第1回
ああ、この人は、
お父さんなんだ。
第2回
だから、俺はもう
ケンカはしない





── いま公開されている映画
「お父さんのバックドロップ」では
お父さん役で主演されているんですけれども、
宇梶さんご自身、「お父さん」で
いらっしゃいますね。
宇梶 はい、19になる息子がいます。
── そのくらい大きくなっても、
子どもはかわいいですか?
宇梶 いまでもかわいいよ!
あのね、子どもがたまに、
フッといいこと言ったりするんです。
例えばね、うーんと、
「○○ということを大事にしたいんだよね〜」
とか。
すると俺は子どもの顔を
爛々と見つめて言っちゃう。
「すんげえいま、
 おまえに
 むしゃぶり
 つきてえ!!」
── ハハハハ。
宇梶 「超かわいいよ
 おまえー、
 大好き」

なんて言ってね。
子どもはもちろん
「やめてくれよー!」
って逃げます。
そりゃあ実際には俺も、
19の息子相手にやらないけど、
むしゃぶりつきたい気持ちはほんとうです。
── 生まれてからそんな歳になるまで、
いや、最後までずっと
子どもはプレゼントをくれるものなんですね。
宇梶

自分の子どもに限らず、
ほかの子どもでもそうですね。
自分の子どもは近いところにいるし
失敗も許されるから、
いろんなことができるだけで。

俺自身は、早いうちに親と離れてるから、
いろんな面で被害者意識が強かったんです。
自分で家を飛び出したくせにね。
「あれが、これが」と
いつも何かのせいにしていました。
いまはそれを頭で理解して
感情的にならないようにしてるけど、
やっぱりどうしても、どこかにそれがある。

そういう自分の経験を野放しにしたら、
どうなるかというと、
「個性が悪く出ちゃう」んです。
つまり、人に嫌な思いをさせてしまうことになる。

でもね、うちのせがれみたいなガキとか
そのへんにいる小学生や中学生くらいの
「自分でしゃべることができて
 自分の思いで
 あちこち行ったりできる」やつらと
いっしょにものを考えることによって、
「あのときはなかった」「さみしかった」
「悔しかった」ということが
回復できるような気がするんです。

── 育っていく人たちと、いっしょに。
宇梶 うん。自分が、親を恨んで
大人といわれる年齢まで
達しちゃったことについて、
「自分に欠損があるまま大人になっちゃった」
と、意識していたんです。
だから自分の子どもには、
何かが欠けていると意識させたまま、
俺みたいな生き方をさせちゃいけないな、って
思ったんですよ。

生き直そう、
この子といっしょに生き直そう、と思った。
俺たちは親子というだけではなくて、
19年間いっしょに大きくなったんだと思います。
若さのくれるすばらしさって、
たぶんそういうことですよ、きっと。
── 「子どもとふれあうようになってから
 涙もろくなって困る」
というメッセージが
「ほぼ日」にもよく届くんですが。
宇梶 うん、俺もそうですよ。
1回しかない人生だもん、
泣いたり笑ったり怒ったりできたほうがいい。
振り幅が大きいほうが豊かですよ。
でも、それを自分で
「俺、泣いてる泣いてる」
って、客観的に思えてればいいですね。
自分を俯瞰していくのが
大人の責任と言えると思います。
第4回
あのシーンは俺ひとりで
生んだものじゃない
第5回
うまくはないけど、
嘘をつかない演技。
第6回
あいつが、
がんばれなくなるから。
第7回
中島らもさんが
敷いた世界に。

 
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2004-11-08-MON

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