お金をちゃんと考えることから
逃げまわっていたぼくらへ。

第10回 お金は汚いものなんでしょうか?


2月26日に刊行される
『お金をちゃんと考えることから
       逃げまわってきたぼくらへ』
という邱永漢さんとdarlingの対談本を、
発売前に立ち読みできますよ、というページです。
お気にいりだったら、ほぼ日で予約もできるんです。

今日の見本読み部分は、直球です。さっそくどうぞっ。

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【お金は汚いものなんでしょうか?】

糸井 学校では、まず、お金の話は教えないですし。
お金の話とセックスの話は、学校で教えませんね。
糸井 このふたつは、そうとう似てますよね。
自分に対してどういう
お金の教育がされたのかを、
今、さかのぼってみると、
やっぱり儒教的な倫理で
教えられてきたように感じますね。
「お金は、汚いものである」
というように思わされていましたから。

ぼくが幼稚園くらいに小さい頃、
お金を口に入れていた時があったんだけど、
そしたら、おばあちゃんに過剰に怒られました。
それは、すごくよく覚えてます。

「お金は、一番汚いんだ!」と、
それはもう、病原菌かのようで・・・。
何で汚いのかの理由は、
「人の手から手に渡ってきたから、
 誰が触ったかわからないし
 何がついているかわからない」
ということなんだけど、それにしては、
手で触っている程度の汚さなんですよ。
そこまで過剰に怒ることはない。

だからそれはもう、
実際の衛生上のものというよりは、
「お金というのは汚い」
という信仰に近いような
考えだったんじゃないかなあと思うんです。
お金が汚いという考え方は、
中国人にはないんですよ。
糸井 はああ。
だからたぶん、日本の独特の考え方です。
糸井 韓国なんかどうなんでしょう?
いや、よその国の人は、
だいたいそんなことはないですよ。
日本だけ割合に、
お金を汚いと感じるのではないでしょうか。
糸井 特別なのですか?
はい。特別だという感じを受けます。
日本人は、
「自分が生きているのは、お金のためではない」
という考えを、どうも、
美徳と考えている
わけです。

それはどこから来てるかと言うと、
やっぱり、宮仕えから来ていると思います。
侍として殿様に仕えるのは、
決してお金のために
仕えているんではないというか……。
そういう秩序の中で育っているからだと思う。

日本の古い歴史を読んでいると、
昔は日本人も、
そうでもなかったようにも見えます。
例えば秀吉が本能寺に
信長のカタキを討ちに戻る時には、
自分の持っていたお金を
部下たちにぜんぶあげちゃって、
「今度ここで勝たなかったら、
 みんなもう、めしも食っていけなくなるよ」
と、あとで引けないように
激励していますから。
糸井 それ、ベンチャーですね〜。
その時代なら、誰に従って戦争するのかは、
「どっちが得なのか」
「どっちのほうがめしを食えるか」
と動機がはっきりしていますね。

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お金というものに対して人が持つ先入観について、
対談は展開されますよ。このまま、次回につづきます。

ところで・・・注文をしてくださる人が、
メールに添えてくださる感想が、素晴らしいんです。

ですから、darlingや担当編集者は
「うわあ!すごくいいなあ」とか言いながら、
いつも、ものすごく真剣に読んでいます。

今日ご紹介するのも、そのうちの一通のもので。
まず。お読みください。

>家族の金銭問題や、債務の処理の話を横で聞きながら、
>家族みんなが知らないフリをしていたように思います。
>私自身でもそれらのことを、
>「小さな出来事だ」と思うようにしていました。
>
>でもその時の気持ちがずっと残っていて、
>お金にまつわることで
>妙に慎重になったりする自分が
>「じゃまくさい!」って思う時があるんです。
>お金の事で「やだな」と思ったことで、
>家族ともきちんと向き合っていませんでした。
>
>責めるんじゃなくて、ちゃんと話し合いたかったです。
>それも、お金から逃げていることになるのかな、と
>今メールを書きながら思っています。
>私自身がちゃんと自信を持って
>「お金」を扱えるようになりたいです。
>
>また、夫はいずれ実家の会社を継ぐことになるひとで、
>否応無しに「お金から逃げられない」立場になります。
>夫にもこの本がなにかいいヒントになったら・・・
>と思っています。楽しみにしています。
>
>(※編集部の判断で、匿名にいたしました)


「お金の事で『やだな』と思ったことで、
 家族ともきちんと向き合っていませんでした」
という一文が素晴らしいと思って
ぼく(ほぼ日の木村)はメールを読んでいました。

お金について考えることは、
人間関係と向きあうことにもなるのかもしれない、
と思いながら、お金の魔力について考えました。

2001-02-09-FRI

TANUKI
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