ほぼ日刊イトイ新聞

仲間の背中を信じて走る。

あけましておめでとうございます。
2019年の「ほぼ日刊イトイ新聞」は、
ラグビー元日本代表の五郎丸歩選手をゲストに
「にわかラグビーファン」糸井重里との対談で幕開け。
2015年のラグビーワールドカップ 南アフリカ戦で、
歴史を変える大金星をあげた日本代表。
五郎丸選手は「奇跡じゃなく必然です」と語り、
相応の準備と、仲間への強い信頼を表現しました。
最後列のフルバックという位置から、
仲間の背中を信じて走り、キックで魅せるスター選手。
日本のラグビーをもっと盛り上げたい五郎丸さんから、
糸井をはじめ「にわかラグビーファン」に
期待していることがあるそうですよ。
ラグビーワールドカップが日本にやってくる
特別な一年の、特別な対談をおたのしみください。

力ではなく、テクニックで倒す。

糸井
海外選手との試合を見ていると、
日本よりも大きな相手に
果敢にタックルしていますよね。
五郎丸
身体が大きければ
タックルに強いわけでもないんです。
2015年の南アフリカ戦を見てみると、
ぼくらのほうが圧倒的に小さかったんです。
けれど、日本が技を使って倒したり、
相手がまっすぐ突っ込んできて
吹き飛ばそうとする力を利用して倒したり。
ぶつかり合いの中でも、
すごくテクニックが求められるんですよね。
糸井
格闘技の技みたいな要素が
たくさん入っていそうですね。
五郎丸
タックルにはかなり、
レスリングの要素が含まれていると思います。
立っている状況から、低くぶつかるんです。
相手の視界から消えて、足をつかまえて倒す。
ぼくの所属チーム(ヤマハ発動機ジュビロ)でも
練習にレスリングを取り入れているんですよ。
レスリングでは両手の小指に力を入れて倒します。
タックルして、じぶんの手を相手の足にかけて
腕を引いて倒す時、力を入れるのが小指です。
小指にぐっと力を入れて、
ぐぐーっと巻くようにして引きます。
糸井
知らなかった!
五郎丸
上半身で相手を前に押して、
腕を引くから倒れるんです。
この技術はレスリングを体験するまで
わかりませんでしたね。
糸井
今でも、その技術を知らない選手も
いるんじゃないでしょうか。
五郎丸
特に子どもたちは、
全然知らないんじゃないでしょうか。
ぼくらが教わってきたことって、
「相手を掴んで、そこから引け」
と言われるだけなんです。
具体的に、どの指を使うかまでは知りません。
糸井
指導も漠然としていたんですね。
五郎丸
レスリングは倒すことのプロなので、
すごく参考になりましたね。
足の運びも独特でした。
糸井
相手の重心をぐらつかせたり、
じぶんは臨機応変に重心を変えたりね。
ぼくなんかが言っているだけじゃ
わかるわけないんだけどさ。
五郎丸
ぼくらの所属チームで
レスリングのトレーニングをしている時に、
大学2年生ぐらいで50キロ級の
世界チャンピオンが来てくれたんですよ。
そうしたら、外国人選手を含めて、
ぼくら全員が抜かれちゃいました。
気がついたらマットの上に寝ているんです。
それぐらい倒すのが速いんですよ。
相手を倒すのに必要なのは、
力ではなくてテクニックですね。
糸井
50キロっていうと、
女の子の体重に近いぐらいですよね。
そうか、改めてラグビーの凄みを感じます。
倒す要素もあって、投げる要素もあって、
走る要素もあって‥‥。
五郎丸
さらに技術面で言えば、
キックもあるし、押さなくちゃいけないし、
寝て起きての動きも鍛えますね。
糸井
寝て起きての速度は大事でしょうね。
そもそも、「寝ない」ということも
求められるんじゃないでしょうか。
五郎丸
寝ないための心がけも、
レスリングから教わったことがありますよ。
相手のタックルがきれいに入ると、
じぶんが仰向けに倒されてしまいますよね。
レスリングなら背中が着いたら負けですから、
「倒されたら後頭部から着地してブリッジしなさい。
そうすることによって、
起きるスピードが明らかに速くなるから。
起き上がるスピードにプライドを持て!」
と言われましたが、ラグビーで同じことをしたら
脳しんとうになっちゃいそうですね(笑)。
でも、考え方はおもしろいなと思いました。
糸井
たしかにそうだ(笑)。
日本対ニュージーランドの試合を観ていたら、
ニュージーランドの動きに驚きましたね。
転ばないこともそうだし、
転んでから起き上がるスピードも、
あちらの選手のほうが速かったです。
五郎丸
もう、圧倒的に違います。
糸井
ニュージーランドの選手たちは、
どういう鍛え方をしているんでしょうか。
五郎丸
ぼくが注目しているのは幼少期の指導方法ですね。
ぼくの所属しているチームに、
ニュージーランドから学生たちが来て、
練習を見学していったんです。
日本人だったら、練習が終わった後に
みんなでまとまって帰ったりするんですが、
ニュージーランドの学生たちは違いました。
ぼくらの練習が終わった瞬間に、
グラウンドにバーッと入ってきて、
ボールを使って遊びはじめたんですよ。
この感覚が日本人にないから驚きました。
もう、たのしくってしょうがない感じです。
ラグビーをやりたくなって
グラウンドに出ちゃっているようでした。
糸井
「グラウンドでやっていいの!?」
みたいな喜びですね。
五郎丸
「やっていい?」すらも訊かずに、
「やりまーす!」みたいな感じでした。
これは強いわけだな、と思いましたね。
やらされている感覚なんてありません。
糸井
どの世界でも、すごい人というのは
放っておいてもそれをやってますね。
山崎まさよしさんは
ニューヨークに行っていた間、
ずーっと部屋でギターを弾いていたそうです。
「なんのためにニューヨークにいるんだよ!」
とバカにされることもあるでしょうけど、
本人にとっては、すごく気持ちいいんでしょうね。
五郎丸さんにとってのラグビーはどうですか。
五郎丸
こう言ったら周りの人たちに失礼ですけど、
ぼくは、やらされているほうが多かったですね。
糸井
じゃあ、じぶんで意識を
変えていかなきゃいけないんだ。
五郎丸
うーん‥‥。
エディー・ジャパンの4年間でも、
そこがいちばん難しかったところですね。
日本の教育は上から押さえつけられることが多くて、
じぶんで考えて行動することの
習慣づけがされていないんです。
やらされてやることはできるんですが、
ラグビーの場合、ピッチ上に監督はいません。
キャプテンを中心に、ピッチに立っている15人が
試合を組み立てなくちゃいけないし、
判断していかないといけないんですよね。
糸井
小さい頃からの習慣なんですね。
五郎丸
そうですね。
じぶんで考える意識は課題になっていて、
ずっと指摘されていましたね。

(つづきます)

2019-01-03-THU

teach me!

にわかラグビーファンの質問に、
五郎丸さんが答えてくれます!

対談がお開きになる頃に、
糸井から五郎丸さんに、こんなお願いをしました。
「たぶん、この対談を読んだ人は
絶対におもしろがってくれると思うんですよ。
読者からの質問をいくつか見つくろうんで、
『五郎丸さんが答えます』っていう
コーナーを作っていいでしょうか?」。
すると五郎丸さんも前のめりになって
「ぜひぜひ、喜んで!」と快諾いただけました。
最近ラグビーを好きになった「にわかファン」の人も、
これからファンになりたいと考えている人も、
ずっとラグビーを応援してきた人も質問をぜひどうぞ。
「2019年1月15日(火)午前11時」までに
投稿いただいた質問をいくつかピックアップして、
五郎丸さんに答えていただいたものを後日、
ほぼ日刊イトイ新聞で公開します。

募集は終了しました。

「丸の内15丁目PROJECT」を
応援しています。

ラグビーワールドカップ2019™日本大会の
オフィシャルスポンサーである三菱地所が、
様々な切り口でラグビーの魅力を伝えるために、
リアルのイベントとウェブの特設サイト
「丸の内15丁目PROJECT」を展開中です!
2018年9月に丸の内で開催したイベントでは、
「美術館」「ビジネススクール」「映画館」がオープン。
ラグビーをテーマに企画した「映画館」では、
世界のトップラガーマンが残した言葉とともに
ラグビーワールドカップの名場面を描く
ショートムービー『BY THE RUGBY』を制作し、
これから順次公開していくそうです。
“15丁目映画館臨時館長”に就任した糸井重里は、
ショートムービーの第一弾『JAPAN WAY』の
完成披露試写会で五郎丸選手と対談をおこないました。
2019年、「丸の内15丁目PROJECT」では、
ショートムービーの第二弾の公開を皮切りに
さまざまなイベントなどを計画しているそうです。
1月17日(木)から20日(日)の4日間は、
「丸の内15丁目」コンテンツをリアルに体験できる
「MARUNOUCHI RUGBY FESTIVAL」も開催されます。
ぜひTwitterFacebookをフォローして、
今後の活動にご注目ください。

ショートムービー第一弾
『JAPAN WAY』

前回大会の「ラグビーワールドカップ2015」で
歴史的な大金星をあげた日本対南アフリカ戦での
大逆転勝利の裏側にあった真実を、
出場していた選手たちの言葉とともに探る
約15分間のショートムービーです。
五郎丸選手の活躍ぶりも、ぜひご覧ください。

ほぼ日のラグビー企画

  • にわかラグビーファン、U20日本代表ヘッドコーチに会う。
  • ものすごく気軽にラグビーを観に行こう。
  • 行ってきました、はじめてのラグビー観戦!トップリーグ開幕戦@秩父宮ラグビー場