小林秀雄と古典

  • 時間

    106
  • 音質

    音源について
    はステージから離れた
    客席から録音。
    小林秀雄は、この講演が行われる
    3か月ほど前に亡くなった。

  • 講演日:1983年5月26日
    主催:神奈川県高等学校教科研究会国語部会
    場所:神奈川県政総合センター
    収載書誌:中公文庫『語りの海2 古典とはなにか』(1995年)、弓立社『超西欧的まで』(1987年)




僕らが小林秀雄にかすかに違和感を感じたのは、
敗戦の後でありました。
戦後、こちらは急に戦争から放り出されて、
どうしたらいいかわからないし、また、
どんな思想を真と認めればいいのかわからないで、
たいへん落ち込んだ時期がありました。
そういうときに、小林秀雄が
何か発言をしてくれたらいいな、
そうしたらそこから何か得られるのにという感じで、
ずいぶん待っていたわけですけれども、
小林秀雄は戦争から放り出された青年の心のなかに
もぐりこんでくる発言をしてくれなかった
というように思います。
それでもう、自分でもって自分の落ち込んだところは
つかんでいく以外ないと思いつめて、
そのあたりから自分は違う道を行っているんだな
という感じ方をとったのを覚えています。