有吉が、 窓から風を 入れましょう。 有吉弘行+糸井重里

第3回 かきまわしたい。
糸井 上島(竜兵)さん、最近も泣いたんですって?
有吉 はい。
「おまえらに会えてうれしい」
「おまえらと飲めて幸せだ」
って、泣いてました。
すごいなと思うんです。
糸井 それは、心からだもんね。
あの人がいなかったら、
いまの「有吉」は、ないですよね。
有吉 はい、絶対ないです。
糸井 まずは自信を全部失っちゃうでしょ?
有吉 ホントに。
糸井 芸能界で、そういうケースって
はじめてかもしれませんよ。
親方が拾ってくれて「がんばれよ」という
パターンはあると思うけど、
上島さんの場合は、まるで
空中ブランコの下のネットですよね。
有吉 はい。
糸井 しかも、汚れた‥‥はははは。
有吉 はははは。
一同 (笑)
有吉 ホントにびっくりさせられます、あの人には。
仕事がまったくないぼくに、
「お前がいないとオレは生きていけないんだ」
って言うんですよ。
糸井 (笑)
有吉 世間の、どこからも必要とされてないぼくを、
ただひとり、必要としてくれるんです。
「じゃあ、この人のためにがんばろう」
って、ぼくは思えました。
糸井 なるほどねぇ。
‥‥有吉さんの
「売れない時期」ということよりは、
テレビの変化ということにもなるんだけど。
有吉 ええ。
糸井 テレビで「おもしろいこと言えよ」と
要求されること自体が、
すでに選ばれた人だと、ぼくは思うんです。
「出てるけど、要求されてない人」
というのが、じつは山ほどいて
そういう人たちは、
「隙間だけ埋めろよ」と
言われてるわけでしょ?
有吉 はい。ぼくもわりと
信じられない気持ちでいるんですが、
何の発言もなく、
たのしくやったらもうそれでいいと、
ご機嫌に帰って行く人たちがいます。
それをまのあたりにすると、
そうなんだな、って思います。
自分も、そういうふうに
なりたいとは思うんですけども。
糸井 うん。
有吉 だけどぼくは、やっぱりいまだに、
ひとつうまくいかなかったことがあると、
もうやめよう、
いなくなっちゃったほうがいい、と
思っちゃいます。
だから、たのしくやって、
番組盛り上がったからよかったね、
というふうには
なかなか割り切れないです。
糸井 たのしく帰って行く人たちを
うらやましいと思います?
それとも、コノヤローと思います?
有吉 どっちでしょう。
‥‥かきまわしたいな、壊したいな、
というのが正直なところです。
「和気あいあい」ってのが、どうもダメで。
糸井 それは、一種の、血なんだね。
有吉 はい、たぶん。
糸井 むかし、不良だったんですか?
有吉 ぜんぜん不良じゃないです(笑)。
けっこう快活なスポーツマンでした。
文科系でサブカルやってたとか、
そういうことはないんです。
糸井 そのあたりについても、有吉さんとしては誤算で、
自分の場所をつくるのが
きっと難しかったんでしょうね。
つまり、有吉さんは、いちいち、
持ってる資質とちがうところで
うまくいっちゃったんですね。
有吉 ふはははは。
そうなんです、
おかしいですよね。
糸井 お笑いをやろうと思った理由は?
有吉 それは、単純で、もてたくて。
糸井 うん、うん。
有吉 『オレたちひょうきん族』とかが好きで、
みんなの人気者になりたくて、
明るい人間になりたくて‥‥。
だけど、どんどん逆の方向に行ってしまいました。
糸井 芸人さんって、よく
明るい人と暗い人とに分かれる、と言われます。
明るいに決まってる人と、
暗いけど笑わせる人と‥‥
有吉 はい。どっちかですね。
真ん中の人はいないです。
ぼくはたぶん、陰湿なほうです。
糸井 暗いほうだったわけですね。
有吉 はい、暗いほうです。

(続きます)

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2009-11-11-WED