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香りに溺れて。その4




ノリスケ 獣系のほかに苦手なのは?
ジョージ 金属系の匂いってあるでしょ?
ノリスケ ある!
つねさん 知らない。あるの?
ジョージ あるんだよ。
ノリスケ コム デ ギャルソンが無機物だけで
アンチ・パフュームを
コンセプトにした香りを出したの。
そこにメタルっぽい匂いが入ってた。
すっごくおもしろいと思うんだけど、
ちょっとつけるのに勇気がいった。
つねさん つけづらいんだ。
ノリスケ いい匂いのもあったんだけど、
これ排気ガス? みたいな
匂いのとかあったんだよ(笑)。
つねさん それはすごいね。
ノリスケ あれは冒険だよ。
ジョージ あれつけてるとね、
ロンドン塔の中のアイアンメイデンの中に
入るのってこういうことかな、
みたいな匂いがする。
鉄サビの匂いがするんだよ。
つねさん ああ、なるほど。
ジョージ それがね、嗅覚中枢を引っ掻くんだよね。
ノリスケ キリキリキリキリ。
つねさん ああ。
ジョージ ガラスに爪を立てて
ギーっとやってるような音がずーっとするの。
つねさん へえー。
ジョージ 匂いと音って近いのかもしれないね。
ノリスケ ああ。
ジョージ 麝香系つけるとドラムンベースというか、
低音のドラムがダダダダダダダダダダダダーって
鳴るような気がするの。
ノリスケ 官能的ねえ。
ジョージ ほんとは発動してはいけないものが
発動しそうな感じが。
ノリスケ そうか、そうか。ビート、
心臓の鼓動だもんね。
つねさん 俺、全然話戻していい?
ジョージ いいよ(笑)。
つねさん 何で匂いが苦手なのか今思い出した。
ジョージ 何?
ノリスケ はい、どうぞ。
つねさん えっとねえ、つきあいはしなかったんだけど、
僕が若かりし頃、何度か会った、人がいて。
ジョージ まだ若いじゃないのぉ。
つねさん うるさい。ははは。すごいお座なりに
言わんといて(笑)。大学生の頃に。
ノリスケ 10代。
つねさん うん。10代の頃に会ってた人がですねえ、
白檀の香りのやつをつけてたの。
ノリスケ 白檀? 死にかけ(笑)?
つねさん そう。線香の匂いがして! 要するに。
ノリスケ お香じゃなくて線香の匂いな訳ね(笑)?
つねさん お香とか線香とか、
要するにお仏壇の匂いがするわけですよ。
ノリスケ 抹香臭い匂いがして(笑)。
つねさん それで嫌になったの。
ジョージ でも僕は白檀の扇子? あれ好きだよ。
つねさん いや、だからそういうのはいいんだけど、
だっこした時にさー、
そっから匂ってくるのがすごい嫌で。
ノリスケ それは、あなたの望む性的なムードと
あまりにそぐわなかったってことね?
つねさん そうそうそうそうそうそうそうそうそう。
そういうことだね。
ジョージ 白檀で思いだした。
あの、ハワイのね、
モアナサーフライダーっていうホテルがあって、
一応ワイキキで一番古いホテルって
言われてるんですけど、
そこのテラスにコーヒーショップっていうか、
カフェみたいなのがあって、
そこでアフタヌーンティーを取ると、
女性はもれなく白檀の扇子を貸してくれるの。
ノリスケ へえ。
ジョージ それで仰ぎながらですよ、紅茶飲みーの、
スコーン食べーの、
サンドウィッチつまみーの、なんだわな。
ノリスケ へえ。
ジョージ そのアイデアそのものは悪くはない。
で、海が見える風通しのよい場所ですよ。
爽やかな気持ちでもってお茶でも飲みましょう、
って行くとですね、風上のところには
アメリカのおばさま20人ぐらいの一軍がいて、
みんながやってるの。
ノリスケ 白檀、白檀、白檀。
ジョージ 白檀の匂いプラス。
つねさん おばさまの匂い。
ジョージ コパトーンの香りに。
つねさん オバトーン!
ジョージ (無視して)しかもエスティ・ローダーの
香りが混じってやってくるわけさ。
‥‥地獄よぉ?
ノリスケ はははは。
つねさん 壮絶だね。何かね。
ジョージ あれは地獄!
ノリスケ ただでさえ女性的な、
女性そのものの香りってねえ、あんまり、
ぼくたちは得意ではないのよねえ。
つねさん うん。
ノリスケ 母的なものは別として。

つづきまーす!

2007-03-05-MON

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