鍵のかかった部屋
フジテレビ系 月曜日午後9時
あやや じゃ、月9、行きますか。
荒井 『鍵のかかった部屋』。
あやや あ、内容に入る前に、みなさん、
月9の路線変更については
どう思われますか?
荒井 あー。
森下 でも、前回の『ラッキーセブン』もさ、
違うといえば違うけど、
月9といえないこともないわけで。
荒井 まぁ、でも、いわゆる月9とは違う。
あやや これはもう、
そうなったということですかね。
── ‥‥あの、すいません、
当方、なにがなんやらです。
あやや 月9がついに「恋」をやめたんです!
── ええと、フジテレビの月曜9時という
伝統的なドラマの時間帯で
放映されるドラマのジャンルが、
これまでの定番であった
ラブストーリーではなくなったと。
あやや そうです! けっこうな事件です!
月9が「LOVE」をやめたんです。
路線変更して、これが2本目です。
── ラブじゃなくて、ミステリーになったの?
あやや いまのところそうです。
森下 でもさ、そういうこと言ったら
『ガリレオ』だってそうだったじゃん。
いずれにせよ、ほのかなラブは
あるんじゃないの?
あやや ほのかなラブかぁ‥‥。
荒井 ミステリーベースのなかに
ほのかなラブがある『ガリレオ』型が
いま、一番ウケるんでしょうね。
あやや ウケますよねぇ。それはわかる。
森下 しかも、密室トリックもの。
ふつうにおもしろそうですよ。
あやや それはそうですね。
枠の路線変更とか無視したら、
けっこうたのしみ。
荒井 戸田恵梨香さんが弁護士か。
森下 これはしかし、
出演者の少なそうなドラマですね。
あやや メインキャストは、いまのところ3人ですね。
嵐の大野智さんと、戸田恵梨香さんと、
佐藤浩市さん。
佐藤浩市さんって、じつはいま、
ものすごく売れてますよね。
こないだ日本アカデミー賞を見てたら、
優秀作品賞5作品のうち3作品に
佐藤さんが出てるんですよ。
ちょっとすごくないですか。
森下 それはすごいかも。
荒井 どセンターじゃないっていうか、
絶対主役っていうタイプじゃないからですかね。
この年令の役者さんでは、
意外といないんじゃないですか。
あやや 俳優さんにこう言っちゃなんですが、
けっしてハンサムじゃないじゃないですか。
森下 そう? ハンサムだよ。
荒井 ハンサムですよ。二枚目。
あやや あ、しまった。
いや、ハンサムなんですけど、
ハンサムのなかで比べると
完璧っていうわけじゃないじゃないですか。
森下 あー、そういうこと。
荒井 いわゆる、CGみたいに
整った感じのハンサムじゃなく。
あやや そうそうそう。
わたし、子どものとき、
テレビに映る佐藤浩市さんの口を
隠して見てたことがあるんですよ。
口を隠すとハンサム、と思って。
── なんて失礼な子どもだ。
荒井 ていうか、子どものときから
そんな見方を。
森下 でもさ、あの口がセクシーなんじゃないの。
あやや たしかに、口もとが魅力でもあるんですけど、
口を隠すとものすごいハンサムになるんですよ。
── ま、たしかに、セクシーっていうのは
整っているというよりはむしろ
独特のくずれかたに対して言うのかもしれない。
荒井 CG的ハンサムじゃないからこそ、
いろんな作品に呼ばれるのかもしれないですし。
あやや あー、それはあるかもしれない。
あと、絶妙な「枯れ方」をしてるんですよね。
『マネーボール』のブラッド・ピットを
観たときにすごく思ったんですけど、
全盛期のぎらぎらした感じじゃなくて、
ほどよく枯れてるじゃないですか。
森下 うーん、枯れてるか?
あやや 渋さがきちんと出てるんですよ。
若いときにすごくハンサムで
渋くなれなかった人って
けっこういるじゃないですか。
だから、50代になったときに、
顔にいいしわが刻まれてるかどうかは
ものすごく大きなことなんですよ。
── そりゃまたちょっと「生き様」の話だね。
あやや そうそうそうそう。
俳優さんって、時代や経験とともに
顔に刻まれるものがいかに大切かということ。
森下 その人の人生の蓄積がね。
あやや その蓄積が佐藤浩市さんにはある! と!
(机をどんと叩く)
荒井 それより、ブラピって堤真一さんに似てません?
あやや あ、似てますね。
森下 草刈正雄さんは、リチャード・ギアと似てない?
荒井 リチャード・ギアは小泉純一郎でしょう。
── いや、リチャード・ギアは
元広島でいま巨人のピッチングコーチをやってる
川口和久さんでしょう。
森下 布施明さんじゃない?
あやや 布施博さんじゃなくて?
── 布施博さんは
元巨人でいまタレントをやってらっしゃる
宮本和知さんでしょう。
あやや あれ?
森下 あれ?
荒井 あれ?
── なんでこうなったんだっけな。
森下 ブラッド・ピットの話?
あやや もっと戻ると、
佐藤浩市さんの口もとの話でしたっけ?
── もっともっと戻れ、もっと。
荒井 月9の路線変更についての話が
途中だったような。
森下 そうだ、そうだ。
── そうだ、そうだ。
あやや 月9がどうやら恋愛路線をやめて、
ミステリーへシフトしました、と。
で、前回の『ラッキーセブン』は
正直なところ、まだ戸惑いがあったというか、
本格的なミステリーに挑むぞ、
というほどの印象はなかったんですよ。
で、今回『鍵のかかった部屋』は、
そこを一歩踏み込んでというか、
けっこう本格路線を追求してきたな、
という感じがするんですよ。
人気のある原作をもってきてるし。
森下 手堅い感じがしますよね。
原作も貴志祐介さんだし。
あやや けっこう本気で取りに行ってる感じがします。
── でもさ、そうするとさ、「月9」というのは、
単純に「月曜日の9時」という
時間帯を指すことばになるっていうこと?
あやや そういうことになりますね。
荒井 まぁ、もともと、
そういう決まりがあったわけじゃなくて、
そこでラブストーリーの名作が多かったから
「月9」=「ラブ」っていう伝統が
できたということだと思うんですけど。
あやや そうですね。
荒井 だから、「月9」を、
そのときどきのドラマの王道だと考えれば、
「ミステリー」+「ほのかなラブ」
っていうのは、いいと思いますよ。
── なるほど。
森下 逆にいうと、いまの若い人は、
ラブストーリーだけで展開するドラマには
興味がないっていうことかもしれません。
あやや あーー、そうかも!
森下 「月9」を若い人の枠だと定義すると、
そういうことかなぁ、と。
だって、『最後から二番目の恋』観て
沸いてたのは、アラフォー世代ですもんね。
荒井 そうですね。
若い人たちが恋愛に興味がない
っていうことはないでしょうけど、
恋愛ドラマには興味がない。
あやや でも、じゃあ、王道の学園ものの少女マンガ、
『君に届け』とかは誰が読んでるんですか?
ひょっとして、それも‥‥。
森下 うん。
あなたたちと、わたしたちの世代が。
あやや ひーーー!
それって‥‥それって‥‥
お寒くないですか?
森下 いやいやいや、でも、そうでしょ。
荒井 ありえますよ、それは。
女子高生じゃなくて
アラフォー女子が読む学園ものでもあったり。
あやや えー、そりゃ、わたしは読んでますけど、
でも、それって‥‥お寒いっ。
森下 たとえば『カーネーション』も
すごく人気でしたけど、
あの少女マンガ的な展開を観て、
ドキドキしてるのは、やっぱり40代でしょ。
あやや ガーーーン!
じゃあ、あの、
「おいも‥‥好いとっと‥‥」は‥‥。
森下 そうそう、
「おいも‥‥好いとっと」に
きゅーんと撃ち抜かれたのは、
はるか昔に女子高生だった
われわれなのではないかと。
あやや そうなんだぁ。
── 誰がお芋を好きなんですか。
女ふたり だまらっしゃい!
荒井 ま、簡単にいうと、
上の世代の王道は、ラブ。
若い世代はラブよりミステリー。
森下 でもさぁ、言ってもいいですか!
── わぁ、意外な展開。
あやや 言うんでしょ!
荒井 言うんでしょ!
森下 ひとりの視聴者として言うんですけどね、
わたし、どんなドラマを観るにしろ、
とりあえずなんらかの
ラブストーリーがないと萎えるのよ!
あやや そうですよね!
森下 だから、わたし、『南極大陸』観ながら、
なんで南極観測隊のなかに女の人を
入れてくれなかったんだろうって思ったもん!
荒井 いや、でも、南極には‥‥。
森下 ドラマなんだから、
女の人を1人か2人くらい
入れてくれてもいいじゃないか!
いや、実際にはムリですけどね。
荒井 ははははは。
あやや 南極にさえ、ラブがほしい。
森下 ほしいんですよねー。
「くっついてくれ!」って思いたいのよ。
── あ、そうか、なるほど、
それでドラマの『JINー仁ー』は
原作よりもラブの色が濃いんだ。
原作って、そこはけっこう隠し味というか
淡々としてるけど、ドラマはわりと
気持ちが入るくらいの
濃度があるじゃないですか。
あやや ああーー、なるほど。
森下 そこはあたしの素の感性が
出ちゃってるのかもしれません。
ラブないと、わたし、完走ムリなんですよ。
ほのかでいいんですけど。
荒井 なるほどなぁ。
── で、何度目かの軌道修正をしますが、
この『鍵のかかった部屋』は?
あやや ラブは、あるのかな?
森下 わたし、ほのかなラブはあると思いますよ。
荒井 そうですね。
少なくとも、ラブを感じさせる、
くらいのことはあると思う。
あやや そこは、路線変更しても、月9ですし。
森下 うん。
『HERO』でも、『ガリレオ』でも、
愛情なんだか、同志愛なんだかわからない、
ラブを感じさせるなにかがありましたから。
あやや そういう意味では、
主演が大野智さんというのは
すごくバランスがいいのかもしれないですね。
たとえば、この設定でマツジュンだったら、
もっとラブに発展しそうじゃないですか。
もう、初回から
「あ、このふたりつき合ってる?」みたいな。
森下 (笑)
あやや だから、ここで大野さんっていう配役は上手だなと。
森下 でも、こないだ櫻井さんで
『謎解きはディナーのあとで』をやったでしょ。
で、今回、大野くんが『鍵のかかった部屋』で、
相葉くん『三毛猫ホームズの推理』‥‥。
あやや あー(笑)。
荒井 嵐全員で、原作付ミステリーを(笑)。
あやや すごーい、そうなりかねない(笑)。
── きっとこれ、90年代だったら、
メンバー全員がラブストーリーを。
森下 やってたんでしょうねぇ。
あやや そうだ、そうだ。
荒井 そういう流れですね。
家族のうた
フジテレビ系 日曜日午後9時
あやや これは『ATARU』の裏ですね。
フジテレビの日曜日夜9時の
新設ドラマ枠がすっかり定着しました。
荒井 『マルモ』であたったのが
大きいんじゃないですか。
あやや ニュースとしても取り上げられましたから
触れておきますと、このドラマ、
はじまる前にちょっとしたトラブルというか、
ま、いってみれば、パクリ疑惑がありました。
森下 ああ、そうですね。
── なんですか、それは。
あやや ええと、伴一彦さんの
『パパはニュースキャスター』
という田村正和さん主演のドラマがありまして。
── 知ってる、知ってる。
あやや 永田さんも観てたくらいの
人気ドラマだったんですが、
この『家族のうた』は、当初、
それとほぼ同じ設定になる予定で、
伴一彦さんが盗作じゃないかと指摘し、
それを受けたTBSが抗議したことによって、
急遽、設定を変えたということみたいです。
3人の娘っていうところを、
男女の姉弟にしたりとか。
── へー、そんなことが。
あやや あったんですよ。
── ん? でもさ、
『ママはアイドル』を『パパはアイドル』に
っていうのは、大丈夫なの?
あやや あれは同じ局ですから。
森下 正式にリメイクしたっていうことです。
── あー、そういうことなんだ。
筋を通してれば大丈夫ってことか。
森下 なんか、80年代リメイク、人気ですね。
あやや そうですねー。
わたしは伴さんのドラマで育った世代だから
うれしいですけど。
森下 わたしも大好きです。
荒井 いま、時代が一周した感じがありますよね。
あやや そうなんですよ。
伴さんのドラマで育った世代、
30代、40代の、脂ののった人たちが
いまのドラマの制作陣に
入ってきてるんですよ。
森下 その世代にとっては、
伴さんのドラマって、
ある種のバイブルですから。
荒井 ドラマに限らず、いまはあの時代のものが
どんどん復活してる気がしますね。
CM観てても、懐かしいアニメのキャラクターが
いまのものとしてたくさん使われてますし。
あやや ドラマの内容を見ていくと、
オダギリジョーさんが
なかなかせつない設定の主人公で。
森下 落ちぶれたロックバンドのミュージシャン。
フジテレビって、こういう設定、好きですよね。
荒井 主役が落ちぶれたロック歌手っていうのは、
むかし『チャンス!』っていうドラマが‥‥。
森下 あ、あった!
荒井 ありましたよね。
森下 三上博史さんと、西田ひかるちゃん。
あやや ああー、あった、あった。
荒井 北川悦吏子さんですよ、たしか。
あれおもしろかったなぁ。
「小さくまとまんなよ!」って言うやつ。 
森下 三上博史さんのね。
あれ、すごいおもしろかったですよね。
荒井 おもしろかったです。
主人公キャラは、あれっぽいなぁと思って。
森下 たしかにねー。
っていうことは、『チャンス!』的な
家族モノになるのかな。
あやや そうかもしれないですね。
個人的にはユースケ・サンタマリアさんの
存在感に注目したいです。
いい意味で、ドラマを揺さぶってくれそう。
荒井 そうですね。
しかし、このフジの日曜9時は、
すっかり育ってきましたね。
森下 色がはっきりしてますよね。
家族モノをやるんだっていう。
あやや そうですね。
まえのクールは、松下奈緒さんの
『早海さんと呼ばれる日』。
これも、けっこうよかったです。
── 「『JINー仁ー』の裏に
 新しい枠が出きるんだよー」って、
森下さんが嘆いてたのも懐かしいですね。
森下 ショックだったー、あれ。
一同 (笑)
 
(つづきます)

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