新・書物の解体学

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    136
  • 音質

    「マリ・クレール」に連載された
    書評集成である
    『新・書物の解体学』が
    同年8月に刊行されたことに際して
    行われた講演。
    テープ交換以降は
    声が曇り聞きとりづらい。

  • 講演日時:1992年11月24日
    主催:前橋市・煥乎堂
    場所:前橋テルサ 8F けやきの間
    収載書誌:未発表




〈健康な文学〉と〈健康でない文学〉ということで
いまの文学を分けてしまったら、
いったいどういうことになるかというと、
本当の健康な文学というのも、
本当に病的な文学というのも、
両方とも描かれていないというのが
現状ではないかと思います。
やかましい書評をしてみれば、
そういうことになってしまうのではないかと思います。
「本を読むこと」は、必ずしも
すぐれた作品にぶつかることであるとも限らないのです。
しかし、そのなかから何か搾り取ることが、
本の読み方で、さしあたっていちばんいい
読み方なのだとすれば、
見かけ上の健康さと不健康さの後ろに真実らしさとか、
真実の甘美さというものを見つけることが、
読むほうとしても大切なことなのではないかと
思えてなりません。
そこらへんのところまで行けたら、
さしあたって本の読み方としては
いい読み方ということができるのではないかと思います。