詩魂の起源

  • 時間

    62
  • 音質

    思潮社創立30周年を記念して
    開かれたイベントでの講演。
    音源は客席から録音されたが
    比較的クリアに収録。

  • 講演日時:1986年11月23日
    主催:思潮社
    場所:新宿・紀伊国屋ホール
    収載書誌:思潮社『詩とはなにか──世界を凍らせる言葉』(2006年)




詩が発生するときにまでさかのぼった過去に、
詩はどう考えられていたかというと、
「魂の気配を察知すること」自体が詩であると
思われていました。
言葉に表現する以前の段階で、
ただ気配のようなものがあったとき、
それを察知できるということが
「詩の行為」だと考えられていたということです。
ここから始まって、言葉を使って
他人や対象に魂の在り処をつけてしまうことが、
言葉が介入した以後の詩の表現でした。
平安朝の末期頃まで、たとえば恋愛の場合には、
「相聞」というかたちで詩が存在したわけです。
相聞というのは言葉を使って、
相手に自分を無理矢理にでもくっつけてしまうことです。
ここらへんまでがたぶん、われわれの歴史のなかで、
仏教みたいなものが入る以前における、
詩的な行為の上限と下限だと考えられます。