BASEBALL
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第5回
66代の横綱と、66代の4番打者

野球ってのは5回戦って3回勝ったチームが優勝で、
2回しか勝てなかったチームが最下位で、
そのあいだに4チームがはさまっているようなものでしょ、
まぁあせらずやってもらいますよ。

クラウンライターライオンズが西武ライオンズになり、
新しい血をいれるというより、背骨も心臓も
総とっかえしたかのような大改造がおこなわれて迎えた
はじめてのシーズン、79年。
この年のニューライオンズの勝率は、
クラウンライターのときよりも低かった。
そのとき堤義明オーナー、少しもあわてず、
冒頭に書いたようなことをおっしゃったのです。
20年もたつのになぜか憶えているんですよね。この言葉。

松坂大輔の、自信が確信にかわりましたという言葉も、
20年たっても、きっと憶えているだろう。
もしかするとこのピッチャーは、20年後もまだ
現役で投げているかもしれない。
東尾修の生涯勝利251を超える勝ち星をあげて。

5試合を1単位とすると1シーズン135試合は27単位。
3勝2敗ペースなら81勝。
これはもう堂々の優勝でしょう。
逆に81敗なら最下位。あいだに4チーム。なるほど。
3勝2敗はやすし。それを1シーズン続けるのはかたし。
基本は3勝2敗でいいのだから、
うまい負けかたをめぐって、
捨てゲーム是非論がおきたりする。
辛勝大敗がよい、大勝惜敗はよくない、
そう持論を語った名監督もいたようだ。

高橋由伸が巨人の66代目の4番打者になった。
66代なんて横綱みたいじゃんと思って、
好角家にきいたら、いちばん新しい横綱
若乃花も66代なんだという。

初代4番は永沢富士雄という人だった。
ただし4番は1試合だけだったようだし、
あまりいい成績は残していない。
1936年、昭和11年のこと。
その年に横綱になったのが34代の男女ノ川だそうです。
ナメノガワと読むらしいけど、
この四股名、ちょっとエッチっぽくないっすか。
1対34だったのを63年かけてついに追いついたわけか。
これってめでたいことなのかなぁ。
いま、相撲がなんだかたいへんそうだ。
相撲は15日制だから3勝2敗ペースをあてはめると
3単位で9勝6敗。
27単位に比べれば3単位は短期戦だから、
もう少し勝率は高くなるのはわかる。
でも、12勝の優勝ではレベルが低いってことは
ないと思うし、展開によっては、11勝、10勝で
数人で決定戦というケースが
もっとあっていいような気がする、ほんとうなら。

野球と相撲をいっしょにしてもしかたないか。
でもなぁ、野球は力が接近しているチーム同士の対戦だから
観ていておもしろいんでね。
相撲だってそうじゃないのかなぁ。
いや、違う。相撲にゃ綱の威信というものがあるのだ。
横綱はひときわ高い地位なのだ。
でも、いま大相撲がたいへんそうなのは
その威信のせいにみえてしかたない。
週刊ポストが告発している問題なんかもふくめてね。

図抜けた存在がいなくて、ほとんど力の差のない
12、13力士くらいが入り乱れて星をつぶしあう、
本命不在の大混戦場所、バトルロイヤル場所では
どうしてだめなんだろうか。
それじゃ綱を締める力士を決められないから、なのかな。
力の拮抗した者同士で1場所15番、
1年90番も対戦して、勝率6割で、
それを上回る勝ち星をあげた力士がほかにいなければ、
彼がその時点での最強者、チャンピオンでいいのにね。
暫定横綱とか。優勝10回で永世横綱になるとかさ。
でも実際は、平均9番じゃ、横綱どころか大関だって、
クンロク大関とか揶揄されてしまう。

結局、相撲は綱の威信というものを
捨てることはないだろう。
なぜって、それが相撲だから。
高橋由伸に求められているのは、
ひときわ高い地位とかそんなものじゃないと思う。
5回戦って3回勝つこと。
それを積み重ねていくこと。
そのために状況に応じてベストをつくすこと。それだけ。
それができれば、堂々の優勝なのだから。

1999-05-25-TUE

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