『新選組!』
with
ほぼ日テレビガイド
第34回「寺田屋大騒動」を観て。

永田 いま、第34回を観終わりました!
糸井 (拍手!)
西本 (拍手!)
永田 (拍手!)
完璧!
西本 すばらしい!
糸井 まいったねー!
永田 いや〜、今日は話しやすいですね!
西本 ここのところ、重かったですからね。
糸井 ある意味、話しにくいともいえますよ。
永田 そうはいっても、前回、前々回とくらべると、
明るく話せるじゃないですか。
とにかくよかったですよ、今回は。
糸井 たしかによかった!
これ、まず日曜にひとりで観たんですけどね。
西本 ゲラゲラですか?
糸井 もう、ゲラゲラですよ。
今日もまたゲラゲラでしたけれど。
永田 ぼくらは今日初めて観たんですが、
いや、たのしませていただきました。
西本 いいもん観せてもらいましたわ。
糸井 どこから話しましょうね。
話すところありすぎますよね。
永田 無駄と隙のない回でしたねー。
ある意味、無駄だらけかもしれないけど。
西本 じゃあ、恒例となっているやつを
先に話してもいいですかね?
永田 ‥‥恒例? なんだっけ?
糸井 ‥‥また、誰かに会ったんですか。
西本 ええ。
永田 うそ!
西本 先日、会社に来て、バイクを止めて、
タバコを買おうとしてたら、
魚籃坂を水色の服を着た
遠くからでも目鼻立ちがわかるような美人が
急ぎ足で歩いてきたんですよ。
「おっ」と思って、ぼくの前を
通りすぎるときによく見てみたら‥‥。
糸井 誰よ?
永田 誰よ?
西本 ‥‥「お梅」でした。
永田 えっ、鈴木京香さん?
糸井 ちょっとすごいですね。
西本 我ながら驚きます。
永田 そりゃもう、才能ですよ。
西本 なにしろ1週間に必ず1度、なんらかの形で
『新選組!』の出演者に出会ってますからね。
今週に至ってはもう、
会うことが決定してますから。
永田 えっ、そうなの?
西本 ええ、木曜日収録するTBSラジオ
ザ・チャノミバのゲストが
なんと、山南こと堺雅人さん!
永田 あっ、決まったんだ。
へえええ、そうなんだ。
糸井 たのしみなんですよ。
スタジオパークでも
すごくいいこと言ってましたからね。
永田 ‥‥考えてみると、ぼく、
山南さんの現代の姿を知りません。
西本 あ、そうなんですか。
永田 ええ。『新選組!』と『壬生義士伝』
観たんですが、どっちもチョンマゲです。
チョンマゲで腕組みしている姿しか
思い浮かびません。
糸井 ふだんはちょっとロン毛気味ですよ。
永田 ロン毛! 山南さんがロン毛!
‥‥思いもよらないなあ。
あれですか? ふだんは
Tシャツとか着ちゃうんですか?
糸井 ふだんはTシャツとか
着ちゃうんじゃないですかね。
永田 がーーーん。
西本 ショック受けてないで
進行してくださいよ。
永田 失礼しました。ええと、今回は
まさに『寺田屋大騒動』という感じで。
糸井 大騒動でしたね。
西本 おもしろ騒動でしたよ。
永田 完璧でしたね。
拍手して終わりにしたいくらい。
糸井 それじゃ読者の方が承知しないでしょう。
西本 最近、とみに読者の方からの
メールも増えてきてますからね。
更新後にどっとメールが来るし、
放送のあとにもメールが来るし。
永田 あ、それでちょっと
ぼくは思うところがあるんですよ。
本題の前にひとつ、いいですか。
ふたり どうぞどうぞ。
永田 みんな、このコンテンツを
真面目なコンテンツだと思いすぎ!
糸井 あはははははははは。
それはそうかもしれない。
西本 たしかに(笑)。
そんなコーナーじゃないんですよ。
永田 この前にやっていた
『離婚弁護士』とかを読み直してほしい。
そんなね、照明がどうとかね、
伏線がどうとかね、
論じるような場所じゃないじゃないですか。
糸井 うははははははは。
西本 それ、たしかにそう思います。
届くメールを読むと、ときどき、
「さすがプロだけあって観る目が違う」的な
ことが書かれてあったりするじゃないですか。
糸井 いやいやいや!
永田 アマです、アマ!
西本 そうじゃないから!
永田 『新選組!』のトーンが変わったことを機会に
きちんとお伝えしておきましょう。
みなさん、年末年始のやつとかを
読んでみてください!
糸井 あれがぼくらの原点ですよ。
永田 「オレは『ミリオネア』は観ない!」とか、
「観ないと言ってたの観たじゃねえか」とか、
そんなことしか言ってないんだから。
糸井 そうだった、そうだった(笑)。
西本 「新庄のえんぴつ転がしてすごかった」とか
「オレは箱根駅伝の脇を走る!」とか
「モー娘。はモー娘。としてとらえよう」とか
そんなことしか言ってませんからね。
糸井 元々はそういうコンテンツだったはずですよね。
永田 発端はいわば、負けコンテンツですよ。
西本 言うならば、バカコンテンツです。
糸井 バカとはなんだ、バカとは!
西本 春の番組改編スペシャルは、糸井さんが
「スノボとカニがテレビをダメにしている」
と叫んでましたよ。
糸井 ‥‥バカなコンテンツだなあ。
永田 ところがそれが、『新選組!』の
テンションに引きずられて
なんだか、真面目ふうなコンテンツに‥‥。
西本 ゲラゲラ笑って
「ああ、おもしろかった」っていうのが
原点だったはずですよ。
糸井 それは「三谷」がいけないんですよ。
悪いのは「三谷」だと思いますよ!
ゲラゲラ笑って終わりにしたいんだけど
できないようにできないようにつくるから。
西本 ここはあえて「三谷」と
呼び捨てでいいたいところですね。
糸井 ホントですよ。やい「三谷」!
ふたり やい「三谷」!
糸井 今回はすばらしかったぞ、「三谷」!
ふたり すばらしかったぞ、「三谷」!
糸井 どこからしゃべっていいのか
わからないぞ、「三谷」!
永田 いいかげん、ちゃんとしゃべりましょうよ。
どっからでもいいからどうぞ!
糸井 ええと、じゃあ、まず
あの、劇画チックなカメラワーク。
西本 ああ、たくさんありましたねー。
糸井 まず、誰しもわかるのが、
源さんがおみつを発見したときね!
西本 ドン・ドン・ドーン! ってやつですね。
糸井 おっかしいよなあ。
永田 あと、地味なところでは
慌てた平助がカメラに向かって
ふらふら寄っていくところ!
まるでカンフー映画で
悪役がジャッキーにやられて
ふらふらカメラに近づいていくがごとし!
糸井 ああ、ほんとは
それを言いたかったのに‥‥。
西本 なんで言わないんですか。
糸井 順番ってものがあるだろうよ。
永田 今回は先に言ったもんがちですよ。
どこを切ってもイケますからね。
西本 オダギリ! オダギリジョー!
糸井 ああ、ちくしょう!
永田 あそこはぼく、
糸井さんに言いたいことがありますよ。
糸井 なんだよ。
永田 先にくすくす笑いすぎ!
西本 いえてるいえてる(笑)。
永田 オダギリが出た瞬間笑ってるんだもん。
糸井 ごめんごめん(笑)。
でもね、あれはね、
一回観ちゃってたらダメよ。
永田 まあ、そうでしょうねえ。
西本 わざわざ部屋の隅っこにいましたからね。
そんで、なんかをいじりながら、こう(笑)。
糸井 マンガでもあそこまでは描かないね。
西本 ないないない。
『いなかっぺ大将』だったら
指を変形チョキの形で
チクチクしている感じですよ。
永田 そんで、涙が
アメリカンクラッカー型になってますよ。
いわゆるひとつの「ドボヂデ」状態。
糸井 ずるいよなあ。あれ2回観たら、もう、
オダギリ出てきた瞬間に笑っちゃうって。
西本 そりゃそうでしょうね。現場はきっと
たのしかったんだろうなあ、今回。
永田 けど、これ、ほめことばですけど、
今回‥‥評判悪いでしょうねえ(笑)。
糸井 評判悪いだろうねえ(笑)!
西本 大河ファンには絶対評判悪いですよ。
あと、さっきまで「三谷」と
呼び捨てにしてましたけど、
あえて、「さん」をつけて
お礼を言いたいこともありますよ。
ふたり なんですかなんですか。
西本 三谷さん、
「第5回『婚礼の日に』を観ておけ!」と
教えてくれて本当にありがとうございました!
糸井 ああ、それはほんとうにそうですね。
わざわざメールで
知らせてくださいましたからね。
たしかにあれを観ておいてよかった。
永田 オダギリがお金を返すあたりとか、
近藤夫婦にすごく恩義を感じてるからこそ
「オレのせいだ‥‥」になるあたりとか。
西本 観てない人、ごめんなさい。
「途中から観る」といいつつ
ちょっと戻って観ちゃってる我々ですが、
まあ、もともとが、ゆるゆるの
バカコンテンツだということで
どうぞご理解いただきたい。
永田 ゆるゆるですいません。
糸井 バカコンテンツですいません。
西本 今後も適当なスタンスでお送りします。
糸井 ま、そんなことよりどんどん行きましょう。
永田 そうですね、おもろいところだらけですから。
西本 今回はテープ起こしがたいへんになりそうだ。
でも、今回はみんなおもしろかったですね。
メガネノオカッパが
ちょっと薄くみえたくらいですから。
永田 でも、メガネノオカッパにも
笑っちゃいましたよ。
いちばんよかったのは
「カゴを出しましょう」っていうセリフ。
「おまえだけ素かよ」という。
糸井 おもしろくないことが
逆に引き立つという効果ね(笑)。
永田 そうそうそうそう。
ほかの人、土方とかは、
「いつもと違う土方」ということで
おかしいんだけど、
メガネノオカッパだけはいつもと同じだから
逆におかしいんですよね。
新選組がメガネノオカッパを中心に
ぐるっと回った感じなんですよ。
西本 細かいことでいうと、
序盤の沖田の狼狽ぶりもおかしかったですよ。
「だからおまえは子どもなんだよ!」っていう
セリフの二度づかいも鮮やか。
永田 沖田はボケに回るよりも
振り回される役が似合ってるよね。
まるで『マカロニほうれん荘』の
沖田総司のようでした。
糸井 狼狽ぶりでいうと、
ぼくは中村勘太郎さんに感心しましたね。
いい芝居するねー。なんていうか、
土台がある感じがして、ほんとうによかった。
西本 軽いところだと、
「お多福」でのぐっさんの独白。
糸井 あれおっかしいよなあ。
ふつうに説明してるだけなんだけど。
永田 「いつしかオレたちは、
 男と女の関係になっていた‥‥」
一同 (笑)
西本 コメディーだったら
ぐっさんのテリトリーのはずなのに、
あえてあの人をマジでつかってるのが
いいですよね。
糸井 マジだからおかしいっていうと源さんですよ。
ふたり 源さん!
糸井 「この歳ではじめて恋をしました」って
あれがウソに聞こえないじゃないですか。
だからこそおかしいし、すごいんだよね。
永田 今回の影の主役は源さんかもしれない。
糸井 今回は、いわば、源さんが
全体の「ちょうつがい」のようなかたちで
機能してるんですよ。
ほっとくとバラバラになりそうなところを
源さんが、がっちゃんがっちゃん
つなげてるんです。
ふたり あーーー、なるほど。
糸井 打点はほかの役者が上げるんだけど、
塁に出てるのは源さんなんです。
永田 あの、わやくちゃ騒動も、
源さんがまんじゅうで
機転を利かせるあたりから
はじまりますもんね。
その「ちょっとした機転」が
どんどん大がかりになっていって、
最後のクライマックスまで行くっていう
グラデーション。
あの持っていきかたがすごい。
西本 じつは冒頭のシーンから始まってますからね。
土方が近藤に対して
「局長、よろしくお願いします」と
妙に重々しくいくところ。
あそこから「ハイ! はじまりますよ!」と。
空気を一旦ためておいてから
息を止めたままテンポアップしていく感じが
たまりませんね。
糸井 あれもう、シチュエーションコメディだもんね。
永田 メガネノオカッパを軽くいじっておいて、
状況を説明しておいて。
最後の寺田屋のシーンにむけて
くすぐりながら全体を盛り上げていく。
西本 場面場面を源さんでつなぎながら。
糸井 うん。だから源さんを
ふだん大事にしてるから成り立つんですよ。
今回の源さんは、ほんと、
野球でいうと川相の仕事ですよね。
西本 「恋をしてしまいました」は
川相がホームランを打ったという感じですね。
永田 そのホームランで決まるかと思ったら、
代打、土方の「ちょっと待った!」
西本 あそこで「現代の笑い」が入るんだけど、
場がしっかりできてるから
行けちゃうんですよねえ。
糸井 あそこの土方の表情ったらなかったね。
深雪太夫を抱きしめながら、ニヤリ。
そこへわざわざカメラが寄っていく。
永田 マンガですよ。
西本 コントですよ。
糸井 劇画ですよ。
赤塚不二夫が突然タッチを変えて
くっきり描いているようなもんで。
もう、志村けんが出てくるかと思ったね。
西本 ああ! 志村けんですね、たしかに。
糸井 あのあたりやらせたら深雪太夫はうまいね。
今日の役どころだけでいうと、
「この役ほかに誰ができるよ?」
っていう感じじゃない?
西本 いえてます。
優香さんをいままで観てきて、
時代劇を演じるにあたっては
やっぱりほかの実力者とくらべて
「土台がないんだろうな」と
思う部分も多少ありつつ観ていたんですけど、
今日はきっちり実力が出てました。
それは志村けんさんのところで
コントの土台ができていたからなんでしょうね。
糸井 志村けんさんの番組で、
すれっからしのホステスの役とかするでしょ。
あれがむちゃくちゃうまいんだけど、
あのへんからしっかり学んでいるよね。
永田 優香さんで今回いいなあと思ったのは、
あの太夫役のメイクが正直、
ぼくは似合ってるとは思ってなかったんですよ。
それなのに「美人役」扱いなのが
ちょっと違和感があったんだけど、
今回は「すっぴん」で出てきたでしょう。
それで、「あ、やっぱこの人、美人なんだ」
っていう感じで、見直したというか。
糸井 いや、あの優香の扱いひとつとってみても、
あの場面でどれだけ乱暴なことをしてるか
わかりますよね。
それを成立させちゃう、作家と役者の
力量が、恐るべし、ですよね。
西本 いえてますいえてます。
永田 そしてとどめが香取さんですよ。
今回、ぼくはベストシーンを
挙げるとしたらあの場面です。
「みんなそれなりにありがとーーー!」
ふたり わはははははははは!
永田 あれを言えるのは、
日本で香取さんしかいないですよ。
あの、マジとギャグの混ざった、
ぎりっぎりのテンション。
あれ、SMAPのほかのメンバーでも
ダメだと思うんです。
ふだん、「アイドルがコントをやる」っていう
どっちのお客さんも高いレベルで満足させる
仕事をやってるからこそできるんだと思う。
糸井 根底として「モテている人」じゃないと
あそこはやれないですからね。
だから、あれはすごくむつかしい。
どういうテンションでも言えないですからね。
あれを言わせようとした作家もすごいよね。
もう、役者と作家の共犯ですよね。
武者小路実篤でいえば
「仲善きことは美しきかな&茄子と胡瓜」みたいなさ
誰にも何もいわせないひと言じゃないですか。
気持ちよかったねーーー。
永田 カタルシスすらありましたよね。
西本 組み上げてきたことを
ドカンと崩す気持ちよさ。
それでいて、着地地点は
シリアスにきっちり戻るという。
永田 すごいなあと思うのは、
あれだけメチャクチャなことをやって、
格を下げてる役者さんが
ひとりもいないんですよね。
「そんなことやらせて!」って怒っている
ファンの人っていないんじゃないかなあ。
西本 いや、ドラマを観て、
なにも考えずにけらけら笑ったのって
かなり久しぶりだと思いますよ。
永田 言えてる。『池中玄太』以来だな。
西本 あんた、インターバル長すぎ。
糸井 今回は舞台を観ているような感じがあったね。
源さんがまんじゅう食っているシーンなんか
舞台でみたらたまんなかっただろうね。
西本 ああ、たしかに舞台で全部できますね。
ちょっとシーンを削って、
寺田屋という旅館の中でおこった
一日の出来事にしたら
寺田屋のセットさえあれば
いいわけですよね。
糸井 舞台でやれていることを
カメラワークで遊んで
現場で楽しくするということだよね。
あと、ぼくは2回観たから
ちょっと冷静に観られるんだけど、
構成もすごいんだよね。
思えば、冒頭に山南を出してますからね。
西本 頭でちょっとホロリとさせておいて。
糸井 なんていうか、あれがあって、
助かったという感じがするなあ。
永田 山南さんの死と今回の騒動は
セットで扱われてるような気がするんですよ。
これ、今回の大きな感想で、
糸井さんの『MOTHER』とかにも
同じことを感じるんですが、
「笑わすこと」と「泣かすこと」って
エンジンがいっしょだと思うんですよ。
出口をどっちにするかというだけで。
だから「友の死」で泣けた人というのは
同じ力をもって今回は
ゲラゲラ笑えるんじゃないかと思ったんです。
三谷さんのタクトによって
ガッと下げられたら、こっちもガッと下がって、
今回はグッと上げられたという感じで。
糸井 フリ幅みたいなものですね。
ずっときつかったからなあ‥‥。
今回は、つぎの楽章に入ったというよりは
「山南の楽章の終わり」ですよね。
永田 あああ、そうですね、そう思います。
西本 そして今回は、笑いだけじゃなくて
シリアスな話もきちんと描かれてました。
糸井 まずはなんといっても山南と龍馬の関係ですね。
山南から龍馬に「託す」の二文字。
西本 あそこ重要ですね。
糸井 あそこを「託す」の二文字に
決めたときの作家の喜び!
実際に自信あったかどうかわからないけどね。
史実にはきっと、あんな手紙はないでしょ?
「託す」の二文字で
龍馬がよみがえったわけじゃないですか。
永田 そうですね。山南の志が残っているというか、
龍馬を動かしたことで、大きくいえば
現代にまでつながっているような気がして
ジーンとしました。そういえば、前々回、
ぼくらは読み違えてたんですね。
龍馬を訪ねていったシーンは
山南が龍馬になにかの答えを求めに
行ったわけじゃなくて、
龍馬に「託す」気持ちだったんですね。
ま、はっきりはわからないけど。
西本 ふたりの目指すベクトルは基本的には
一緒であったということにもとれるし、
新選組の行く末を「託した」という
読み取りもできますね。
糸井 「人を中心にまわっていきます」
というセリフがもう一回くり返されてね。
ようするにこの『新選組!』というドラマは
コンセプト的には龍馬の物語なんですよね。
永田 幕末の史実を描く以上、
どうしてもそうなっちゃいますね。
糸井 そのへんをどう見せていくかが
今後、興味深いところですね。
あと、今回のもうひとつのキモは、
妻と妾の対峙ですよ。あの場面、
もし、新婚の西本さんが
嫁とふたりで観ていた場合は
笑えないですよ。
西本 ああ、そうかもしれません。
なんかテレビに突然、
裸のシーンが映ったような感じがして
ぎこちなく感じると思います。
糸井 一般的には意外にそうでもないのかな?
女性のほうが不倫の恋愛映画とか
平気で観ますからね。
男のほうが変にドキドキしちゃいがちだけど。
でも、気を遣いながら丁寧に描いてましたよね。
まあ、妾だとか側室だとかっていうのは、
いわば当時の人にしかわからないという
部分じゃないですか。けど、それを、
現代の作家が書くときに、
「当時はこうだったからこうです」って
パーンと書いちゃうと、観ている人が
おいてけぼりになっちゃいますよね。
だから、ものすごく頭を使うと思うんですよ。
関係をきちんと理詰めで
つくっていると思うんです。
それはさぞかし
たいへんだったろうなと思いますね。
永田 理詰めというと?
糸井 たとえば寺田屋の女将が
「そういうことは慣れてます」
ということで、当時の世界観での
肯定というのを描いている。
でも、やり取りそのものは
現代のそれですよね。
近藤が「手紙で言おうと思ってた」
なんていうのも言いわけですしね。
女ふたりが対決する場面では、
まず深雪太夫が「私、ひきます」と言って
つねが「京都にいるあいだだけ」と返す。
ああいう嫉妬の仕方は現代でしょ。
三谷さんはそれに決めたんですよね。
永田 「当時の本妻っていうのは
 こういうもんだったんだよ」
っていうんじゃなく。
糸井 そうそうそう。
西本 まえに、近藤がつねに出した手紙に
深雪太夫の残り香がついてる
っていう描写もありましたよね。
そのへんも理詰めかもしれない。
永田 あれは伏線として地味に効いてましたよね。
みんなドタバタするんだけど、
あれでごまかされるわけないよな、っていう。
だからこそ安心してドタバタが観てられる。
その意味では、つねが「賢い」っていうことが
観る側を安心させるんですよね。
あと田畑さんの演技。やっぱり最後は
あれに引き込まれてしまって、
騒動がまさに収まった印象を持つというか。
糸井 あの人はほんとうに
京都の老舗の料理屋の娘さんですからね。
そのあたりの重さを
体感しているというのも
あったんじゃないですかね。
よかったですよねー、あれは。
しっかし、なんですね、
側室を持ったり粛清をしたりする
近藤勇という人を
主人公にもってくるのはたいへんですよね。
西本 それは思いましたね。
近藤と深雪太夫の関係ひとつとっても
すっごく観せづらいというか。
糸井 ドラマの中ではあのふたりが、
考えようによっては
あしながおじさんと病弱の少女と
とれるみたいになってますよね。
西本 ええ。ようするに
セックスをしていない感じがしますね。
糸井 でも、そんなわけないじゃない?
着物をしっかり着込んで、
座って酒を飲みながら
「心が安らぐのだ」って言って、
ゴホゴホ咳をして、
それで終わりなはずないじゃない。
永田 とはいえ、描くわけにもいかないですよね。
糸井 それでうまいなあと思うのは、
近藤をすぐにお風呂に
連れていったじゃないですか。
個人的な印象ですけど、
あそこですぐに裸にしてしまうことで
「そうは言っても」みたいな
感じを表現していると思いましたね。
近藤勇の裸の肉体を見せることで、
その、見せるわけにはいかない部分を
残像として表現してるんじゃないかと。
永田 はっはー。
西本 それ、すごいですね。
糸井 ぼくが勝手に想像していることですけどね。
まえにこういうたとえ話を
したことがあるんだけど、
歌詞をつくるときに、
「赤い花」のことを歌って、
そのすぐにあとに
「雪」が降ったというふうにすると、
まえの「赤」が残像となって
「雪」に残るんですよ。
そういう効果があの
風呂のシーンにはあると思うんです。
NHK大河ドラマ的には
すっきりきれいに、
ふたりの関係を観せているけど
「もうちょっと切ない気持ちで観てね」
という約束をしているように感じました。
西本 はぁーーー、そういう観かたもあるかぁ。
永田 もー、そういうこと言うから
この適当なコーナーが
妙に真面目に受け取られちゃうんですよ。
糸井 ああっ!
永田 今回くらいはゲラゲラ笑って
「ああよかった」で済ませればいいのに。
西本 なんか、バカなこと言ってくださいよ。
永田 おちゃらけて終わりましょう。
糸井 お、そういう意味でいうと、
バカなことはすでに考えてある。
ふたり なんですかなんですか。
糸井 意味はないが、我々は、今度、
京都に行く!!
ふたり えええええっ!
糸井 京都で『新選組!』を観る!
我々男子部3人と、
斑鳩出身で新選組に詳しい
べっかむ3も連れて
4人で京都に行こう!
ゆかりの地なども見学しよう!
ただそれだけの企画!
永田 バ、バカバカしい‥‥。
西本 となると、段取りはぼくの役目ですね。
さっそく宿と新幹線をおさえます。
糸井 いや! クルマで行く!
ふたり えええええっ!
糸井 京都まで約500キロくらいだろう。
4人で交代して運転すりゃ
どうにかなるだろ。
永田 な、なぜそんな苦労を‥‥。
西本 しなきゃならないんですか?
糸井 なんとなく!
ふたり ‥‥‥‥。


ほぼ日テレビガイド
〜女子の部〜



モギコ
観ましたーーーー。

ゆーないと
騒動! 寺田屋大騒動!

モギコ
いっやーー、たのしかったなあ。

ゆーないと
ジョー・オダギリ! ジョー・オダギリ!

ナカバヤシ
すいません、おふたり、
ちょっと打ち合わせしましょう。


ふたり

またかよ!

ナカバヤシ
真面目な話ですよ。

ふたり
なんですかなんですか。

ナカバヤシ
今日の男子部を読んでもらえればわかりますが、
連中、ぜんぶさらってます。

ゆーないと
ですねーーーー。

モギコ
昔はあんな人たちじゃなかったのになあ。

ナカバヤシ
そこで考えたんですけど、
ここはもう、「連中が観ないところ」を
探していくしかないですよ。

ゆーないと
ほうほう。

モギコ
けど、そんなのある?
今回だと‥‥沢口靖子さんの
テンションがものすごいとか?

ゆーないと
ちょっとしたアニメキャラみたいッスよね。
あとは、伊東甲子太郎がヤなやつすぎて
逆にちょっと気になりはじめたとか。

ナカバヤシ
そうですそうです、そういうところです。

モギコ
ナカバヤシさんはどこを見つけたんですか。

ナカバヤシ
はい‥‥お登勢が‥‥。

ふたり
‥‥お登勢が?

ナカバヤシ
シンゴちゃんに向かって
「風呂にでも行きなさい」と言うとき‥‥。

ふたり
‥‥言うとき?

ナカバヤシ
手ぬぐいを渡すんですが、
その手ぬぐいが‥‥。

ふたり
その手ぬぐいが‥‥?

ナカバヤシ
袖口に引っかかって、
ぼよよよ〜んとなります!

ふたり
‥‥‥‥。

ナカバヤシ
こういったところを
今後は重点的に観ていくことが
女子部の意義としては
肝要になってくるかと思われ‥‥。

ふたり
そんな観かたはイヤ!


ほぼ日テレビガイド
〜美術部〜

2004-09-03-FRI

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