた。
 

ふと顔をあげると、向かいのストールでTV撮影が行われていた。
まわりの人たちが「例の番組よ!」と言って浮き足立っている。
BBCの人気番組「バーゲン ハント」だと私にもすぐわかった。
応募に当選した4人の視聴者が2人ずつ青組と赤組に分かれ
青色と赤色のフリースジャンパーに身を包む。
そして、骨董市やカーブーツセール(バザーのようなもの)で
制限時間内に300ポンドの予算で「掘り出し物」をさがす。
それらの品をあとから競売にかけ、
結果的に売り上げが多かったチームが勝ち、
利益分は賞金としてもらえる、という内容である。
古いものを愛するイギリスには
こういう骨董番組がほかにもいくつか存在するけれど
「バーゲン ハント」は司会者ティムの個性的な蝶ネクタイ姿と
ユーモアのあるトークで誰もが知る国民的番組となっている。



赤組の品物探しの様子。


一方、こちらは青(紫っぽいけれど)のジャンパーのふたり。


「バーゲン ハント」の名物司会者ティム。「写真?もちろんいいよ」と応じてくれた。
それを見ていたファンたちから、このあと撮影攻撃にあう。
 

アレクサンドラ宮殿の骨董市では、毎回鑑定コーナーが用意されている。
食器、本、ジュエリーと何を持ってきても構わない。しかも無料だ。
私もジュエリーのことでいくつか質問があったので
並んで順番を待っていたら、同じく順番待ちをしていた
年配のイギリス人女性に話しかけられ、仲良くなった。
彼女、スーは宮殿の近くに住んでいて、友人と一緒に
家にあった古い絵を鑑定してもらいに来たのだそうだ。
「バーゲン ハント」のティムの大ファンで、
携帯電話のカメラでさっき写真を撮らせてもらったが、
ぶれてしまってうまく撮れなかったとしょんぼりしていた。
私が撮った写真でよければ、メールで送りますよというと
ぱあっと顔が輝いて、教えてもらったメールアドレスにその日の晩
何枚か送ると、翌日心のこもったお礼の返事が返ってきた。

鑑定の順番を待っているあいだ、私はスーから
アレキサンドラ宮殿が1980年代に火事にあった話を聞いた。
家の窓から丘の上の宮殿が炎に包まれているのを見たとき
この町のランドマークが焼失してしまう、と悲しくて涙が出たこと。
再建されたけれど、予算が足りなくて天井が安っぽいモダンな素材に
なってしまったこと。

スーとはもう会うことはないのかもしれないけれど、
待ち時間もすっかり忘れるくらい
アンティークやロンドンの話をして盛り上がった。
こうした骨董市での思いがけない出合いが、私はとても好きだ。


左の男性が、ヴァリュアー(valuer)とよばれる鑑定のプロ。


ピンクのセーターを着た女性がスー。古い絵画を見てもらっているところ。
 


2014-05-30-FRI

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