BASEBALL
スポーツ新聞を
読みつくすんだ!

第6回
軍の機密

光山英和と吉原孝介のトレードがあった。
シーズン中の同じリーグのキャッチャー同士のトレードを
異例のことと各紙は報じた。
こりゃ絶好のネタだと思ったんですよ。
スポーツ新聞にとってね。

巨人が中日に打診したのは、新聞の報道のとおり、
村田捕手の死球による戦線離脱があったからでしょう。
光山を巨人に渡したらどうなるか、
中日はそのシミュレーションをしたと思うんですね。

死球が4月9日で、トレードの発表が5月16日。
オファーはいつの時点だったのか。
最初から吉原と交換でという話だったのか。
中日サイドから吉原指名でボールが投げ返されたのか。

このトレードが自分の知らないところで決まったと
星野監督が怒った、という記事が一部にあったけど、
それはちょっと信じられない。
星野は鉄拳制裁の熱血漢からクールな策士みたいに
なろうとしているように感じるんですね。
「そんな話は聞いていないゾ」と怒ってみせたとしたら、
それも策のうちではないかと僕は思っております。
違うかな。

吉原とならと返答があって巨人がそれを受けたとすれば、
自軍の機密をにぎる捕手を交換するにあたって、
中日には、サインの全面変更とか、
ひそかに周到な準備をすすめる時間があり、
巨人にはその準備のための時間が少なかった、
ということにならないか。

両チームの対戦は6月1日だから、時間ならある、
それまでに対策を講じればいいということか。
ほんとにそれで大丈夫なのかなぁ。

中日にしてみれば、中村武志という正捕手がいて、
つぎの正捕手は彼だろうといわれる鈴木郁洋がいる。
戦力として以上に、吉原のもってくる情報が
欲しかったと考えちゃいますよね。

サインのことは対策のとりようもあるだろうけど、
投手のクセとか、
ロッカールームでささやかれている首脳陣批判とか、
野手と投手の不協和音のほんとのところとか、
情報といってもいろいろある。
機密が流出する。
亡命した北朝鮮の要人の話題みたいになっちゃってるか。
考えすぎかなぁ。

なのに、このトレードの水面下の動きというか、
舞台裏のかけひきというか、そういう話を
スポーツ新聞はなかなか書いちゃくれない。
せっかくの絶好のネタなのに、
手を出さずに見逃しちゃってる。
考えなさすぎじゃないかなぁ。

サインの変更があわただしくおこなわれて、
巨人の選手たちからなんでこんな時期にと
不満がもれたという記事があるにはあった。
ただし、スポーツ紙ではなく、
夕刊紙とか週刊誌でしたけどね。

そりゃ軍の機密にかかわることだけに、球団関係者も
そうはペラペラとしゃべってはくれないだろうけど、
ここまでなら話せる、ここまでなら書けるというものが
まだあるだろうと思う。
違うのかな。

メジャーリーグでは、
昨年、ドジャースのピアッツァ捕手が
マーリンズを経てはいるけど、メッツに移った。
シーズン中に同じリーグのチームへキャッチャーが、
それもバリバリの正捕手が移っちゃったわけで、
これには驚いたけど、
向こうじゃそんなに異例なことでもないんだろうか。

メジャーは力と力の勝負で、サインを読んだり、
データをほじくりかえしたり、ウラをかいたり、
そういうチマチマした日本の野球じゃないから、
キャッチャーのトレードだって
たいしたことじゃないんだよってことは、
ほんとにあるのだろうか。
それについては、
僕なんかにはほとんどわからないことです。
メジャーの事情に詳しい人、どなたか教えてください。

ただ、わからないなりに、メジャーの水面下の動きだって
ものすごく熾烈なものがあるし、
巨額のマネーも動くと想像はしている。
マーリンズ経由のメッツ入りってこと自体、
水面下でいろいろあったことを語っているように思えるし。

この原稿は5月31日に書きました。
明日から、その巨人中日3連戦であります。

1999-06-02-WED

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