『死霊』について
──京都大学にて

  • 時間

    53
  • 音質

    周辺のノイズが入っており、
    音質はあまりよくない。
    質問はひとつひとつが切れており、
    最後に吉本が答えるが、
    この部分も途中で切れている。
    埴谷雄高氏の『死霊』は、
    本講演の前年である1975年、
    26年ぶりに「第五章」が発表されていた。

  • 講演日時:1976年5月15日
    主催:京都無尽 共催:京都大学新聞社・清華短大基礎ゼミ連合・西部講堂連絡協議会・花園大学新聞部・立命館大学一部学芸総部
    場所:京都大学 時計台ホール
    収載書誌:未発表




埴谷雄高さんの『死霊』の世界は、
登場してくる人物が少しも肉体というものを感じさせず、
いずれも観念の権化であるということを
徹底的に体現しています。
なぜこういう作品が成立したかというと、
埴谷さんは、かつて日本の革命運動に
徹頭徹尾政治的に関わり、戦争をくぐって、
徹頭徹尾文学的に再出発するというかたちで
戦後を生きてこられた人です。
革命と戦争をくぐったときに、
肉体は権力のために制圧されるかもしれないけれども
観念だけは自由だ、
観念だけは誰にも奪われることがなかった──そういう
体験が『死霊』という作品の登場人物の
特徴として出てきているのだと思います。