武田観柳斎の小さな野心。
〜八嶋智人さんに、あれこれ訊く〜
第7回 「観柳斎、転落」について。


糸井 自分が死ぬ回(第41話「観柳斎、転落」)の
撮影っていうのはどうでしたか。
八嶋 まあ、やっぱり、おのおのの、
当番が回ってくるというか、
そういう気持ちで臨むんですけど。
糸井 うんうん。
八嶋 まあ、どう撮ってくれてもけっこうだ、
みたいな気持ちになりますね。
いろいろ考えるのはやめよう、っていう。
糸井 なるほどね。
八嶋 「観柳斎、転落」でいうと、ぼくは
ぼくは自分が死ぬ、斬られるシーンより、
むしろ、「もうダメだ」と思ってたのに、
(近藤)勇に「はい上がってこい」って
言われる場面のほうがキモなんですよ。
斬られて死ぬのは、もう、
つけ足しみたいなもんですから。
糸井 ああ、そうか。
あの近藤とのやり取りはよかったねえ。
八嶋 あそこの慎吾君って、やっぱりすごくて、
ふだんは疲れてて眠そうなのに、
本番だと、こう、グワッてなるんですよね。
モワッて、なにか、背中から出てくるんですよ。
そうすると、こっちもそれに乗って、
入っていけるんですよ。
糸井 へえええ。
八嶋 ぼく、あの回の、
糸井さんたちが話している
ほぼ日刊イトイ新聞を、
もらって読んだんですけど。
たしか糸井さん、
2回目に観たほうが泣けたって
おっしゃってたじゃないですか。
糸井 ああ、「観柳斎はおれなんだ」って
近藤が言うあたりのことですね。
八嶋 それによって、近藤勇っていう人が
どういう人かが伝わるんですよね。
糸井 そうですね。それは、やっぱり、さっき話した
「雑多な若者が演じる新選組」
ということに通じるんですけど、
けっきょく、田舎者の集まりなんですよ。
田舎から出て来た、力を持て余した、
もしかしたらそのまま
ただの田舎の墓に埋もれていくような人が、
花道に進軍するような話じゃないですか。
八嶋 はい。
糸井 で、あそこで近藤が言う
「観柳斎は俺なんだ」っていうセリフは、
あらゆる田舎者の心に響くんですよ、たぶん。
八嶋 あああああ。
糸井 ほんものの観柳斎が男色家だったとすると
さらに複雑骨折してますから。
八嶋 聞いた話ですけど、観柳斎は近藤以外には
そうとう嫌われてたみたいですからね。
ほんとうに、いついかなるときでも
殺してやろうっていう人が
いっぱいいたらしいですからね。
お墓もないですし。
糸井 あ、そうか。お墓ないんだ。
八嶋 はい。いちおう隊士全員の、みたいな
形式上のお墓ではあるらしいんですけど。
あの、このあいだ、
ナイロン100℃っていう
劇団のお芝居をやってるときに、
お墓に行ってきたんですよ。
ちょうどそれに、河合役の大倉と、
あと望月亀弥太役の三宅(弘城)さんも出てて。
で、京都に3人で寄ったんですよ。壬生寺に。
そしたらやっぱりちゃんと
河合とかのお墓があるじゃないですか。
糸井 河合の墓は、大きいですよね。
いまでもお墓参りされてるんですよね。
八嶋 そうらしいですね。
で、河合のお墓とかにお参りして。
考えてみると、はじめてなんですよ。
自分がやった役の人が実際にいて、
しかもその人のお墓があるなんてことは。
そのお墓を自分がお参りしているっていう、
この、なにかつながっている感じ‥‥。
糸井 うんうん。
八嶋 ああ、そういうものに
出させてもらったんだなあっていう
うれしい気持ちがあって。
糸井 なるほどねー。
たんなる視聴者のぼくらですら、
京都でお墓を見たときは、
そういう不思議な気分になりましたからね。
八嶋 ひとつおかしかったのは、
まあ、がっかりした話なんですけど、
壬生寺でそこを管理している人に会ったとき、
まあ、たいてい、京都のそういう場所では
「ようこそ」なんて言われるわけですけど、
ぼくを「観柳斎」って言ってくれないんですよ。
「へぇ〜、へぇ〜」って言われて。
一同 (爆笑)
八嶋 『トリビア』の人だと思われてて、
最初ぜんぜん気づいてくれなくて。
糸井 はははははははは。
八嶋 ぜんぜん、「へぇ〜」と「観柳斎」が
結びついてないんですよ。だから、
「『へぇ〜』じゃなくて
 『観柳斎』って言ってくださいよ」
って(笑)。
すげー、がっかりしましたね。
糸井 「へぇ〜」>「観柳斎」なんだね(笑)。

(続きます!)

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2005-05-03-TUE

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