日本農業論

  • 時間

    214
  • 音質

    講演は午前をかけて行われ、
    午後の討議・質疑応答を含め
    約3時間半にわたる全編収録。
    音源は主催者提供。客席から録音。

  • 講演日時:1989年7月9日
    主催:雑誌「修羅」同人
    場所:長岡短期大学
    収載書誌:弓立社『吉本隆明全講演ライブ集 第10巻』(2002年)




日本の農業が当面している問題から、
日本の農業の歴史的問題と、それから
一般に農業はどうあれば理想的な状態なのかということを、
いかに浮かび上がらせることができるでしょうか。
農業問題に関する限り、エンゲルスもマルクスも、
個人の欲望や私有という問題をどうするんだと
いうところまで浸透していくだけの理論が
ありませんでした。
それがいま、矛盾をきたして
あらわれているのだと思います。
マルクス主義者や進歩派というのは、
「農業はどうあったら理想なのか」ということが
いえないのです。僕は、
「小さな自作農がそれほどの格差もなく一面に並んで、
農業を自営している」
かたちというのは、かなり理想に近いと思っています。
日本の農業は国有化されればいいとはちっとも思いません。
自立農業にとって利益がある限り、
国有化・共有化したほうがよろしいと思います。