糸井と永田の思い立ったら、雑談。満を持して禁煙を語る編
第5回 これが、おっぱい理論だ!
ぼちぼち、ぼくの禁煙ライフにおける
最大の発明について話しましょうか。
 
 
‥‥あれですか。
あれです。
あれなくして、ぼくの禁煙は語れません。
 
 
はぁ。
というよりも、あれがあったから、
禁煙が続いたといっても
過言じゃないと思いますよ。
 
 
はぁ、まぁ、わからないでもないですが。
思いっきり反応が悪いですね。
 
 
いえ、読み手のハードルを下げておかないと
ほんとうのよさが伝わるまえに
あきれられるかもしれないので。
いいですか。発表しますよ。
 
 
はぁ、じゃあ、まぁ、
とりあえず、どうぞ。
そのメソッドは
「おっぱい理論」といいます!
 
 
メソッドて。
ここ、太字にしておいてね。
 
 
太字は使わないコンテンツなんです。
いや、ぼくはね、
この「おっぱい理論」があったから、
禁煙が続いたといっても
過言じゃないですよ。
 
 
それはさっき言いましたよ。
じゃ、永田くん、説明したまえ。
 
 
いやですよ。
自分でやってくださいよ。
なんだその消極性は。
あ、さては信用してないな、
「おっぱい理論」を。
 
 
いや、信用はしてます。
実際、糸井さんがその理論で
禁煙のピンチを何度も
乗り切ってきたのも見てきました。
だろう?
 
 
どうぞ発表してください。
そのバカバカしい理論を!
バカバカしいは心外だが、説明しましょう。
みなさん!
まず、タバコを、
「おっぱい」だと考えてください!
 
 
みなさん、
最後まで聞いてやってください。
つまり、「タバコ=おっぱい」です。
 
 
みなさん、
最後まで聞いてやってください。
禁煙中、吸いたくて吸いたくてたまらないとき、
ふと、こんなささやき声が聞こえてきますよね。
「1本ぐらい、吸ってもいいんじゃない?」
 
 
実際、ありますよね。
ていうか、禁煙って、
基本、それとの戦い。
で、禁煙当初はね、
そんな声にも対抗できるんです。
「いや、がまん、がまん!」と。
ところが、1週間が過ぎ、2週間が過ぎ、
禁煙そのものが珍しくなくなったころ、
ささやき声はこう変化するんです。
「ちょっと吸うくらい大丈夫だよ。
 いままでだってがまんできたんだから」
 
 
うわー、超リアル。
そんなとき、いいですか。思い出してください。
タバコは、おっぱいなのです!
 
 
すいません、本人、
すごくマジメに話してるんです。
もしもあなたが、女性のおっぱいを
ちゅうちゅう吸いたくなったとき、
「ほんのちょっとだけ吸う」が許されますか?
ダメでしょう? 往来でやったら犯罪でしょう?
そのときの罪は、ちょっと吸っても、
ずっと吸っても同罪じゃないですか。
「すいません、ちょっとだけなんで、
 おっぱい吸わせてください」って言えますか?
だめでしょう? セクハラでしょう?
ちょっと吸っても、それは犯罪です。
ちょっとならいいかという理屈は成り立ちません!
 
 
すいません、本人、実際、
これで乗り切ってきたんです。
わかりやすくまとめると、
「おっぱいを、ちょっと吸う」ことはありえない!
タバコもしかり!
もっといろいろ語れるが、
このくらいにしておいてやろう。
 
 
ありがとうございました!
救ったね、これで、オレは、何人も。
 
 
だといいんですけどね。
でもね、まじめな話、役立つんだ、この理論は。
 
 
根本にあるのは、
「ひとりでいるときに、1本だけ吸ってみる」
っていう誘惑の強烈さですよね。
そう。つらいんだ。
 
 
こう、ひとりで考えてると、
意味がわからなくなってくるんですよね。
「誰も見てない深夜の1本のタバコを
 なんでオレはこんなに必死に
 がまんしてるんだ?」って。
そうそうそうそう。
そんなときに「おっぱい理論」だよ。
 
 
いや、それはわかります。
禁煙がある程度安定して、
「逆に、吸っても平気じゃん?」
みたいになって、
考えがぐらぐらしているときに、
そういうバカみたいにわかりやすい軸が
ポーンとあると助かるっていう‥‥。
「バカみたい」とはなんだ。
 
 
あと、タバコを吸ってる先輩とかが
冗談半分ですすめてきたりとか。
そうそうそう。
タバコに関しては、
話のわかる人が妙に多いからね。
「これは、吸ったことに含まないってことで、
 ま、1本どうぞ」みたいな。
 
 
そうそうそう。
ここで吸わない自分は
ちょっと野暮だぞ、みたいな感じで。
それこそ、さっき永田くんが言ってた
大きな仕事のあととかね。
スッとタバコを出されたりすると‥‥。
 
 
そんなときに、
「おっぱい理論」があれば!
そうです。それは、おっぱいなのです。
ちょっと吸っても犯罪なのです。
 
 
これ、女性の読者に怒られませんか。
女性は女性なりに、
なにかに置き換えてください。
男性の方もね、もう、どこまでも
警告の意味合いを強くするという意味では、
おっぱいじゃなくて、下のほうにして、
おっぱい以上の強烈な理論にしたって
かまわないんですが‥‥。
 
 
おっぱいぐらいにしといてください。
おっぱいぐらいにしといたほうがいいよね?
 
 
ツイートできる範囲でお願いします。
そのあたりで止めてるところが
ぼくの丁寧かつ、したたかなところだよ。
つまり、なんていうか、
おっぱい理論のソフィスティケート?
 
 
わかりました、わかりました。
つまり、なんていうか、
おっぱい理論のソフィスティケート?
 
 
なんで2回言うんですか。
ともかく、このおっぱい理論はね、
身につけると、日常生活において
とっても役に立つ。
 
 
ああ、ふらふらしちゃう自分を
しっかり律する、ということですから
たしかに汎用性は高いです。
逆にいうとね、
自分が決めた、当たり前のことを守るのが
どんなに難しいかっていうことですよ。
 
 
ほんと、そうですね。
あの、さっき話した、弊社の
禁煙中の「誰かさん」のことなんですけどね。
で、誰よ、それ。
 
 
山下さんなんですけどね。
ああ、山下さんか。
 
 
山下さんと禁煙の話をしたときに、
おっぱい理論と通じるなぁと思ったことがあって。
まず、禁煙する山下さんに向かって、
ぼくは糸井さんと同じように、
あれこれ騒がず静かに応援してますよ、
っていうふうに言ったんです。
失敗してもふつうにしてますし、
続いていてもすごく褒めたりしません、と。
うん。
 
 
で、ひとつだけ、アドバイスというか、
決まりにしようということで話したのは、
「ウソはやめましょう」っていうことだったんです。
思えばそれもおっぱい理論と同じなんですけど、
ウソがありだとすると、
夜中にこっそり吸う1本が
許されてしまう可能性がある。
だから、「ウソをつかない」っていうのは、
禁煙のけっこう重要なポイントかなと思って。
そのとおりだね。
だから、酒を飲むとウソつきやすくなる。
 
 
あーー、そうだ。
酒の席で禁煙が終わったっていう人は
かなり多いと思うよ。
その点、ぼくらは大丈夫だけど。
 
 
注文するのはもっぱら
ウーロン茶かジンジャーエールです。
それもやっぱり、
自分があてにならないってことだよね。
 
 
そうですねぇ。
だからね、これは大げさな話じゃなく、
おっぱい理論が1回身につくと、
ほかのことにもすごく役立つんだよ。
なんていうか、自分という人間の精度が上がる。
すごくコントロールのいいピッチャーになれる。
 
 
なるほど、なるほど。
で、コントロールがよくなると、
ちゃんと自分が制限できるから、
逆に、自分がほんとうに好きなこと、
たのしく感じることが、ほしくなる。
旅でも、食べ物でも、スポーツでも。
 
 
「食べ物が美味しくなる」っていうのも
じつは、そういうことかもしれませんね。
ああ、そうかもしれない。
少なくとも、食べ物の美味しさだけが
増幅されるわけじゃないからね。
 
 
そうですね。たしかに、
「やめるとごはんが美味い!」っていうのは、
期待したほどじゃなかったです。
ただ、やっぱり、食べる量は増えますね。
ちなみに、太った?
 
 
やめてすぐは少し太りました。
個人的な感覚としては、
「タバコで食後の区切りができないから、
 だらだら、ずっと食べちゃう」ということと、
なんていうか、
「禁煙すると、口のあたりが
 満足できてない状態がずっと続くから、
 食事中の食べ物が口に入ってる状態がうれしい」
みたいな感じで、食べる量が増えちゃうんですよ。
ガムがかみたくなるのも似たようなことで。
あー、そうだね。
ぼくもすっかり「ガムをかむ人」に
なっちゃったからなぁ。
 
 
ガムとタバコって、
ふつうはどっちかでいいですから、
タバコをやめると「ガムの人」に
なっちゃうパターンが多い。
うん。だから、一時期、
ぼくの好きな「クロレッツの青」が
市場からなくなりそうだったときは、
ほんとうに困ったもの。
 
 
「クロレッツの青」依存症(笑)。
ああ、「クロレッツの青」が
値上げしたらどうしよう!
 
 
ははははは。
あと、ぼくが禁煙直後にお世話になったのは
野菜ジュースですよ。
野菜ジュース?
 
 
野菜ジュースをよく飲んでました。
なぜかというと、
野菜ジュースとタバコって合わないんですよ。
あー、なるほど。
つまり、コーヒーの逆だ。
 
 
そうそう。
コーヒーはタバコとセットだから、
つい、煙が恋しくなっちゃうんですよ。
その点、野菜ジュースとか果物って
けっこうタバコと合わないからいいです。
ぼくは、自分の
「お気に入りのガムを見つけること」を
おすすめします。
そして、なにより「おっぱい理論」を!
 
 
ええと、言い換えますと、
「ひとりのときの、1本だけ」を
いかにこらえるかが重要だと。
それは、おっぱいです。
 
 
わかりました、わかりました。
(つづきます)
2010-10-18-MON
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