タモリ先生の午後。
こんな職員室があればいい。


糸井 詐欺師の歴史とかは、おもしろいですよね。
タモリ 詐欺師はおもしろいと思います。
糸井 つまり、クリエイティブって、
ああいうことですよね。
タモリ そういうことをいうんですよ。
違う現実をつくっちゃうんですから。
違う現実は、なかなかつくれないですよ……。
糸井 詐欺関係で、タモリさんの
お好きなパターンはどういうやつですか?
タモリ あらゆる詐欺が好きです。
俺の友だちが小っちゃい頃に、
戸塚に住んでたんですけど、
そんときに来た詐欺の話をしたのがよかった。

「ハァ、ハァ」っていいながら
ひとりの男が家に飛び込んでくるんです。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「ハァ、奥さん、すんません、
 水、1杯もらえますか?」
「大丈夫ですか?」
「ええ、水さえ貰えれば……。
 あ、すいません奥さん、ありがとうございます」

で、水飲むんです。
ハァハァいってんだよ。
「どうしたんですか?」
「いや、あぁ……取られた、金取られた
そこから詐欺がはじまる(笑)。
糸井 いいね!
すごい前振りがあるんだ、迫力のある。
タモリ ええ。
「実はこうこうこうで、国へ帰るのに、
 金をこう持って、今そこにいるんだけど、
 かっぱらわれて。追っかけて来たんだ……。
 ここでもう見失って。それでもう、
 苦しくて苦しくて。ああすいません、
 ほんっとにありがとうございます。
 水1杯だけもらおうと思いまして」って(笑)。
糸井 パールハーバーみたいな奇襲ですね。
タモリ それからいろんなことを
しゃべりはじめるわけですよ。
自分の家庭環境とか、もう帰れないとか。

「いったい、だいたいいくら仙台までかかるの?」
って、奥さんのほうは、訊くらしいんですね。
糸井 ええ。
タモリ 訊きますよね。
糸井 ええ。
タモリ そうすると、詐欺ではないですよね、半分は。
糸井 まぁ、そうですね、
いくらかかるか、って事実だけですから。
タモリ 「ええ、実は5千円なんで」
「5千円あれば帰れるの?」
「……ああ、はい、もう、5千円あれば」
「あんた、じゃあ、後でお金返す?」
「って、はい、もちろん奥さん」
糸井 (笑)
タモリ で、5千円取って、
2度と来ないらしいんですけど。
糸井 大芝居の入場料5千円ってことですよね。
タモリ うん、大芝居。
  (つづきます。)

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2004-01-07-WED

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