三谷龍二さんのあたらしい場所。[10cm日記]
 


10月19日
椅子とテーブルを持ち込んで
現場というのは、本当にすべてが途中という感じで、
常に動いていて、何かが始まる予感に満ちています。
でも出来上がった時、その部屋がどんな空気に包まれ、
椅子に座って書き物をする時どんな感じになるのだろう、
と想像しようとすると、
それがなかなかしにくいところがあります。
 
書斎のような小部屋として作ったこの部屋は、
当初部屋の中に構造の柱が
もう一本入る予定になっていました。
そのため、その柱に絡むかたちで
作り付けの家具を考えていたのですが、
でもこの柱はないといいな、と
僕はずっと思っていました。
それで工務店の人にも何度か、
「どうしても必要?」と聞いていたのですが、
でもちょっと距離があるし、
梁もあまり丈夫そうでないから、
と首を縦に振りません。
それで仕方がないと諦めていました。
 
それからもうひとつ、
この部屋の窓についても悩みがありました
(もちろん人生の悩み、という程ではなくて)。
作り付けのテーブルは
仕様を途中で一度変更したのですが、
うっかりしてその時
採光のための窓の位置を動かさなかったのです。
そのため手元が暗くなってしまいました。
それでも窓を連ねて開けることで
解決できる段階でしたが、
でも窓の大きさにこだわってしまった。
これ以上大きくしたくはなかったのです。
 
それが今日大工さんと話しをしていると、
「この柱はなくてもいいと思う」
と言うではないですか。
僕はびっくりして、
「ほんとですか」、と食いつきました。
それが本当なら、懸案の柱問題も、採光問題も、
一挙に解決しそうな提案だったからです。
善は急げ、です。
僕は早速工務店の担当者の同意を取り付け、
この部屋の柱のないプランを再考することになりました。
僕たちにはイメージはあっても、
実際かたちにするためには
専門家の意見と擦り合わせて
答えを出さなくてはなりません。
今回はその擦り合わせがうまくいったようでした。
 
プランを考えようとその部屋に一人残ったのですが、
でもここまで出来ているのだから、
図面で考えるより、
実際暮らす風にして考えた方が
少なくても僕には正確に判断できる、
と僕は家に戻って椅子と簡易テーブルを用意し、
それを現場に持ち込みました。
椅子に座って、窓からの光、
部屋の広がり具合を感じることができれば、
答えは自ずから出てくる、というものです。
作り付けの収納家具の寸法を実際にボードの上に描き、
その巾や、奥行きを決めてから、
またもう一度椅子に座り、手からの距離や、
他の家具との位置関係などを確かめました。
角度を変えて確かめる、
それはちょっと嬉しい時間でした。
プランは少し変更になり、
はじめ作り付けを考えていたテーブルは、
自由度のある置き家具にすることにしました。
▼下はそこにあった段ボールに描いたスケッチ。
大工さんは口ではなく、
寸法が入っているものを渡すととすぐに判ってくれる。
「これだけで大丈夫です」、と受け取ってくれた。

2010-11-04-THU
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