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ある日の日記(10)

遠くに朝もやが残るイングランドの丘陵

久しぶりに伊藤まさこさんがイギリスへ遊びにきてくれたので
ロンドン郊外へ一緒に小旅行へ出かけた。

厳密に何をするか決めていたわけではないけれど
イングランドの田舎町には少なからず
アンティークショップがある。
だから、素敵な掘り出しものを期待して
丘陵にのびる細い道なりに車を走らせた。

2日間にわたって骨董屋をはしごしたのち
たどり着いたのは
北欧とイギリスの古いキッチン用品を扱う店。

たまたま、訪れた時間帯は
客が私と伊藤さんしかいなかったため、
白髪まじりのイギリス人の女店主は
「お茶でもどうかしら?」と声をかけてくれて、
私たちは渡されたマグの紅茶をすすりつつ
並んでいる商品について彼女に質問をしたりした。

まだ午後3時すぎにもかかわらず、
とっぷり日が暮れ、外は人けなくしんとしている。
物選びに落ちついて意識を集中できる、
心地よい時間だった。

北欧とイギリスの古いキッチン用品を扱う店にて

旅の間に、伊藤さんは19世紀に作られた小さなグラスや
銀製のカトラリー、ヴィンテージのリネンなどを。
私は丸い額に入った雪景色の絵と
イギリス製のヴィンテージの陶器の鳥を購入した。
一方、欲しいと思うジュエリーは見つからなかった。
今回は縁がなかったのだろう。

私が買った2品。
左の鳥は、くちばしに穴が空いていて、そこから紐を出せるようになっている。
紐をひっぱるたびに、お腹に入れた紐玉がくるくる回転して紐が出てくる仕組み。
尾のてっぺんには鋏を挿し、お尻側の面を壁に掛けて使うことができる。

伊藤さんは、物を選ぶときいつもあまり迷いがない。
対照的に、私はこの陶器の鳥を買うときも
「くちばしの部分がもうちょっと尖っていたらな…」
「可愛いけれど、目が魚っぽく見えなくもない」
などと腕組みをし、ウンウン唸っていた。
そんな姿を見て伊藤さんは一言、
「迷ったら買うべし」
と男前なアドバイス。
アンティークやヴィンテージは同じものに再び出会える
可能性が低いから、どうにも決めかねるくらい迷うなら
あとで後悔しないように、というのが信条だそうだ。

スタイリングのプロに背中をおされて
ロンドンに連れて帰った鳥は、
結局、予想以上に我が家にすっとなじんでくれた。

(一月の更新へ、つづきます)


2014-01-27-MON

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