鷗外と東京

  • 時間

    72
  • 音質

    吉本隆明の講演の前には、
    江藤淳氏による講演
    「鷗外と明治」があった。
    音源は主催者提供。

  • 講演日時:1992年11月8日
    主催:文京区立鷗外記念本郷図書館
    場所:東京大学 安田講堂
    収載書誌:弓立社『吉本隆明全講演ライブ集 第10巻』(2005年)




鷗外は、文学者、軍人、医学者と
3つぐらい面倒くさい衣を着て、
たいへん我慢に我慢を重ねた生涯を送った人だと思います。
そして最後に、「えいっ」と、
「東京もいらない、官庁もいらない、軍人もいらない」
というふうになって、
「岩見の人、森林太郎というのだけでたくさんだ」
という遺言をして亡くなる。
どれをとっても一流の3つの衣が、
もう重たくてやりきれないということになって、
ぜんぶほっぽり出しちゃったというイメージで理解すると、
たいへん理解しやすいような気がします。
ここらへんの交錯し錯綜するところが鷗外の全体像であり、
また東京に対する鷗外の私的な好みと
公的な見解とのありどころだったんじゃないかというふうに
思われます。