明日に向かって捨てろ!!
〜ボーズの脱アーカイブ宣言〜

第35回 『缶を捨てられる自転車の立場』




── はい、じゃあ、つぎいってみましょう。
ボーズ どれどれ?
── ちょいジミですが、
味わい深い、これをいってみましょう。
ボーズ これね、自転車のカゴね(笑)。
ぼくはいま自転車に乗らないから
あんまりないんだけど、
カゴ、入れられるよね、ふつうにね。
止めておくと、空き缶とかね。
── なんていうか、その、なんとなく
「捨ててオッケー!」
みたいになっているところが
大問題だよね、じつはね。
ボーズ おかしな話だよね。だからさ、
こういう風景がお馴染みだってことは、
捨てる人に、変な共通認識があるわけだよね。
みんなが、こういう形してりゃ
ゴミ箱だと思っちゃうみたいな。
それってすごいよね。
── そうそうそう(笑)。
ボーズ それ、すごいぞんざいな感覚よね。
── うん。網だし、カゴだし、
なんとなく捨てるっしょ、みたいな。
ボーズ なんなんだろうね、その感覚。
── こういうものがあるんだからしょうがない、
みたいな、こう、盗人猛々しい感じの、
開き直りがあるような気がする。
ボーズ あるよね。入れる人の心理としてはね。
もう習慣でしょ、みたいな。
── ってことはその、先入観というか、
「間違った固定概念」だよね。
ボーズ じつはそれに縛られてるってことだ。
── そうそう。ここにもハンパ不良性がある。
ところかまわずポーイって捨てるんじゃなくて
なんかこう、逃げ道を用意して捨ててるような。
ボーズ ハンパ不良だね。あとあれ、
先に入ってると捨てちゃうでしょ?
── ああ、破れ窓現象だ。
ボーズ それなに?
── ええっとね、ニューヨークとかで、
建物の窓が割れてて、
それが割れたままだと、
そこで犯罪が多発するんだって。
ボーズ あ、まさにそれだね。
1コ缶が捨てられると、
すぐその自転車に集中するもんね。
── あ、それでいい話があるよ。
ボーズ なに?
── ぼくの机が汚いんですよ、ずっと。
ボーズ 仕事場の机が?
── そうそう。書類とか積み放題なの。
で、たまにさ、今日は机を掃除するかって
下のほうから整理してみると、
関係ない雑誌とかが、
ぼくの机に不法投棄されてるんですよ。
ボーズ あはははははは、汚いから。
── そうそう。あの、一時期、
打ち合わせ机が横にあったのね。
で、事務所に来た雑誌とかを
そこでみんな読むんだけど、
どうやらそれをポイッとオレの机に(笑)。
ボーズ あはははははははは。
すっごいおかしい(笑)。
── たぶんね、罪の意識はないと思う。
ボーズ それはキレイにしとかなかったお前が悪い的な。
── そうそうそうそう!
でもさ、ほんとうはさ、
それをオレの机に捨てたやつが
悪いはずなんだけど。
ボーズ 悪いね、ほんとはね(笑)。
── でも、なぜかけっきょく
オレが悪い、みたいな。
ボーズ 悪いね。ああ、おもしろいね。
不良がどんどん不良になる図式みたいだね。
「誰もオレのことをわかってくれねえ!」
みたいな感じで。
── そうそう。
だから、ちょっとやさぐれ気味。オレの机。
ボーズ あ、なるほどね。おもしろい。
でもそれ、自転車のカゴといっしょだね。
── いっしょだと思うんですよ。
ボーズ そういうことって起こるね。
1コ置いてあると、
オッケーなん感じがして
置いちゃうんだよね。
── きっと、「捨てるひとり目」に
なるのはイヤなんだよね。
ボーズ うん。だってさ、明らかに
はじめはなにもなかったとこのわけじゃん。
ただの自転車のカゴだったわけじゃん。
── うん(笑)。
ボーズ 最初の1コを置いたことにより
ドラマが生まれるわけでしょ、そこに。
── だよね。1コのあとの2コ目はオッケー、
みたいなへんな共通認識に作用してね。
もしそういう心理がなければ、
すべての自転車のカゴに均等に、
ポツンポツンと捨てられるはずだよね。
ボーズ でもそうじゃないよね。
ひとつのカゴに集中すんだよね。
だから、ほら、正当化する理由としては、
「ほら、こいつの自転車に
 こんなに缶が捨てられてるってことは、
 こいつのチャリンコ
 3日も置きっぱなしなんだよ!」っていうさ。
── あああ、なるほどね。
ボーズ 最初に入れたやつが、
「こいつ自転車放置してますよー」
ってことで捨てるわけだ。
で、缶が溜まるほど、
そいつが自転車を置きっぱなしに
してるというわけで‥‥ん?
でも、だからなんなんだよ!
── あははははははは!
だからって、捨てていいのかよ!
ボーズ あ、これはおもしろいわ(笑)。
── なんなんだろうね、
持ち主が来ない感ってのがあるのかな?
ボーズ あるのかな?
「そんなやつはこうしてやれ!」ってこと?
── いや、だからさ‥‥。
ボーズ なんで「こうしてやれ!」に
なるんだよ、ってことだよね(笑)。
── ははははははははは、
ダメだ、おもろい(笑)。
ボーズ それはあれだな、
「いじめられるやつにも理由がある」
みたいな話になってきちゃうよね。
── ああ、いじめに通ずる。たしかに。
ボーズ 理由はないのに。
── 正当な理由、ぜんぜんないよ!
「いじめられるほうも悪い!」
「ゴミを捨てられる自転車も悪い!」
ボーズ そうだよなあ(笑)。
なんか、似たようなこと、ほかにもあるよね。
ゴミの不法投棄はだいたい似てるよね、きっと。
── 不法投棄するくせに、
妙な小理屈があるんだよな、きっと。
だから、社会のルールは破るんだけど、
自由気ままに捨てるわけでもないというか。
タバコの吸い殻とかもそうだもんね。
歩きながら捨てるんだったら
点々と落ちてていいはずなのに、
そうじゃないもんね。
特定の排水溝に溜まってたりする。
ボーズ なにかあるよね。
つまり、いちおう、どこかでは
悪いとは思ってるわけだよね。
── これ、日本人特有?
ボーズ いやあ、どうなんだろう。
チャリンコのカゴ現象が
外国でも見られたらおもしろいね。
でも、見た記憶ないなあ。
── なさそうな気がするね。
ボーズ あ、空き缶というか、
自販機的なものが少ないのかもしれない。
あと、あれだ、チャリンコのカゴが、
ゴミ箱に似てるのが日本特有なのかも!
── すげえ仮説(笑)。
ボーズ ほら、外国の自転車だと、
籐のカゴとかついてそうじゃない?
── ああ、籐のカゴには
空き缶捨てづらいなあ(笑)。
ボーズ でしょ(笑)?
ゴミ箱風だから入れられるんだよ。
だから、チャリンコのカゴをつくるときに
ゴミ箱っぽくなくすればいいんだ。
── そうだそうだ、それだ!
ボーズ デザインを、なにか捨てたくないような
感じにすればいいんだよ。
だから‥‥‥‥角張ってればいいのかな?
── そんなんでいいのか(笑)。
ボーズ なんだろう、なにがゴミ箱っぽいんだろう。
丸っぽいのって、ゴミ箱っぽくない?
── メッシュでしょ、メッシュ。
ボーズ あ、メッシュね。
それはゴミ箱っぽく見えるよな。
メッシュで丸っぽいからいかんのだ。
── ていうかさ、メッシュで丸っぽいのが
チャリンコのカゴなわけじゃんか。
チャリンコのカゴが
メッシュでなにが悪い!
ボーズ うはははははは。
── これ、なんの話だ?
ボーズ ていうかさ、百歩譲って、
デザインがゴミ箱に似てたとして‥‥。
── だからって捨てていいのか!
ボーズ って話だよね!
── おんなじこと話してるわ(笑)。

(まだまだ続きます!)

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2004-10-28-THU

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