第4回 『どうぶつの森』と「イべんとう」。

岩田 今回、「夢見の館」っていう
新しい仕組みがあるんですよ。
京極 村のデータをサーバーにアップロードして、
ほかの人に自由に見てもらうシステムです。
村や人の名前とか、地域で検索したり、
「夢番地」と呼んでいる住所のようなIDさえわかれば、
見ず知らずの人の村も見ることができます。
岩田 サーバー上にある「誰かの村のコピー」のようなもので、
あくまでも夢の中で見ている村なので、
遊びに来た人がそこでどんなことしようと
元の人の村は破壊されたりしないんです。
だから、自分の村を世の中に見せたかったら、
IDを出して、みんなここに遊びに来ていいよ、
って広めればいいんです。
そうすると、いろんな人がつくった村を
夢見の館で見ることができる。
家自慢ならぬ、村自慢をしてもらおう、と。
糸井 おもしろーい。
京極 糸井さんの「にこにこり村」も
ぜひ夢見の館にアップして、
公開していただきたいです。
糸井 ぼくはもう、このあいだと同じことは
しないつもりだったんですが‥‥
だんだんしたくなってきた。
岩田 ははははは。
糸井 というか、よっぽどしたかったから
あんなふうになっちゃったと思うんで、
あらためてやっても、
やっぱりああなっちゃうんじゃないかなぁ。
岩田 ああ、なるほど。
そういうゲームですよね、『どうぶつの森』は。
どうしても遊び手の個性が出てしまう。
糸井 あの、こないだ久々にやった「ほぼ日」の企画で
イべんとう」っていうのがあるんです。
どういうものかというと、うちの乗組員全員で
東京駅の大丸の地下にお弁当を買いに行くんですよ。
で、それぞれが真剣にお弁当を選んで、買って、
持って帰って、そのお弁当見せ合って食べるんです。
これがねぇ、ほんとうに、その人が出る。
岩田 あーー、なるほど。




糸井 その「イべんとう」と『どうぶつの森』ってね、
ぜんぜん違うけど、近いと思うんですよ。
岩田 たしかに、通じるものを感じます。
自分の選んだものを「見せ合う」っていうのも
『どうぶつの森』に似てますよね。
糸井 そうなんです。
『どうぶつの森』もさ、
「何度やってもこうなっちゃう」
っていうところがあるでしょ?
けっきょく、似たような部屋になっちゃうとか。
岩田 はいはいはい。
糸井 それ、「イべんとう」も同じなんですよ。
今回、大丸の地下を周りながら、
「オレ、今回は、おこわを中心に
 組み立てていこうかな」って言ったら、
「前回と同じですね」って言われたの。
で、「え、そうだっけ?」って。
一同 (笑)

▲糸井が今年選んだお弁当。

▲糸井が3年前に選んだお弁当。

岩田 前回も「おこわ中心」だった(笑)。
糸井 そう。要するに、前回も、今回も、
「炭水化物まつり」だったんですよ、ぼくは。
前回は3年前ですからね。
3年経って真剣に選ぶお弁当が、
3年前に真剣に選んだお弁当とほぼ同じだった。
新鮮な気持ちで選んだはずなのに、
無意識で同じことをしちゃうっていうのが
人間なんですよ。
岩田 ああ、それが人間ですよね!
糸井 こう、ひとの選んだお弁当を
ずらっと並べるとおもしろいですよ。
岩田 わぁ、人によってぜんぜん違う。
糸井 違うんですよ、ほんとにそれぞれ。
岩田 まさに『どうぶつの森』ですね、これ。
京極 そうですね。
予算決めて、村づくりして。
糸井 こういうことをすると、
自分がなにを欲してるのかっていうことが
ほんとうによくわかるんですよね。
だから、たとえばお弁当屋さんをやるとしたら、
こういう、自分の根っこみたいなものを
基準にするべきですよね。
でも、ふつうは本を読んだり、
いろいろ勉強しちゃうと思うんですよ。
こういうものが受けるとか、
こういうものが流通しやすいとか。
でも、インプットをどれだけ増やしても、
アウトプットしてはじめて得られる経験に
まったくかなわないんです。
こうすれば勉強ができる、
仕事がうまくいくなんていう本、
本屋さんに山ほど並んでるんですけど、
それを100万冊読んだところで、
なんにもならないんですよね。
それより、自分で思ったようにやってみること、
アウトプットして経験していくことが
人を育てていくわけで。
その意味では、形だけ本を読んだりするよりは
『どうぶつの森』とか「イべんとう」みたいなことで
自分の本性を知ることのほうがよっぽど大事。
「きみはきみで思いっきりやりなさい」というのが
これからの時代には、ものすごく必要なんですよ。
岩田 うーん、なるほど。
糸井 『どうぶつの森』も、「イべんとう」も、
インプットする必要はないですからね。
ただただ、自由な荒野に放たれるだけで。
岩田 荒野に放たれて、ま、多少、予算は縛られて、
この中でできることをして、
みんなを感心させようっていう。
糸井 「ああ、今回も炭水化物が多かったなぁ‥‥」
って、そういうことを学ぶ、みたいな。
一同 (笑)
糸井 「自分はなにが得意なんだろう」って、
自分の行動をもってはじめて知るとかね。
『どうぶつの森』のなかで
ただただ自由に表現するのと同じですよね。
岩田 「こういう家が好きなんだな、オレは」って。
糸井 そういうことです。
だからね、さっき、
「今度の『どうぶつの森』は村長になるんです」
って聞いて、ちょっと困ったなと思ったのは、
やらなきゃいけないことが増えるんだったら
ちょっと面倒だなと思って。
その、ぼくは自由に乱暴にやりたいだけですから、
『シムシティー』の市長みたいになるよりは、
ただの市民、村民がいいんだけどな、って。
岩田 あ、それは大丈夫です。
村長ですけど、
村長はなんにも仕事しなくてもいいんです。
それでも村はちゃんと動いていきます。
糸井 あ、そうなんだ。
ちょっと、ほっとしました。
一同 (笑)
岩田 義務感みたいなものはありません。
だって前の村長、
「亀のコトブキ」ですよ(笑)。
京極 いつも役場で寝てたんで(笑)。
糸井 あーー、そうか、あいつか。
たしかにあいつ、なにもしてなかったね。
岩田 話し相手になってくれるぐらいでしたよね。
だから、村長とはいえ、
なにもしたくない人はなにもしなくていい
という自由はちゃんとあります。
それに、なにかをやるときも、
秘書がつくので大丈夫です。
京極 しずえさんという秘書が、
いろんなサポートをしてくれます。
糸井 そうですか。大丈夫かな‥‥。
岩田 わかりやすくいうと、
村長の席に座らなければ、
村長の仕事とは無縁です。
ただの村人としての生活が続くだけです。
糸井 あー、そうか、なるほど。
その言い方はわかりやすい。
ようやく安心しました。
岩田 『どうぶつの森』は、
気ままに遊べるのがいいところなので。
毛呂 「やらなきゃいけないことがある」というのは、
ちょっと違うんじゃないかということで、
村長とはいえ、極力そういった要素は外しました。
京極 村のメンテナンスで忙しい、
みたいにはしたくなかったので。
岩田 条例つくるっていっても、議会もないしね。
苦労する必要がないんですよ。
毛呂 まぁ、1つだけあるとすれば、
この条例にしたいって、言うと、
「じゃあ手数料、2万ベルです」って(笑)。
岩田 お金取られる(笑)。
糸井 あー、なるほど(笑)。
ま、収入印紙みたいなことですね。
お金を持ってないとダメなんだね。
でも、それはとても『どうぶつの森』っぽい。
岩田 はい。
京極 その条例も村の環境を変えたいと思う人が、
つくればいいだけなので、
条例なしでもまったく問題ありません。
岩田 村長になっても、なにもしない自由は
つねに残されています。
糸井 すばらしいですね。
村長が自分のことだけやってても
村が滅びるわけじゃないんだね。
毛呂 はい。
ま、草は生えますけど。
一同 (笑)
(つづきます)
2012-11-27-TUE