明日に向かって捨てろ!!
〜ボーズの脱アーカイブ宣言〜

特別取材『The 9th Sense』のライムノート
その1〜「寝癖」か「鼻毛」か?〜




── さあ、ここからは特別編です。
せっかくプライベートスタジオに
おじゃましているので、
新作『The 9th Sense』の制作に関する
お話をうかがっていこうと思います。
ええと、きっかけは、以前、ボーズさんに
ノートをちらっと見せてもらったことで。
ボーズ うん。
── ライム(歌詞)が完成されるまでのメモが、
ノートにびっしり書いてあって。
なんでも、ひとり1冊、
そういうノートがあるということで、
今日は、無理矢理リクエストして、
みなさんに持ってきてもらったわけですけど。
ボーズ まあ、ふつうのノートだけど(笑)。
── まず、あの、「紙なんだ?」ってことに
びっくりしたんだけど。
ボーズ ああ、書くのが?
── うん。パソコンとかじゃなくて。
ボーズ もうぜんぜん、ノートですよ。
アニ ずーーっとノート。もう、何冊目かで。
ボーズ だいたいアルバム1枚で1冊くらいかな?
── で、なかを開くと、
すっげえ情報量なんですよねー。




── で、今日は、そういうことを探るのは
野暮だと知りつつも、
制作過程をうかがっていこうかなあと。
たとえば、まあ、なんでも興味深いんですけど、
アルバム冒頭の『YES/NO』の最初のところ、
「レフトよし」から始まって
「寝グセよし 準備よし」で決まるでしょ。
聴いてると、そこでいきなり
グッとつかまれるんだけど、
それってどういうふうにできたんだろう、とか。
『YES/NO』(※抜粋)

レフトよし ライトよし
前後よし 上下よし
キックよし スネアよし
ハットよし バッドやし
ドープさよし キャッチーさよし
フレーバーよし チャックよし
青ノリよし 鼻毛よし
寝癖よし 準備よし
アニ これいちばん最初に決めたかなあ?
ボーズ ほかができたあとかもしんない。
アニ うん。最後に、かもしんないね。
アタマつけた方がいいやってことで。
シンコ イントロは、あとかな。
ボーズ そうだそうだ。
アタマつけて前振りした方がおもしろいな、
みたいな感じで。で、そのときに、
「レフトよし」とか「ライトよし」が
はじめて出てきたんだ。
── いきなり最初にそのフレーズが?
ボーズ うん、「レフトよし ライトよし」を
最初に思いついたことで、
全体の流れがでてきた。
── そこの箇所ってノートにあります?
ボーズ ええとね、このへんかな。
── あ、これだ。なるほどー。
ボーズ 「レフトよし ライトよし」だから、
つぎは、その流れで自然と
「前後よし」になってきて‥‥。
── つぎは「日当たりよし」だったんですね。
最終的には「前後よし」と呼応するかたちで
「上下よし」になって。
ボーズ で、8小節いく予定だから。
4小節はまともに流して、
残り4小節で変えていきたいわけ。
だから、まずはそのままの流れで、
「キックよし スネアよし」。
このへんでちょっと
ズラしたくなってくるわけ、だいたい。
── うんうん。
ボーズ だから4小節目の最後は
「ハットよし ベースよし」だったんだけど、
「バッドやし」っていうひねりがひとつ。
まあ、単純に、そっちのほうがおもしろいって
いうふうになったんだね、ここは。
── うんうんうん。
ボーズ で、「バッドやし」が出てることにより、
「ドープさよし キャッチーさよし」みたいな。
で、ここはまあ、
秘密の理由も含まれてるんだけど、
「フレーバー」と「チャック」にいって。
── うん。ネタ元を知りたいわけじゃないので、
秘密は秘密のままいってください。
ボーズ そのあとは「青ノリ」のところで
けっこう悩んだんだけど。
そのへんからは考えはじめるよね。
── 「準備よし」は最後って決まってた?
ボーズ うん。「準備よし」はなんとなく
先にわかってたんだろうな。
「準備よし」に行く予定でつくってる。
アニ そのへんのバランスが微妙なんだよね。
ボーズ そうそう。「鼻毛」を出すのか、
「寝癖」を出すのかとか(笑)。
── そのへんを真剣に悩むわけだ(笑)。
ボーズ うん。それはもうけっこうね。
収まってみれば、後から考えれば、
これでいいんだけど、やってるときは
別に「鼻毛」じゃなくても
いいような気がしてるし。
── うん。
アニ でも、このへんあんまし悩まず
サクサク決まった感じじゃなかった?
ボーズ いや、けっこう考えたよ。
── だいたいの方向が決まってて、
とっさの動きで決まっていく感じですか?
ボーズ そうそう。3人がそれぞれに考えてて。
── それは、任天堂の宮本茂さんが
言ってたこととまったくいっしょなんですけど。
ボーズ あ、ほんと!
シンコ へえええ。
── 外国のクリエーターの人とかに、
「ゲームのつくりかたのコツを教えてほしい」
って訊かれることがあるけど、
「とっさの動きなので、教えられないんです」
っておっしゃってました。
でも、完全に「とっさ」かというと
そうではなくって、
「だいたいどっちに行くっていうのは
 あらかじめ決めてある。
 あとは、とっさのときに動けるように
 足腰を鍛えておくことが重要」って。
ボーズ ああ、もう、いっしょだね。ぼくらも、
3人で「こうなりたい」っていうのが
頭の中でできてないとできないんだよね。
「『準備よし』に向かうよね?」
みたいなのがなんとなくあるわけ。
── そこがチームの、いい組織の動き、
みたいなことなんだろうけど。
ボーズ うん。難しいけどね、説明すんの。
── 無理なお願いして、すいません。
でも、すごいおもしろい。
ボーズ これをどう説明していいか、難しいんだけど。
歌詞をこんなふうにして書く人って
たぶんいないですよ、ほかには。
── 3人で完全に共作ですもんね。
そうはいっても誰かがメインで
つくってるのかとも思ったけど、
この3冊のノートを見ると、
ほんとに共作だもんなあ(笑)。
一同 (笑)
── でも、3人のうちの誰かが
「それは違うだろ」ってことは、
あるわけですよね?
ボーズ うん。というか、基本的に、
よかったり悪かったりなんだよ。
ただ、みんながそろって
「いいじゃん」って言うときがあるわけ。
そういうときって、
すでにみんながなんとなくそう思ってて、
誰かがそれを口に出すだけっていう感じ。
そのために3人で考えてた、っていう。
── はあーーー、なるほど。
ボーズ もちろん、役割は微妙に違うんだけどね。
アニがなんか変なことを言う役、とか、
それを「こうやってまとめたらどう?」
っていうのが、ぼくの役だったり。
シンコはちょっと違うところから、
何かを引っ張ってくるのが得意だったりね。
── うんうん。
ボーズ そういう感じでそれぞれやってるけど、
なんとなく向かうとこが
ぼんやりとだけど見えている、みたいな。

(続きます!)

 スチャダラパー、4年ぶりの新作発売!
 『THE 9th SENSE』
 

 定価 : 2,800円(税込)
 ASIN : B0000C4GO3

スチャダラパーのニューアルバム、
会心の出来映えで店頭に並んでおります。
高品質な全14曲、あちこちで絶賛。
ヘヴィーローテーション決定の1枚。

ボーズさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「ボーズさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-07-16-FRI

HOME
戻る