ほぼ日刊イトイ新聞に登場する 小道具や大道具を作り続けている 「山口工務店」をご存じですか？ いえいえ、電話帳には載ってません。 それは、弊社のデザイナー、 ぐっさんこと山口が率いる工作大好き集団の通称。 今年は優秀なアルバイトが入ったこともあって いつも以上にいろんなものをつくりました。 一昨年と去年に引き続き、 今年も振り返ってみましょうかね。 例によって事務所コント仕立てでお届けします。 みなさまからのメールをいただくと、 工務店の全員がたいへんよろこびます。 ♪ギュラギュラギュラギュラギュワーーーーン、 　パッパッパパラーーーー、 　ヤマグチ・コンストラクション・ソサエティー！！ 　アソシエーショーーン！！ ♪ギュラギュラギュラギュラギュワーーーーン ‥‥こんちはー。 すんませーん、あのぅ、すんませーん、 しゃちょー、おられますやろか？ はいはーい、ただいま、 あっ！　な、永田社長‥‥。 ‥‥ああ、これはどうも、山口さん、 きょうは、年末の挨拶に よらせてもらいましたよって。 どうぞ、どうぞ、こちらに。 きょうは、ずいぶん寒いですよね‥‥ いま‥‥お茶、いれますんで。 いや‥‥ほんま‥‥おかまいなく。 ‥‥ちょっと、やせましたか、永田社長？ いや、その「社長」はもう、やめてください。 もう、「社長」やあらへん。 会社つぶして、どのツラ下げて「社長」ですか。 すいません‥‥つい、クセで。 もう、ぜんぶおわって、落ち着かれましたか？ ハイ、それはもう、キレイさっぱり。 なんもかんも、なくなりましたけどね、 ま、いちおう、引っ越しも終わって、 ぜーんぶ、やりなおしですわ！　あっはっは！ ああ、その無責任な笑顔こそ、永田社長です。 せやから「社長」はやめてください。 こっちこそ、山口社長、呼ばなあかんな。 ほんま、山口工務店は、年々大きくなって。 いまや、なんやったっけ？ ヤマグチ・コンストラクション・ ソサエティー・アソシエーション？ 韓国や香港にも進出しはったそうやないですか。 いやいやいや、そんなたいしたことやないです、 毎日、トンカントンカンやってるだけで。 いつもどおり「ぐっさん」と呼んでください。 なにをおっしゃいますやら。 アジアのミスターマニュファクチャリングいうて 評判でっせ、ほんま。 いやぁ、それほどでも。 ハッハッハッハッ！ ‥‥あの、これ、ご挨拶がわりの手ぬぐいです。 あ、こりゃ、どうも。ポイっ。 あ、捨てよった。 ああ、すいません、体が勝手に。 じゃ、お返しというのも変ですが、 これ、来年の年賀状です。 いっつも手渡しで、すいません。 あ、これはこれは。 毎年恒例ですが、 １年間につくったものを ずらっと並べてみました。 いや、また、ぎょうさん、 つくらはりましたねー。 へへへへ。 いや、仕事があるのはええこっちゃ。 ほな、せっかくですから、いつものように 振り返ってもろてよろしいですか？ かまいませんよ。 おおきに、おおきに、 勉強させてもらいます。 まず、これはなんでっしゃろ？ これは宮本信子さんと糸井が うちの事務所で対談したときのセットですね。 なんや、あちこちから でっかい電球がぶらさがってますな。 これ、釣り船用の電球なんですよ。 へーーー！ 釣り船用の電球も。 こうしてつかうと、 ラグジュアリーでしょ？ はいはい、おっしゃるとおり、 ランジェリーですな。 ちなみにこの壁は、その前の年につくった 「SASSOハラマキ」のときの壁です。 再利用でっか。 さすが、山口工務店さんは そういうところがしみったれて‥‥。 なんやて？ あ、いや、しっかりしてはる。 ゴホ、ゴホ、ゴホン。 ええっと、おつぎはこちら。 これは三谷幸喜さんの 対談のときにつかったセットです。 コンセプトは、ずばり「楽屋裏」！ 対談のテーマが「わが家の歴史」という 三谷さんが脚本を手がけた ドラマについてでしたので、 そのドラマのセットの裏で会っている、 という雰囲気にしてみました。 いや、これはしかし、 木を、ふんだんにつかってますな。 木材をずいぶんたくさん使いました。 けど、材料費はぜんぶで３万円くらい。 リーズナボーでしょー？ あいかわらず、 材料費が安いことを語るときは、 目がキラキラしてはりますな。 だって、かけてるお金が少ないほうが、 のびのびつくれますからね！ ちなみにこのときつかった木材は のちにいろいろと再利用されてます。 壁の木材は、社内のイベントの仕切り板に、 糸井さんが座ってる板は、 あとから出てきますけど、 机に生まれ変わりました（キラキラキラ）。 おお、目が輝いてはるわ。 あっ、そうそう、このとき セットを組み上げる様子を 定点撮影してたんですよ。 こんなふうにできていく、という様子が パラパラマンガ風にわかりますので よろしければご覧ください。 約26秒ほどで、できあがります。 よい子のみんな、 15秒あたりにボクが出てきて ひやかしているのがわかったかな？ どうでもええわ。 さて、つづいてのお仕事はこちらです！ お、これは、ちょっと雰囲気が違うね。 ああ、これは、ちゃんとしたセットです。 矢沢永吉さんと糸井が日経ホールで行った 「お金のことを、あえて。」という トークライブのセットを、 業者の方にお願いしてつくってもらったんですけど、 その設計をやらせてもらったんです。 ちなみに施工はジールさんという業者さん。 はーー。たいしたもんや。 これは、ベンチと緑で、公園っぽい仕上がりで。 うん、糸井さんがね、 「ベンチに座って話すっていうのがいいな。 　『フォレスト・ガンプ』みたいな感じで」って わりと具体的におっしゃったので そのイメージでつくりました。 ああ、あれね、いい映画でしたな。 主人公が刑務所に入るのを逃れるために 仮病をつかって精神病院に入って、 そこからほんとうの自由をもとめて 病院側と戦っていく物語。 1970年代特有の、人間性までも 管理しようとするシステムと、 それに抗う精神を描いた傑作。 そりゃ『カッコーの巣の上で』だ！ せやったかな。 ちなみにこの、赤い「MONEY IS...」の文字は ジールさんから「つくってもらえませんか？」 って言われて、よろこんでつくりました。 あと、造花とか、おもちゃの鳥とかを セットのあちこちに配置して、 中継用のカメラがしゃべっている ふたりに寄ったときの絵が さびしくならないように心がけました。 その配慮が、なかせるね。 ツクツクホーシツクツクホーシとね。 セミですか。 で、こっちのスナックっぽいセットは なんでしたかな？ 前川清さんがいらっしゃったときのセットです。 ご覧のとおり、「スナック」がコンセプト。 このときは、ものづくりよりも、 小物のコーディネイトなどにこだわりました。 まずは、なんといってもミラーボール！ １分間に３回転するミラーボール！ 赤い布にこれを置いただけで、 雰囲気はほとんど決まり、です。 ちなみに背後のガラス細工のフクロウは、 いまはなき藤田元司さんからいただいたものです。 この、飲み物を運んでるのは、 プロの方ですか？ いえ、弊社の鈴木です。 ある意味、この人選もセットの演出に 含まれるといっていいでしょう。 グラスの形や机上の乾き物しかり。 幅広いねー。 ああ、こちらは、久々の受注物件です。 受注物件というのは、 自分が担当していないコンテンツから 「こういうものをつくってくれ」と言われることです。 ていうか、ワシやな、頼んだんは。 そうでした、そうでした。 あの、世界のジョニー・ウィアーさんを、 なんと、ふだん仕事しているオフィスの ど真ん中に座らせようとするなんて！ そうそう、そのギャップが絶対おもしろいと思って。 けど、さすがにそのままでは失礼な感じがする。 乱雑なオフィスにキレイなジョニー、 というギャップは残しつつも、 「もてなし感」は最大限に見せたい。 ということで、 「ジョニーと糸井さんが座る場所を中心に 　薔薇をつかって飾り付けてくれ」と。 あいかわらず、永田さんの指示は 抽象的で、具体的で、ややこしい。 けど、できあがりはばっちりやがな。 この「薔薇のシャンデリア」は じつは細かいところに工夫がこらされてます。 まず、やはりジョニーをキレイに見せたいということで 美白効果を狙って中に仕込んだ照明は明るめに。 でも、光源を見つめると目がくらくらしてしまうので ちゃんと下の面に布を張って柔らかい光に。 あと、この丸い大枠の部分は、 なにかを利用したわけではなく、 イチからつくったんですが、 ここでは現役美大生アルバイトであるコザサが 持ち前の美術センスをいかんなく発揮しました。 いや、たしかにこの照明はすばらしい。 しかも、側面はキラキラ光ってるからね。 動画を見てそれに気づいた読者の方が、 「シャンデリア、光るのか！ 　誰がなんのためにそれを！」って びっくりしてはったわ。 いやー、そのへんがうちの底力ですわ。 ハッハッハッハッ！ ハッハッハッハッ！ すいませ〜ん、お茶がはいりました〜。 あっ！！ あっ、しゃ、しゃちょう！ キ、キノピー！ おまえ、こんなところに！ よよよよ、よくも！ ふん。べつに、あたしが どこに再就職しようと、かまわないでしょ。 ななな、なんやと！ 会社がたいへんなときに 誰よりも危機を早く察知して あっさり辞めよってからに！ その機転をリスクヘッジに役立ててくれれば なんとかなったかもしれんのに‥‥。 そんなのあたしの自由ですぅ〜。 しかも‥‥きっちり有休を使い切って‥‥ くくく、くやしい‥‥。 それじゃ、山口社長、 それから、永田元社長、 ごゆっくり（パチッ☆）。 （ポワワワワ〜〜〜ン） くーー、また、誰彼かまわず ウィンクしよってからに！ （ポワワワワ〜〜〜ン） おまえもいつまで ポワワワワ〜ンなってんねん。 カパーン！ イタタタタ‥‥。 社長、来客が訪問先の社長の後頭部を スリッパではたかないでくださいよ。 すまん、すまん、 ほな、つぎの写真いこか。 これは、夏のあいだ、 京都ロフトさんの１階部分をつかって リアルな「ほぼ日ストア」を やらせてもらったときに 店内のいろんなものを つくらせてもらったんです。 ポップ、パネル、垂れ幕‥‥ そもそものレイアウトのアイデア‥‥ ほんと、いろんなものをつくりました。 変わったところでいうと さきほど説明した「お金のことを、あえて。」の ステージでつかった緑の台を 東京から運んできてフロアのセンターに設置。 そこに本をたくさん置いて 立ち読みスペースにしました。 はーーー、たいへんなことやな。 リアル「ほぼ日ストア」は １ヵ月くらい続いたんかな。 そうですね。 メインの展示は１週間ごとに変わりましたから、 そのたびに京都ロフトチームは 京都に出張してました。 展示の入れ替え作業が終わったあと、 だいたい深夜になるんですけど、 隣にボーリング場があるので みんなで行くたびにボーリングしてたら、 もう、スコアが上がる上がる！ 今年の夏は京都とボーリングでした。 ええなぁ。たのしそやなぁ。 あ、つぎの写真も、 リアルな場所をつかった仕事やね。 作品大賞の授賞式の装飾全般を手がけました。 受賞作品を展示するイベントだったので、 飾り付けうんぬんのまえに、 作品をきちんと見てもらえるように、 と考えました。 三谷幸喜さんのセットにつかった木材に ちゃんとロゴを入れて、 テーブルを７つつくりました。 あと、このとき、キミら、 なんや、おもろいおねえちゃんたちと たのしそにわいわい飾り付けしてはったな。 おもろいおねえちゃんというのは 若干失礼かもしれませんが、 ほぼ日作品大賞を受賞した 「sunui（素縫い）」さんたちですね。 そうそう、ぼくらが会場の だいたいのセッティングをしたあと、 sunuiさんたちが仕上げの飾り付けを してくださったんですよ。 それが、まーーー、素敵なこと！ うれしいやら、ちょっと悔しいやらで、 とにかく、たいへんたのしかったです！ あと、びっくりしたんが、これや！ 出たーーー！　バルーン！！ 夜空に、光るバルーン！！ これはもう、やりたかった。 ずぅっと前から、やりたかった。 いつかやろう、いつかやるぞ、 いつかやらせてくれと、ずっと思ってて、 とうとう実現いたしました！！ しかも、sunuiさんたちの仕上げがすごい！ ふたつのバルーンに、 「ＨＯＢＯ」と「ＮＩＣＨＩ」ですよ！？ なんて大胆！　なんて素敵！ きーーーーーっ、悔しい！！ 見たか、キノピー、 これが山口工務店の原動力、 「ジェラスパワー」や。 この無限の力をプラスに働かせることによって 山口工務店は着々と大きくなってるんや。 せっかくここで働くんなら、 こういうところをよう見とくんやで。 ジェラスパワー‥‥。 ウワサには聞いてましたが、これが‥‥。 なんて、おそろしい！ きーーーっ、悔しい！ すばらしい！　うらやましい！　 素敵！　がんばんなきゃ！ ポジティブ？　ネガティブ？ ていうか、せからしかー。 山口社長いますかー！！ 山口社長ーーー！！ お、西田くん。 あっ、いた！ ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃー！ ごめんください、どなたですか、 西田がまいりました、 どうぞお入りください、はいわかりました、 ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃー！ に、西田くん‥‥そういうキャラだっけ？ キャラがいまひとつ固定化されないのが ぼくの小学校時代からの悩みなんですよ。 どうにも、ぼくのキャラは空洞的で、 どんな役でも入るし、 拒むつもりもまったくないんだけど、 とにかくキャラが固定された試しがない。 あんたら、いったいなにを言ってるんだ。 ともかく、言われてた トリプルフグカメラの写真、 プリントアウトしてきましたよー。 ああ、ありがとう。 ほらほら、見てくださいよ、 今年もいろいろやりましたよ、フグカメラ。 どれどれ？ これは、ピクサー映画、 『カールじいさんの空飛ぶ家』 をモチーフにした 『フーグじいさんの空飛ぶ家』。 あいかわらず、ムチャなネーミングやね。 ええと、これのポイントとしては、 通常は２〜３日でしぼんでしまう風船に 特殊な液を入れることによって長持ちさせ、 休みのあいだに徐々にしぼんでいくさまを みなさんに見てもらおうとしていたのですが、 ずばり、まったくしぼまず！ ダメじゃん。 ダメじゃん。 ダメじゃん。 はっはっはっ、 そういうこともありますよ！ ちなみに、弊社はピクサーファンが多く、 こんなムービーもつくったりしたよ。 続きまして、こちらは、 トリプルフグカメラシリーズのなかでも なかなかの名作と評判だった 『フグター』です！ うーん、これだけ見ると、 なにが、どう、『フグター』なんだと。 というか、そもそも、 なんのパロディーなのか、 理解できひんのと違うかな。 あ、これ、元ネタは『アバター』です。 うっそー！ ふたつのカメラをつかって撮影した画面を ステレオグラムのように表示することによって 飛び出して見えるという、 画期的なフグ企画だったんですけどね。 あ、ちなみに、空中大陸の書き割りの絵は、 現役美大生コザサが20分ぐらいで描きました。 さすが。 さすが。 さすが。 で、最後のフグカメラがこちらです。 これは、モチーフとかはとくになくて、 「恋人へのメッセージ」 「フグ占い」「恋の輪くぐり」と、 ほんとうに恋愛をテーマにした ヒマ潰し企画を盛り込んだものです。 工務店の仕事としては、 ＬＯＶＥっぽい感じの 蛍光ピンクがポイントさ。 いい。これがいちばんいい。 え、どのへんがですか。 ＬＯＶＥなところよ。 （パチッ☆） はぅわ！ ポワワワワ〜〜〜ン。 パカーン！ パカーン！ イタタタタ‥‥。 そんな‥‥無言で‥‥。 ひと箱で、ね☆ なにを言うてんねん。 さぁ、最後に、山口工務店の もっとも新しい仕事を ご覧いただきましょう！ これは、また、えらいことに‥‥。 屋根も扉もあるんですね‥‥。 休みの日に、郊外にある ものすごくでっかいホームセンターに行ったら、 もう、超たのしくて！ ついつい何時間も見て回ったんですけど、 そこで見つけた「ガレージキット」が これをつくるモチベーションになりました。 ガレージキット？　なにそれ？ 要するに、このとおりつくれば、 ガレージができますよ、みたいなやつです。 それを見て以来、どこかでつくりたいなと！ もう、発想する順番が、 合ってるのか間違ってるのか わからなくなってくるね。 このセットはね、 とにかく木材の量がハンパない！ そう！　そもそもキットだと、 120センチ×270センチの板を５枚とか 平気で書いてかるからね。 車に入らへんっちゅうねん。 なんか、その板、 １階から４階まで運んだ覚え、あるわ。 その節はおせわになりました。 そんなわけでで、大量の木材を みんなの力を借りて運び、組み立て、 なかに照明を組み込んで、屋根にロゴを入れて、 窓枠を白く塗って完成させました。 えらいこっちゃー。 徳光さんは、逆に驚かなかっただろうね。 そうですね。 テレビを知ってる人からすると、 業者の人がつくったんだろうと ふつうに思うんでしょうから。 あるウェブサイトの 工作好きなデザイナーが つくってるんだけどね。 ちなみにこのバカでかいセット、 いつもは撮影が終わったら すぐに解体するんですが、 さすがにしばらくそのままにしておきました。 というわけで、今年手がけた仕事を 駆け足で紹介してきましたが、 山口工務店2010納会、 このあたりでお開きにしたいと存じます。 来年も、山口工務店、ならびに‥‥。 ほぼ日刊イトイ新聞を‥‥。 どうぞよろしくお願いします！ それでは、みなさま、よいお年をーーー！ ♪ホンワカパッパ〜、ホンワカパッパ〜、 　やまぐーちーこうむてーん〜〜〜、 　まった、らいね〜〜ん〜〜。 （おしまい） 2010-12-30-THU 最新の「山口工務店へ」 （C）HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN