お金をちゃんと考えることから
逃げまわっていたぼくらへ。

第1回 糸井重里より、はじめに。(その1)


こんにちわんこそば。ほぼ日編集部の木村です。
どげんしとっとうとですか?(おいは、元気ったい)

「ほぼ日」の読者のかたたちにとっては、
ちょっとうれしいかもしれないお知らせですよーっ。

『お金をちゃんと考えることから
     逃げまわっていたぼくらへ』


あと1か月くらいすると、こんなタイトルの
邱永漢さんと糸井重里との語りおろし対談の本が、
PHP研究所から、刊行されることになっているんです。

これは、世間から見たら異色の顔合わせなんだけど、
「ほぼ日」読者には、ああそれはアリだなって感じでしょ?

語られている内容といい、生っぽさといい、
ふたりで会って話す動機や信頼関係も含めて、
今のところ、世の中で最も
「ほぼ日っぽい本」と言えるかもしれないよ。

・・・そ・こ・で!!!!

今日からはじまるこの新連載では、
いま印刷所で生まれつつあるこの本の
はじめのほうを、「見本版」として、いち早く
「ほぼ日」紙上で読めるようにしちゃうんだ!
つまり、インターネット上での「立ち読み」だ。
気に入ったら買ってねという、新・Eコマースだね。

まえがきは、darlingによるものになっています。
この本を作る動機についてしゃべっているよ。
では、見本版を、どうぞー!!!

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【糸井重里より、はじめに。】

どんな人でも、
得意なことや不得意なことを、持っているでしょう?

「俺はアレをするのが得意だ」
「私はこれをできる」・・・。

その得意なこと「だけ」を仕事にしていれば
いいという時代が、かつてはあったと思います。
持ち場の仕事を丁寧に一生懸命やってさえいれば、
うまくいった時代。

でも、自分の仕事をきちんとやるためには、
他の人と組んで何かをする仕組みをつくらないと、
本当の意味での完成にはとどかせることのできない
時期になって来たように思います。

逆に言えば、他の人と
うまく組んでいく仕組みを作らないと、
いつのまにか自分の仕事がなくなってしまいかねない、
そういう時代なのでしょう。

いつのまにか、ほとんどの人が、
その時代にさらされている。

会社員の人も、職人さんも、
もちろん商売をしている人も。

努力をして、コツコツやっていれば絶対に大丈夫、
なんていうものがなくなってきて、
「じゃあ、どうすればいいんだろう?」と、
いろいろな人が少しずつ模索をはじめている時期だと
ぼくは思います。

そのことと、今回の対談をひきうけたいと思ったことは、
重なってくるんです。

「今までのやりかただと、だめかもしれない。
 でもそこで、人間やものごとを流通させて循環させて
 活性化させるには、いったいどうしたらいいのだろう?」

そこでまず、次の方法への模索として、
いろいろな人が飛びついたのは、
いわゆるマーケティング的な理論でした。
アメリカですでに研究されたマーケティングの考え方を
日本流にアレンジしようという動きが、
今でもあちこちで見られるように。

それさえすれば新しい時代についていける、
と思った人たちが、いつもの通りに、
先に悩みを抱えたアメリカに、範を求めました。
株式上場をすることやMBAを取ることや
外資系の企業に行くようなことが、
ここ数年はかなり流行しているように。

この流行は
「ひとりで自分を磨いていけばいい」
という原則がなくなって、別の方法を
みんなが探している途中に見られる現象で、
ぼくとしては、あくまで過渡期のものだと思っています。

つまり、アメリカの企業のやりかたを
真似することは、ゴールではない。

アメリカだって、まだ悩んでいる。

MBAを取ることや外資系に就職することで
自分の不安を解消するかのような
流行がだいぶ続いたけれども、
その流行がひと段落しそうになっている今、

「俺はこんなに勉強したのに、
 何でうまくいかないんだろう?」

そう思っている人も、多いのではないでしょうか。

ある指標やある組織に
自分を依存させて生きていくだけでは、
もはやうまくいかないのかもしれない。
それを、カラダで実感できる
時期になってきていると思います。

マーケティング的な方法は、
「うまくいかないとしたら、これが足りないからですよ」
と、あらゆる角度から
教えてくれているように見えるんだけど……。

ところがそれは、まるで
「理論のクスリ漬け」のようなものだと思います。

「このクスリが効かなかったら、これを使うといいです」
「新しいクスリができました。今度こそよくなりますよ」
 クスリ漬けの生活の中で、
「その時々にいちばん効くらしいクスリ」を手に入れて、
ほんの短い時間だけ「うまくいっている」と
感じていても、気持ちが悪い。

ただ、目先の情報にふりまわされるだけだから。


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※明日の「まえがき(その2)」につづくよ。

2001-01-31-WED
TANUKI
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