ほぼ日テレビガイドシリーズ

春の連ドラチェック2017

あややとふたりのプロフェッショナル
第1回まずはデジタルの話と『直虎』の話から。

CRISIS
~公安機動捜査隊特捜班~

フジテレビ●火曜日21時


あやや
それでは、さっそく
春の連ドラの話をしていきたいと思います!
──
ちっとも「さっそく」じゃないけど。
あやや
じつは、私、今回、本命のドラマが決まってます。
それでは、発表します!
この春の私のおすすめドラマはこちら!
──
早いから。その発表は最後だから。
あやや
ああもう、もどかしい!
ともかく、私が注目しているのはこちらです。
『CRISIS~公安機動捜査隊特捜班~』!
森下
あーー。
荒井
そう来ましたか。
あやや
主演、小栗旬さん、西島秀俊さん。
そして、『SP』を書いた
金城一紀さんのオリジナル脚本。
『SP』おもしろかったし、
私の好きな小栗旬さん出るし、もう死角なし。
荒井
小栗さん、ちょっと雰囲気変わりましたね。
森下
渋くなりましたね。
あやや
そうそうそうそうそう。
いいじゃないですか、
いまの森下さんのコメント。
森下
「渋くなりましたね」。
あやや
いい。いい。いい。
もう一回言ってください。
森下
「渋くなりましたね」。
あやや
ああ、うれしいなあ。
そんなふうに言ってもらえて。
もう一回‥‥。
──
あほか。
森下
あやや、昔から大好きだよね、小栗くん。
あやや
そうです、渋くなる前から好きです。
おじさんっぽくて、いい、髪型とかも。
しかも、みなさん、公式のムービー見てください。
アクション、やばいから。
──
いままでにない褒め方だね。
あやや
小栗旬さんだけじゃなく、
西島秀俊さんにもご注目ください。
観てください、このアクション。
ストイックで、カラダもつくってます!
キレ、いいですよね?
そして、女性陣もいいですよ。
新人の新木優子さん、
そして、森下さんの大好きな石田ゆり子さん。
森下
私のゆり子!
あやや
石田ゆり子さんは、
去年、さらにまたブレイクしましたよねー。
もともと人気がある方なんですが、
それ以上に、どんと行きました。
荒井
『逃げ恥』ですね。
あやや
『逃げ恥』ですよ。
インスタグラムも大人気。
もともと文章書くのも、発信するのも
すごく上手な方ですから。
森下
今回は、癒し役じゃない感じかな。
──
ドラマとしてはどうですか。
荒井
おもしろそうですよ。
スケールの大きなドラマだろうな、と。
映画化とかも最初からにらんでるのかな?
あやや
映画になりそうですよね。
お客さんもつきそうだし。
荒井
あと、火曜9時っていう
意外に浅い時間帯なんですね。
『SP』がたしか土曜の11時とかだったから、
もっと遅くてもおかしくないんだけど、
このあたりはあえて、というか、
大勢の人に観てもらうことを
すごく意識しているのかなと。
あやや
ヒットする要素はたくさんありますよね。
まあ、これ、私が小栗旬ファンだというのを
差し引いても、おもしろいと思います。
あらすじ、予告編を観るかぎり、
1話から3話まではすでにおもしろい。
スタッフも実力者ぞろいだし、
最後まで失速せずに行くんじゃないかなあ。
『SP』、おもしろかったですからねー。
森下
おもしろかったねぇ。
荒井
このドラマ、カンヌで上映会って
書いてありますけど、どういうことですか?
出品したっていうこと?
森下
映画祭って、祭ってだけじゃなくて、
コンテンツの見本市的な意味合いもあるから、
作品を買いに来ている人たちに
観てもらったっていうことじゃないですかね。
荒井
ああ、なるほど。
アメリカのテレビドラマが世界配信される、
みたいなことを目指してるのかな。
あやや
それ、いいじゃないですか!
日本のドラマが世界で観られるなんて。
そうなったら、日本のドラマ業界も
力の入れ方がずいぶん変わってきますよ。
森下
そういう展開はいいですね。
──
で、どういう話かというと、
「公安機動捜査隊特捜班」。
つまり、テロリストと戦ったりするんですかね。
荒井
そうみたいですね。
あやや
あの、素朴な質問なんですけど、
「公安機動捜査隊特捜班」ってことは、
いわゆる「公安」の人たちの話なんですよね。
公安というのは、諜報活動するわけでしょ?
スパイって、こんな派手にどっかんばっかん、
アクションしちゃっていいんですか。
森下
それはわたしも気になってる(笑)。
荒井
ははははは。
森下
だって、住宅街燃えてたよ、予告で。
あやや
ここに公安がいて、諜報活動されてたんだぞ、
って、バレバレですよ。
──
いや、それはだって、
派手にやろうとしているわけじゃなくて、
任務遂行のためにそうなっちゃったんだから
しかたないでしょう。
どっかんばっかんやりたくてやったわけじゃなくて、
どっかんばっかんやらざるをえなかったんですよ。
あやや
どっかんばっかんやらざるをえなかった!
荒井
『007』だってそうじゃないですか。
スパイなんだけどド派手なカーチェイスしたり、
なんか、基地や研究所を爆破したり、
どっかんばっかんやってますから。
あやや
あれも、どっかんばっかんやらざるをえなくて?
荒井
まあ、そういうテイでしょう。
──
西部警察の人たちだってそうだぞ。
車を燃やしたくてやってるんじゃない。
ショットガン撃たざるをえなくて撃ってるんだ。
森下
まあ、『SP』だって、そうだからね。
要人警護なんだからほんとは静かにしてなくちゃ。
あやや
わかりました。
ともかくこの『CRISIS』、
『SP』みたいに盛り上がるってくれると
いいんじゃないかと思っています。
ほら、『SP』で売れて、その後、
いろんなドラマに出るようになった
俳優さんって多かったじゃないですか。
このドラマに出てる飯田基祐さんもそうだし、
野間口徹さんもそう。
あと『SP』で名前が浸透したのは、
北村有起哉さんとか、松尾諭さんとか。
森下
松尾諭さんは、朝ドラ『ひよっこ』で
バスの車掌の役をやってたのがよかったな。
荒井
そして最近では『シン・ゴジラ』。
あやや
真木よう子さんも、その前から出てたけど、
『SP』のイメージ強いですよね。
荒井
そうですね。
あやや
『SP』俳優と呼んでもいいくらい、
たくさんいらっしゃいます。
だから、ここから
『CRISIS』俳優という人が出てくるかどうか。
たとえば、けっこう重要な役に
抜擢されている新木優子さん!
この人が第2の真木よう子さんになれるのか?
荒井
新木優子さんは、
映画の主演なんかもやってますけど、
夜中にやってた『ラブラブエイリアン』っていう
ちょっと変わったドラマで、
主役だったんですよね。
あやや
あー、やってた、やってた。
荒井
ちっちゃい宇宙人と暮らすみたいな話。
おもしろかったですよ。
ゴールデンでヒロインに近い役は、
今回、はじめてじゃないですか。
あやや
そう、だから、抜擢ですよ!
そして、この人は‥‥
朝ドラのオーディションも受けています!
森下
え、ほんと?
──
そうなんだ。
荒井
へえー。
あやや
あっ、わたしの勘ですよ。
一同
(ずっこける)
森下
なにそれ、なにそれ(笑)。
──
ひどいな!
荒井
あははははは!
あやや
あれ? そんなに?
いや、失礼しました。
ただのドラマ好きの当てずっぽうです。
──
たしかに、そんな気はするけど。
あの流れでそういうことを言うと、
そうなのかな、と。
あやや
だって、知ってるわけないじゃないですか、
誰がオーディション受けてるかなんて。
──
そりゃまぁ、そうだけど。
でたらめ言って、真に受けるほうが悪い、
みたいなこと言うなよ。
あやや
じゃあ、お詫びというのもなんですけど、
あの、新木優子さんについて、
ちょっと‥‥言ってもいいですか?
森下
言うんでしょ。
荒井
言うんでしょ。
──
言うんでしょ。
あやや
新木優子さんは‥‥まだ、顔が安定してない!
森下
どういうこと?
あやや
見るたんびにね、きれいだなとは思うんですけど、
なんていうか、写真によっては
「おや? 感じが違う」と。
──
早めにフォローしておくけど、
それは、整形とか、そういう話じゃなく。
あやや
なく、なく。
そういう話じゃまったくなく。
あのですね、ブレイクする前の女優さんは、
こういうふうに「観るたびに印象が違う」
ということが多いんです。
これは、いいことでも、悪いことでもあります。
ところが、ぽーんと知れ渡るときの女優さんは、
もう、お面みたいに同じ顔をしてる。
「ああ、あの人ね」とみんなが同じ顔を思う。
荒井
あー、わかりますよ、それ。
あやや
だから、注目されはじめているときは、
「いろんな顔があるんだね」という感じで
おもしろがられていいと思うんですけど、
この『CRISIS』のヒロイン役みたいに
いざ、ここで勝負だというときは、
顔を安定させておいたほうがいい!
もう、なんなら、お面をつけろ!
──
つけるな、つけるな。
あやや
でも、ほんと、
「キメ顔はこれですよ」という状態に
しておくくらいでちょうどいいと思いますよ。
具体的にいうならば、まず、ヘアメイク固定!
来週からでもはじめましょう、来週からでも。
今週からでもいいですよ!
打ち合わせしましょう!
──
もう、いいですか、このドラマについては?
荒井
ええと、ゲストも豪華ですね。
白洲迅さん、石黒賢さん、
杉本哲太さん、嶋田久作さん‥‥
森下
小市慢太郎さん、山口馬木也さん、
金子ノブアキさん、竜雷太さん。
ほんとだ、豪華。
あやや
というわけで、イチオシのドラマは、
『CRISIS』でした!
「春の連ドラチェック」でした!
──
まだ1本目だから。

貴族探偵

フジテレビ●月曜日21時


あやや
じゃあ、月9、いきましょうか。
荒井
今クールの月9は、『貴族探偵』。
あやや
主演は嵐の相葉雅紀さんなんですが、
このメインビジュアルをご覧ください。
相葉くんが真ん中に座っていて、
その後ろに立っている方々がとても豪華です。
仲間由紀恵さん、井川遥ちゃん、武井咲ちゃん、
生瀬さんがいて、そして、中山美穂さん。
荒井
うわー、すごっ!
あやや
たいへんな顔ぶれです。
こうして手前に座ってもらわないと、
あっさり風味の相葉くんが
主役なのにかすんでしまいそうです。
なかなかたのしみな顔ぶれです、今季の月9!
──
でもあれでしょ。月9は昔と違って
かなり観られなくなってるんでしょ?
荒井
まぁ、そうですね。
あやや
一時期は月9というといちばん数字を取る枠で、
みんなが出たがったわけですけど、
最近はどちらかというと、
叩かれがちじゃないですか。
そういうとき、役者さんとしては、
月9に出るメリットをどう考えているんでしょう?
荒井
うーん、でも、最近の月9がどうだというより、
嵐のメンバーが主演するゴールデンのドラマですから
まぁ、特に事情がなければ、出るんじゃないですか。
あやや
ああ、そうなんですかねぇ。
でも、私が事務所の人だったら、
いま月9に出るのはどうだろうって
思っちゃうんじゃないかなぁ。
森下
でもね、役者さんの立場からすると、
数字が低いものに出たら
評判が落ちるかというと、
じつはそんなことはないと思うんですよ。
あやや
あー、なるほど、たしかに、たしかに。
森下
つくり手側のテレビ局は、
たしかに気にするだろうけど、
役者さんってたぶんそこまで
気にしてないんじゃないかなぁ。
まぁ、ご本人の性格や考え方にもよるけど。
いまは観る方も目が肥えてるから、
演技そのものみたいなの観てくれるし。
でもまぁ、もちろん、数字がいいほうが
いいに決まってるけどね。
あやや
森下さんに訊いてよかった。
すごく納得しました。
森下
どちらかというとスタッフのほうが
数字が悪いときにダメージ大きいかも‥‥。
荒井
ああー、そうなんですね。
──
ええとお話のほうですが、
「主人公が推理をせずに謎を解く、
 前代未聞のミステリー」だそうです。
相葉さんが演じる主人公は、
年齢、国籍、家族など、一切が不明。
由緒正しい上流階級の生まれだということ以外、
一切が謎に包まれている紳士、ということです。
あやや
あの、思ったんですけど、
なんか、最近の連ドラって、
かならず1クールに1本くらい
貴族が出てきて探偵やってません?
『富豪刑事』とか、
『謎解きはディナーのあとで』とかも
わりとそういう感じだったし。
森下
そうかも(笑)!
織田裕二さんも貴族やってたよね。
荒井
『IQ246』ですね。
あやや
そうだそうだ、それもだ。
なんでですかね?
どうして富豪や貴族たちが
定期的に謎を解くんですか?
──
つまり、最近のドラマは
「金持ちが謎を解きすぎる」と。
森下
しかも、架空の貴族だよね。
いわゆる、漫画っぽい、記号としての貴族。
あやや
あ、たしかに。
わかんないけど、たしかに記号っぽい。
荒井
みんな貴族をよく知らないからこそ、
こういうマンガみたいな格好のほうが
わかりやすい、ってことなんでしょうね。
森下
ジョッキーブーツ、
いま貴族がいたとしてもはかないよね。
あやや
ああ、はかないでしょうねぇ。
──
そういう意味では、時代劇に近いのかな。
森下
そうかもしれない。
だから、月9っていうより、
雰囲気的には土曜の9時、みたいな。
あやや
ああ、たしかにそうですね。
日テレの土曜9時あたりの感じ。
森下
うちの娘が食いつきそうな感じなんですよ。
──
だから、月9だけど「ラブ」じゃないんですね。
荒井
月9が「ラブ」じゃないのは、
もう、めずらしくなくなってますよね。
福山雅治さんの『ガリレオ』なんかも月9でしたし。
あやや
「むふー、じぃつに、きょうみぶかぁい」
──
まったく似てない。
森下
だから、この『貴族探偵』は、
月9だけど「ラブ」じゃないし、
『ガリレオ』みたいな大人っぽい
推理小説のトーンとも違うし‥‥。
荒井
どちらかというと、土日の夜にやっているような
家族向けのコミカルな感じ?
あやや
たぶん、そんな感じなんでしょうね。
──
ちなみにこのドラマには原作がありまして、
「本格ミステリ・ベスト10」2014年度で1位を獲得。
原作は2冊合わせて発行部数は13万3000部。
あやや
そういうことを考慮すると、安定感はありますよね。
一話完結っぽいですし、観たらおもしろそう。
荒井
でも2冊合わせて13万部って、
まあ、もちろん売れてはいますけど、
百万部突破! みたいな煽り方に比べて
ちょっと微妙というかリアルというか。
森下
言われてみれば(笑)。
──
いまどき、2冊で13万部は十分すごいんですけど。
荒井
そうなんですけどね。
森下
言われてみれば(笑)。
あやや
とはいえ、気軽にたのしめるおもしろさがありそう。
キャストも豪華だし。ミポリン。
森下
そう、ミポリン。
荒井
地上波の連ドラ出演は、約15年振りだそうです。
ミポリン。
──
ミポリン。つぎ、行きましょう。

あなたのことはそれほど

TBS●火曜日22時


あやや
じゃあ、『あなたのことはそれほど』行きますか。
森下
いくえみ綾さんの原作、読みました。
あやや
読みました、わたしも。
森下
このマンガ、すごいです!
とにかく誰にも感情移入できない!
でも、やめられない!
って感じのマンガなんです!
あやや
ああ、そうそうそう!
だから、主演の波瑠ちゃんの役が
ドラマの中でどう表現されるのかすごく気になります。
私、波瑠ちゃんは好きな女優さんなんですけど、
なんというか、「魅力的な役」が
なかなか回ってきていない気がして。
荒井
ああ、わかります。
あやや
いえ、ドラマですから、複雑な役とか、
深みのある設定の役とか、いいと思うんです。
でも、たまには、「この人は魅力的だなあ!」という
すかっとした役を演じてもらいたいなあ、と。
──
たとえばいままでどういう役を?
あやや
ええとね、ざっと辿ってみると、
『あさが来た』では、
朝ドラのヒロインらしい明るい役でした。
老若男女のこころも掴みました。
──
うん、観てました。
荒井
あれは魅力的でしたね。わかりやすい。
あやや
で、そのあとの波瑠ちゃんは、
ずっと暗い役をやってる印象があるんですよ。
荒井
斉藤由貴さんと母と娘やってましたね。
あやや
『お母さん、娘をやめていいですか?』です。
斉藤由貴さんに溺愛されながらも、
そのお母さんに恋人を取られそうな娘。
その前は『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』、
猟奇殺人をしたいタイプの人間が、刑事やってて、
謎を解いていくという話。
荒井
暗かったなぁ、たしかに。
あやや
その前が、嵐の大野くん主演の‥‥。
荒井
『世界一難しい恋』。
森下
それはまあ、まだ明るいほうかな。
あやや
まだ明るかったですね。
で、今回、波瑠ちゃんが
どんな役をやるのかなと思ったら、
原作を読む限りでは、ものすごく、
いいところのない、ふつぅーーー‥‥
森下
ふつぅーーー‥‥
あやや
ぅーーーーー‥‥
森下
ぅーーーーー‥‥
──
長い長い。
あやや
の女。
森下
の役。
あやや
なんですよ。
荒井
へぇーー。
森下
とはいえさ、主人公なんだからさ、
ふつうでもやさしかったりとか、
特技があるとか、
なにかしらあると思うじゃん。
思ってるでしょ?
荒井
そりゃ、まあ。
あやや
一切、なし。
森下
ナッシング。
荒井
ええーー!
あやや
私、いくえみ綾、ど真ん中世代ですからね、
好きなんですよ、いくえみ先生の作品。
『彼の手も声も』の健ちゃんでしょ、
『I LOVE HER』に出る奥田民生さん似の
新ちゃんでしょ、
もう、私、すっごい感情移入して、
ほんとうに好きになっちゃったんです。
森下
ふつうは、感情移入できるようにしてくれてるよね。
ところが、このドラマがすごいのは、
波瑠さんの役にも、いいところ見つけられず、
劇団エグザイルの鈴木伸之さんの役にも
正直、いいところがなく。
あやや
要するに、人物相関図でいうと
ここが夫婦、ここが夫婦、
で、こことここが浮気してる、っていう、
なんか、だらしない関係なんですよね。
──
なんという魅力のない紹介の仕方だ。
荒井
広報の方に怒られそうだ。
あやや
でも、そういう世界観なのよ!
森下
そう、なんかね、少なくとも原作に関しては
わかりやすく魅力的に見えないように、
狙って描いてらっしゃるんだと思う。
たとえば「調子がよくてイケメン」という役がいると、
それ以外の人間くさい特徴をいっさい与えないというか。
あやや
あれは、あきらかにわざとですよね。
だって、いくえみ綾さんって、
こころ揺さぶられる作品をたくさん描いてらっしゃって
映画になった『潔く柔く』とか、
もう、それはそれは人物を
きめ細かく表現されているんですよ。
で、これは、簡単に感情移入できないようにしてある。
森下
うん、そうだと思う。
あやや
ものすごく辛辣に世の中のふつうの男女というのを
つめたーい目で見てるんだと思う。
──
なんでこいつと付き合ってんの、みたいな?
あやや
そう。
──
うわぁ。逆に観たくなってきた。
荒井
そうですね。
あやや
まさに、原作もドラマも
そこがコンセプトなんじゃないかと。
森下
いくえみ綾さん自身も
「誰にも感情移入せず淡々と描いてます」
っておっしゃってましたから。
──
すごい。
森下
すごい。
だから、すごいんだよ!
しかも、それがやめられないんだよ!
あやや
画期的なマンガなんですよ。
──
ちなみに森下さん、
脚本でそういうことはできますか?
森下
できないです!
でも、できたらすごいなと思います!
あやや
人物に、ほんとうに魅力がないの。
でも、唯一この中で非凡なのは、この人かな
──
東出昌大さん。
あやや
魅力がないというか、気持ち悪いの。
言ってみれば、冬彦さんですよ、
『ずっとあなたが好きだった』の。
荒井
へぇー。
森下
浮気をされても、なにをされても、
「ぼくはきみを愛してる」
「帰っておいで、帰っておいで」って。
ほんと、すっごい気持ち悪い、っていう。
荒井
ちょっと、そういう説明を聞けば聞くほど、
興味が湧いてきますね。
──
人というのは不思議だなあ。
あやや
そういうわけで、キーとなるのは
東出昌大さんだと思うんですけど、
ここでね、ちょっと余談ですけどね、
私、東出くんについて考えてみたんです。
──
ナイツのネタふりみたいになってきたな。
あやや
東出昌大さんについて、
インターネットのヤホーで調べてきました。
──
ヤフーって読むんですよ、あれは。
あやや
東出昌大さんといえば、
まずは森下佳子さん脚本の朝ドラ、
『ごちそうさん』ですよ。
大阪弁にも挑戦し、杏ちゃんと夫婦役、
そして同時にリアルの伴侶も得たわけです。
その後、映画版『デスノート』で主演、
そして、『聖の青春』ではなんと
羽生善治さんの役ですよ!
これが、ハマりました。
森下
めっちゃハマったの、羽生さんに。
荒井
へぇー。
──
糸井さんも言ってたね。
『聖の青春』は出てる役者がみんなよかったって。
あやや
そうそうそうそう。
でね、主演の松山ケンイチくんがいいというのは、
いってみれば、わかってたことなんですよ。
もともと役に入り込んだときの
爆発力がすごい役者さんだし、
魂を込めざるをえない役ですし。
そんななか、「羽生」もすごかった!
なんというか、ご本人との相性がばっちり。
森下
そうそう。この人は、ほんとに
マッチング次第でハマるなと思った。
このあいだ『リーダーズ』っていう、
トヨタのドラマやってたでしょ。
あのときのふつうの芝居もよかったんだけど、
とくにいいなと思ったのは、昭和のクラシカルな背広。
めちゃめちゃ似合ってた。
あやや
似合う、似合う!
『ごちそうさん』のときもね、
そういうクラシカルなところで光ってた。
森下
格上の背広とかがほんっと似合うんですよ。
ほかにあんまりいないですからね、
こういうクラシカルなタイプのハンサムは。
あやや
そんなクラシックハンサム、
東出昌大さんですが、
もしも私が彼のこれからの道を示すなら!
──
神か。
あやや
僭越ながら私が彼の未来を照らすとすれば!
高倉健さんになりなさい、と言いたいです!
荒井
ほーーー。
森下
あ、それ、本人も言ってたよ。
あやや
え! 本人が言ってたんですか!
森下
うん。たぶん、なんかで。
間違ってたら東出くん、ごめん。
あやや
もしおっしゃってたとしたら‥‥
「高倉健さんになりたい」は、だめだ!
──
どっちなんだよ。
あやや
本人が言っちゃだめなんですよ、
「高倉健さんになりたい」は。
荒井
高倉健さんになりなさい、と言ったのに?
あやや
高倉健さんは、そこにいるだけで芝居なんです。
存在だけでもう芝居なんですよ。
森下
そうそうそう。
あやや
それはご本人がなろうとするものではなく、
いつの間にかなってしまうものなのです。
荒井
存在だけでカリスマ的なオーラを放つ、
っていうことですか。
あやや
その道を行くのではありません。
行ったあとに道ができているのです。
──
教祖か。
森下
ドラマと原作の話にがらっと戻ると、
原作のイメージだと、
波瑠ちゃんと里依紗ちゃんは、
逆じゃないかと思うんですけど?
あやや
あ、私もそう思います。
ただ、『バクマン』の配役も
発表されたときは逆じゃないかと言われて
けっきょくそれでよかったですから、
観るとしっくりくるのかもしれないですよ。
──
荒井先生はいかがですか、このドラマ。
荒井
お二人の話に押されて黙ってましたが‥‥
じつはこれ、めちゃくちゃ期待してます。
あやや
え、そんな急に、どうしたんですか。
荒井
なぜかというと、火曜10時だから。
あやや
ああー、「カジュー」ね。
──
出ました、「枠で語る男」、荒井清和。
荒井
だって、ここのところのこの枠、
『重版出来』があって、
『逃げ恥』があって、
『カルテット』ですよ?
あやや
あーーー、そうだ。
森下
たしかに、たしかに。
荒井
こんなおもしろい枠ないじゃないですか。
名作をばんばん出してる枠なんで、
もう、この枠でやるというだけで、
まずは期待して観ますよ。
あやや
たしかに、この枠は、
いまいちばん勢いがありますね。
火曜日の10時。
荒井
数字を絶対出すというわけじゃなくて、
そんなに数字がよくなくても
やたらと印象に残るドラマをやるんですよ。
このあいだの『カルテット』もそうでしたし。
あやや
数年前までは
フジテレビの木10とかが元気だったのにね。
森下
火曜10時だって、ちょっと前は
鳴かず飛ばずの枠だったよ。
あやや
枠の栄枯盛衰ですよね。
──
「枠の栄枯盛衰」!
ドラマの世界は独特だなあ。
森下
流行りがあって、ひとつウケたら
それがほかの枠に真似されて、
違う枠があえて違うことをやったらコケて、
みたいな感じでずっと回ってますよね。
ほんと、シーソーゲームですよ。
荒井
で、いまは、この枠ですよ。火曜10時。
今クールも、ここだ、という気がします。


(まだまだつづきますー)
2017-04-28-FRI

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN