Hobo Nikkan Itoi Shinbun

はじまりを、はじめよう。

Begin the beginning! 08 そら植物園と なにができるかな?

プラントハンターの清順さんと
いっしょに、なにができるかな?
さっそく、はじめてみます。

2012.05.11

はじめに ─ そら植物園

清順さんのプロフィールはこちら


ある春の、雨あがりの夕刻。
糸井重里は、東京・代々木の
代々木VILLAGEにある
「そら植物園」の事務所を訪れました。

代々木VILLAGEの庭には、
推定樹齢500年のオリーブの木や
「こんな生き方をしてるんだ」と
驚くようなめずらしい木や草が
たくさん植えられています。

これらの植物を
我々に見せてくれているのは、
「そら植物園」の清順(せいじゅん)さんです。

清順さんは、140年以上つづく
植物卸売業の会社「花宇」の5代目であり、
また、世界じゅうを旅して植物を採取し仕入れる
「プラントハンター」でもあります。

「こういう植物がほしい」とオーダーを受け、
その条件を満たすもののめぼしをつけて
ハンティングに向かい、
望まれる時期に望まれる状態で
(たとえば、花を満開にして)届けたり、
プラントハンティング中に
出会った植物を広く紹介したり。
植物のまわりで起こるさまざまなことを
生業にしています。

「植物が開けてくれる扉は
 じつはたくさんあるんですよ」
と清順さんは言います。

植物が開くBEGINNINGの扉は
いったいどういったものなのでしょう。
そら植物園のあつかう木や花を眺めながら
清順さんと糸井重里の対話がはじまります。

糸井 このオリーブの木は、
根と幹しかないようにも見えるけど、
樹齢推定500年なんですね。
すごい生命力だなぁ。
清順 オリーブは、ほんとうに丈夫なんですよ。
むかしから、生命力や繁栄の象徴と
いわれているだけのことはあります。
糸井 1本の木というよりは、なんだか
集団みたいな雰囲気があるね。
清順 はい。何世紀にもわたって生きている植物は、
ぜんぜんちがいますね。
糸井 貫禄がちがうね。
ちょっとこの木と
記念写真撮っていいですか?
清順 ぜひどうぞ。
糸井 このポーズかな。
一同 (笑)
糸井 それか、これ。
清順 いいですねぇ(笑)。
糸井 このサボテンみたいな植物、
プレートに
「マダガスカルの子供のおやつ」
って書いてあるけど‥‥?
清順 これ、いまマダガスカルで増えすぎて、
ちょっと問題になってるんですよ。
なぜかというと、
このサボテンは、ピンクの実がなるんですが、
それをおなかがすいた子供が食べる。
そして、ペッと種を吐く。
糸井 あ‥‥なるほど。
清順 その種が芽を吹いて、増えていくんですよ。
もともとほかの国の植物だったものが
そこに居ついてしまうことを
「帰化」というんですが、
これもその例で、
マダガスカルでは問題になっているんです。
糸井 なるほど。
清順 でも、この植物が
現地の食糧になっていることはたしかです。
深刻な砂漠化の問題を抱えている国にとっては
こういったメキシコあたりの植物は、
水のない場所でも緑化できるから
重宝されていたりします。
糸井 いい、悪い、の単純な問題ではなく。
清順 二面性があるんです。
そういうことを、ここでふと立ち止まった人が
おもしろく読んでくれればいいな、と思って
プレートに書いています。
糸井 うん。このプレート、
読んでいくと
ほんとうにぜんぶおもしろいね。
清順 ありがとうございます。
糸井 ところで、
寒い地方の植物も南のほうの植物も
こうやって全部
いっしょに植えてて大丈夫なの?
清順 そうですね、ここではすこし、
実験的なこともやってるんですが‥‥
逆に、ここを通り過ぎていく人たちが
「こんなに寒いけど、
 この植物は大丈夫なのかな?」
と思ってくれたらいいな、と。
糸井 うん、それは思うよ。
「あれ?」って思う。
清順 そこがまずは大事かな、と思っています。
だって、朝鮮の木の横に
アンデス山脈の植物があって、
その横にペルーが来て、
こいつなんかイタリア、ギリシャ。
糸井 これはままたおもしろい看板ですね。
「性なる木」?
清順 この紫の実を食べるとね、
エッチにならなくなるんですよ。
糸井 え?
エッチになるんじゃなくて、
ならなくなる?
清順 性欲が抑えられるといわれているんです。
糸井 ああ、どうりで、
俺は子供のときからこればっかり食べてて‥‥
親が毎日、これ食べるんだよって言うから‥‥
おかゆとかに混ぜて。
一同 (笑)
糸井 うん。この看板、
ものすごく大事だと思う。
清順 ほんとはもうちょっと
文を短くしたいんですけどね。
だけど、時間のある人は
ずっと読んでいってくれるから
少し長めでもいいのかなぁ、と思っています。
毎日1個でも、見て、印象に残して
帰ってくれたらうれしいです。
糸井 ほぅー。プレートによると
この木は。
清順 はい。
糸井 こんなにニョキッとしてるのに、まだ子供なの?
清順 いま、この木は12メートルくらいですけれども、
もっと伸びるんです。
記録では、50メートルくらいいきます。
糸井 5倍! すごい。
清順 30メートル級であれば、
ヨーロッパでもよく見かけます。
糸井 まっすぐだなぁ。
清順 潔いです。
糸井 根も大きいの?
清順 根も張ってます。
ものすごく根がでかくて、
持ってくるとき
代々木の駅前通って、
ここに植えるのが大変でした。
糸井 うわぁ、そうなんだ(笑)。
ここにある植物、
ほんとうにどれもおもしろいね。
清順 はい。
わかりやすかったり、
妙なものって、とっても大事です。
それで、見る人たちの
ドアが開くんやったら俺はいくらでもやる。
そら植物園の、
私たちにとってはめずらしい植物に触れながら
清順さんによる、植物のドアが開こうとしています。
清順さんといっしょに何ができるのか、
この場でお伝えしていこうと思います。
(清順さんと糸井の対談、次回へつづきます)