#01 検索エンジンの言うFUKUSHIMA

検索エンジンに
「ふくしま」と「FUKUSHIMA」を入れてみる

「アルファベットのFUKUSHIMA、
漢字の福島、ひらがなのふくしまと
3つの単語で画像検索する。
FUKUSHIMAは原発事故の悲惨な様子ばかり。
ひらがなでは、伝統的な文化や
地域の特徴などが分かる画像が出てきます。
漢字の場合は両者の中間です」

ステファノ・ヤクスさんの
カンフェランスでのプレゼンです。

彼はミラノ大学経済学部で統計学を教えています。
また、スピンオフでブログやソーシャルメディアの
テキスト解析を専門とする企業も立ち上げています。
7月、日本語を教えるティツィアーナ・カルピさんと一緒に
学生を福島に連れていきました。

これまで東京大学や早稲田大学で専門分野を教えるために
日本に短期的に滞在したことはありますが、
日本語が話せるわけではありません。
その彼が、福島という単語の3つの表記の仕方で、
紐づけられている情報が明確に異なることを指摘するのです。

イタリアの大多数の人は「FUKUSHIMA」でしか
情報を得ることができません。
「あんなところに人が住んでいるのか?!」と驚くのは、
当たり前といえば当たり前の情報環境です。
ここに安全な食品が流通していると想像するのは難しい。

日本にいる人は漢字とひらがなの情報を受け取っています。
それだけでなく、人の口を介した情報が
目に見えないカタチで流れています。
ネガティブな態度からポジティブな態度に変わる
タイミングや動機の数が、
イタリアとの間ではまったく違います。

いとこのトンマーゾの話とネットの情報がつながる

ヤクスさんはソーシャルメディアに流れる
テキストの解析をしているので、
インターネットでおきている現象をよく観察しています。
彼は3つの問題点を挙げています。

「第一はインターネットに掲載されている情報こそが
真実だと思ってしまう、
いわばクリティカル・シンキングの欠如です。
情報源の裏づけなんかとらない。
二番目は、情報の選択を極めて好みで決めている。
例えば占星術が好きなら、
天文のサイトには絶対行かないわけですね。
最後の点は、口伝えの内容を信じやすい。
いとこのトンマーゾから聞いた話であるなら、
そのまま信じてしまうというように」

インターネットのない
マスメディア全盛時代でも同じ傾向はありました。
が、専門家によって吟味されないで流通する情報量の増大や
情報の選択肢が拡大したことによって、
人のこれらの特徴が
よりはっきりと外に出てきている、というわけです。

この特徴を3つの福島の単語表記にあてはめた場合、
日本語の読めない人たちにとって
福島の現実を知るのが如何に難しいかが分かるでしょう。
しかも、インターネットの記事はタイトルしか読まずとも、
そのまま思ったことをコメントに残すことができ、
そのコメントが多くの人々に
「真実」と思わせるサイクルがあります。

タイトルだけで記事を批判する人たち

例をあげましょう。
ヤクスさんは福島に出かける前と後、
メディアに2つの福島の記事を執筆しました。
福島の食の安全のための検査体制や
文化交流について書いたのです。
日刊紙「コリエーレ・デッラ・セーラ」オンライン版の
大見出しは、
「福島、私たちは恐れないといけないのか?」。
小見出しが
「3月11日の災害の被災地への旅、
ミラノ大学の日本語学科の学生が
視察と文化交流を目的に出発」です。

しかし、残されたコメントは
「イタリアが国民投票で原発廃止になって良かった」
というもので、
「このミッションでイタリアに
原発を持ち込むつもりなのか?」
と言わんばかりです。
もちろん、ヤクスさんはそのようなことを書いていません。

旅行後に「ワイアード」に、
震災で破壊された地域の工場が
新しい技術で農業をスタートさせていると書いても、
「現実とはかけ離れている」とコメントが。
現実に動いている状況なのに「かけ離れている」とは、
明らかに読んでいない証拠でしょう。

かといって、口汚いコメントを残す人たちに片端から
「記事をちゃんと読め!」「現場に足を運べ!」と、
返事をすることも容易ではありません。
「自ら、現場に足を運び、その感想を友人などに
伝えていくしか方法はないのではないか」との想いを

ヤクスさんは強くします。

水の流れを変えるソーシャルメディア

ここまで紹介するとヤクスさんが
ソーシャルメディアなどにも
否定的な態度をとっている印象を与えてしまいます。
が、前述したように、
彼はそのコンテンツの解析を得意分野としています。
カンフェランスから数週間後に会った時、
友人のハーバード大学の社会科学のエキスパート、
ケリー・キングさんの研究成果を例に出しながら、
この分野でこそ「福島問題」に
貢献できることがあるはずと語ります。

キングさんは、
中国の膨大なソーシャルメディアを対象にした
検閲データ解析結果から、
中国の公的機関の検閲の目的は
「政府批判の声を抑えることではなく、
瞬間風速的な動きが
リアルな集団行動につながるのを抑制することだ」

と結論づけています。
ソーシャルメディアの瞬間風速の動きを
街頭デモなどの導火線として注意しているわけです。

それはソーシャルメディアが
「水の流れを変える」きっかけを作るのに
有効であることを裏付けてくれます。
注意しなくてはいけないのは、
水の流れが変わるための
大きな河を事前に用意しておくことです。

(つづきます)

2015-11-26-THU