糸井と永田の思い立ったら、雑談。満を持して禁煙を語る編
第6回 出さなかった禁煙日記。
 
さて、じゃあ、まとめとして、
いま、タバコをやめようとしている人に
伝えるとしたら、どんなことを?
まずは、ニコチンという黒幕ですね。
禁煙は難しいんじゃなくて、
あなたに難しいって思わせてるのが
ニコチンなんだってことです。
 
 
うん。
あとは、禁煙を、
漠然と「難しい」で済ませるんじゃなくて、
具体的なこととしてつかんでいくべきですよね。
たとえば、肺が真っ黒になるとか、
癌になるっていうことが、ひょっとしたら、
健康に毎日を過ごしている人には
ピンとこないかもしれない。
でも、要するにそれは、
空気と肺の細胞の接地面積が
小さくなってるってことでしょう。
それは、おそらく、息苦しい。
そういうことがイメージできたほうが、
禁煙にかぎらず、毎日のいろんなことが
うまくいくでしょうね。
 
 
なるほど。
禁煙ができると、コントロールがよくなります。
いわば、人生の制球力がよくなります。
生きるコントロールがよくなる。
コントロールがよくなると、
歳をとって球速が落ちてきても
ちゃんと試合をつくれるようになります。
ただ、コントロールだけに気をつけてると、
だんだんいい子になっちゃう自分が、
たまに、ちょっとさみしくなるんだよ。
 
 
うん、うん(笑)。
そこにできる隙間みたいなものを
なに埋めるかなっていうのが、
またちょっとおもしろいところでね。
たとえば、歌だったり、森だったり。
 
 
食べ物だったり。
旅だったり。
 
 
犬だったり。
そう(笑)。
「オレには、そういうものは要らないよ」
って言う人だっていると思うよ。
「タバコ吸ってれば、ぜんぶ済むから」ってね。
それはもう、しょうがないっていうか、
それでいいなら、いいと思う。
 
 
でも、タバコをやめたぶんだけ、
なにか新しいものが自分の世界に
入ってくると思うと、いいですよね。
タバコ代の440円が浮く、
っていうだけじゃなくて。
そうだね。
 
 
あらためて訊きますけど、
糸井さんは、禁煙できたんですよね。
‥‥‥‥さぁて。
 
 
(笑)
よくさ、しばらく禁煙して、
「もういつでもやめられますから」って
言いながら、やめた人として
ときどき吸う人がいるでしょ?
 
 
ああ、はい(笑)。
あれは、やめられてないと思うんだ。
 
 
そうですね。
だからダメだとは言わないんだけど、
少なくとも、ちょっとウソがあるよね。
だから、なんだろうなぁ、
自分が基本的に
だらしない人間であるっていう注釈は
100パーセントつけておきたいんだけど、
それでも、信用できる人だと
言われる人でありたいと思うんです。
 
 
うん。
そういうことを、
すごく正直にことばにするとしたら、
いま、ぼくは、
吸わずにいられるっていう状況にいる、
っていうぐらいなのかなぁ。
 
 
はい。
ちなみに、いままで言ったことを
台無しにするようで愉快なんだけど、
この7年のあいだに、
1本だけ吸ったことがあるんだよ、オレ。
 
 
知ってます(笑)。
わざわざ報告してくれましたもんね。
なんか、どこかから
ひょいっと昔のタバコが出てきて。
そう(笑)。
で、どうなんだろうと思って。
ずっと興味があったんだよ。
その、吸いたいというわけじゃなくて、
「吸うとどうなるんだ?」って。
 
 
そのへんが糸井さんらしいなぁ(笑)。
でも、ぜんぜんダメだったんですよね。
そう、気持ち悪くなった(笑)。
ひと口ふた口吸って、すぐ消した。
あの1回は、ある意味で、
その後の励みにさえ、なってますね。
吸ってもあれだよ、って思えるから。
 
 
でも、糸井さんから
「ちょっと吸ってみたんだよ」
って聞いたときは
ひっくり返るかと思いましたよ(笑)。
ははははは。
永田くんは、きっともう吸わないね。
 
 
そうですね。
なんていうか、たぶん、好きだったタバコを、
面倒くさいからやめたんだと思うし、
これからも吸わないだろうと思うのは、
もうあんな面倒くさいことは
経験したくないっていうのが正直な気持ちです。
吸うのも、やめるのも、面倒くさい。
やめたのにまた吸いはじめるっていうのは、
もう、最高に面倒くさい。
そうだよねぇ。
そんなところかなぁ。
 
 
ありがとうございます。
なんか、いろいろ忘れてるなぁ。
きっと、もっといろんなことを言えたんだろうね、
禁煙しようとしてる最中はさ。
まぁ、ともかく、ぼくの奥の手は、
「おっぱい理論」ですから、
それさえ、言えればOKなんですけどね。
 
 
あ、じゃあ、最後に、
ぼくの奥の手を見せますよ。
ん?
 
 
ちょっとすごいですよ、この、奥の手は。
(分厚い紙の束をドサッと机に置く)
これです。
‥‥なに?
 
 
糸井さんの禁煙日記です。
え?
 
 
つまり、7年前の原稿です。
こんな量になってたって知ってます?
‥‥知らない。
当時、しゃべったこと?
 
 
じゃなくて、書いたやつ。
‥‥知らない。
 
 
糸井さん、毎日書いてたんですよ、
禁煙日記を。
知らない。
 
 
ははははは。
(紙の束をめくりながら)
‥‥すごい長いじゃん。
 
 
ぜんぶ、あなたがお書きになったことです。
え、日を分けて書いてるの?
 
 
分けてもなにも、毎日書いてました。
うそ。
 
 
ほんと(笑)。
‥‥‥‥ほんとうに忘れてる。
 
 
1ヵ月半、毎日書いてます。
そのあと、不定期になって、
けっきょく2ヵ月続いてます。
(ぺらぺらめくりながら)
2ヵ月も。
 
 
そうとうな量ですよ。
‥‥びーっくり!
 
 
はははははは。
最初のころは、
吸いたくなったら書くことにしていたみたいで
1日の文章量がすごく長いんですけど、
だんだん短くなっていくんです。
じゃ、ほんとに、禁煙の苦しみに比例して。
 
 
そうそう。
いや、これ、奥の手どころじゃないね。
びっくりだよ‥‥。
 
 
これをつけようと思ったときの
気持ちを覚えてます?
まぁ、本にしようと思ったというか、
かならずなにかになると思ったからだろうね。
 
 
糸井さん、喘息の治療のときに、
日記をつけてたことが役だったって
おっしゃってましたね。
それもおなじです。
なにかをはじめたりやめたりするときは
変化を語るだけでおもしろい。
 
 
実際、これ、おもしろいんですよ。
(ところどころ拾い読みしながら)
‥‥‥‥おもしろいねぇ。
「日記つけてるから吸わずに済んでる」
って言い方してるわ。
いや、記録ってすごいな。
残しとくもんだねぇ。
 
 
でも、ここまで忘れてるとは思いませんでしたよ。
見せたら「あー、あれか!」って
なるのかと思ってた。
いや、まったく覚えてないよ、オレ。
読んでると、たしかに
自分の文章だなってわかるんだけど。
いや、ここまで自分のやったことを
キレイに忘れてることってないかもしれない。
 
 
たぶん、糸井さんの状態が
ちょっとふつうじゃないでしょうから。
そうだねぇ。
「ガムを噛みすぎて、口の中が傷だらけだ」だって。
 
 
生々しいんですよ、とにかく。全編にわたって。
‥‥はーーー。
あ、ここで「犬!」って書いてる。
 
 
そうそう、ブイヨンと出会ったころ。
いや、まいったな。
これは、永田くんに送ってたの?
 
 
そうです。
コンテンツにしようっていうことで、
ふたりで進めていたので、
ぼくにあてて毎日送ってたんです。
じゃ、永田くんだけが読者で。
 
 
結果的には、そうですね。
どこにも出せなかったので。
へぇーーー。覚えてない。覚えてない。
ここまで覚えてないっていうのは、すごいなぁ。
こんなこと、あるんだね。まいった。
 
 
で、ちょっと相談なんですけど、
これをどうしようかと。
それこそさ、当時やろうとしていたことに沿って
電子書籍みたいなものにしたら?
タダか、500円くらいで。
 
 
あ、まさにそう考えてたんです。
タダっていうのもあるかなと。
そうねぇ。
でも、タバコ代くらいもらったほうが
おさまりがいいかもしれないよ。
 
 
ああ、タバコ代っていうのはいいですね。
440円?
なんか、それに近い、きりのいいところで。
「出さなかった禁煙の本」としてね。
この対談のおわりのところで、
オマケみたいにして出したら?
 
 
うわ、大忙しだ。
なんか、あとがきみたいなもの、
書くよ、オレも。
 
 
あ、それはぜひ。
いやー、まいった。
 
 
じゃ、あとがき、お願いしますね。
はいはーい。
この原稿、もらっていい?
 
 
もちろん(笑)。
(おしまい。そして‥‥)
2010-10-19-TUE
 
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN