タモリ先生の午後。
こんな職員室があればいい。


タモリ 品川で見た詐欺でも、
いろんなものを売ってるんですよ。
おやじとかおばさんとか、
5、6人、こう見てるんですけど、
もう、全員サクラなんですね。
糸井 蛇のも多かったですよね。
蛇と蛇と戦わせるから、ちょっと待って、って。
タモリ いや、それ見ない(笑)。
糸井 あ、そうですか。
地方によってなのかな?
マムシを戦わせるとか蛇を戦わせるっていうんで、
ずっと待ってるんだけど、
待ってる間に何回も物を売るんですね。
タモリ (笑)
糸井 戦わせるのはいつなんだろう?
とヒマだからずっと待ってると、
「あ、時間がない!」っていって
帰っちゃうんですけど(笑)。
タモリ それ、俺、見たことある。
蛇じゃないかもしれないけど。
やっぱり、戦わないんですよね。
ひとつそういうので、
バナナの叩き売りっつうのあって。

伝統芸能としてバナナの叩き売りって、
やるじゃないですか。
俺が小っちゃいころ見てたバナナの叩き売りって、
もう、芸能なんです。

まず、叩き売りのことをひと通り説明するの。
「値段を下げてくんで、
 あの、これを私が叩くから。
 (ポン!)はい、5千円。
 (ポン!)はい、って、
 この叩くタイミングで、
 『くれ』と言ってくれよ」と。

「今から練習でやるから」って。
糸井 解説込みなんですか(笑)。
タモリ ええ。

「(ポン!)はい、何円」
「(ポン!)はい、何円」
だんだん値段が下がってくるんです。
「永遠には下がんないよ?
 こっちだって商売だから」とか。
糸井 マギー司郎みたいですね(笑)。
タモリ うん。

「永遠には下がんないし、
 で、それがあんたたちと俺たちの呼吸で、
 叩いた時には下がるから、いちばん最初に、
 それ!と言った人に、それはもう当然売ります。
 どこで、『それ』って言うかどうか、
 っつうのは、ま、
 あんたがたのアレによりますから。

 で、え、このバナナ、えー、
 もうこれはいいもので、今から、
 ちょっとこうやって、
 1本取って自分で食べてみよう。

 あぁ、今日のバナナは、いいバナナ。
 で、んで、これで、ちょっと、
 じゃあ、食べてごらんなさい。
 1本しかやんないから、そこ、分けてよ?」

こう言うんだよね。
糸井 うまいんだ(笑)。
タモリ おやじ、うまいんですよ。
それで、
「さ、いいですか? まずは練習ですよ」と。
で、練習して、「(ポン!)はい」とやって、
おやじがなんか変な突っ込みするんです。

「あんた、遅い。遅いの。もう1回、いくからね」
延々それで、「はい」って、
叩きそうで叩かなかったり、
いろんな小ネタを挟むんですよ。

「あなた、あなた遅いよ、だから。
 それじゃ、買えないよ?」って。

「で、いきますよ。
 (ポン!)1,200円、
 (ポン!)1,200円、
 (ポン!)1,500円。はい!
 ……って、あなた、よく聞かないと、
 俺の言うことを。
 値段、上がってるじゃないの」と(笑)。
それで大爆笑になるんですよ。
糸井 あはははははは!
タモリ 九州。
糸井 (笑)そいつの芸なんだ。
タモリ 俺、それがおもしろくって。
糸井 いいなぁ、マギー司郎が入ってて(笑)。
タモリ マギー司郎が入ってるんですよ。
それで、芸能で沸かせるんですよね。
糸井 メタメッセージですよね、つまり。
商売の仕組みごと商売をするっていう。
タモリ うん。
糸井 はぁー、詐欺師も、
そこまでくると、ある種、
コンセプチュアルアートというか。
タモリ だからそのとき
完全に客はもう乗ってるんですよね。
もう、バナナを買いたいというよりも、
「言ってみたい」とかいうのがある。
「今の言い方いいねぇ」とか言われたい。
「今の言い方は、ちょっと田舎臭いな、あんた」
とかいうと、また沸くんだよね。
糸井 九州人たちの心を、もてあそぶような!(笑)
タモリ そうそう。
糸井 九州人の目立ちたがりを(笑)。
タモリ くすぐるようなね。
また、客がのるんだ、それにね。
  (つづきます。)

これまでのふたり
このあとのふたり

2004-01-09-FRI

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