政治と文学に
ついて

  • 時間

    45
  • 音質

    文芸誌「三田文学」の主催。
    録音者の話し声や
    周辺のノイズが入り、
    音質はあまりよくない。

  • 講演日時:1971年5月8日
    主催:三田文学
    場所:慶應義塾大学 三田校舎
    収載書誌:弓立社『敗北の構造』(1972年)




去年の暮れ、三島由紀夫さんが、政治と文学について、
非常にショッキングなあり方を提供してくれました。
「芸術家が実行家に拮抗しうるとすれば、
死を描写するだけでなくて
自分が死んで見せなくちゃだめじゃないか」
というのが三島由紀夫さんの考え方のように思われます。
三島さんは自らその考えを実行されたわけですから、
そこのところで何もいいたくない気持ちですが、
考え方としては
たいへん古い考え方というほかないと思います。
そして三島さんは、文学芸術の創造ということと、
それが書物として流布される過程とを、
うまく区別できていなかったのではないでしょうか。
創造の行為と、それが書物となって流布されることとは、
違うということを、本当の意味ではあまり
考えられなかったと思われるのです。
そのことは、ただ実感的に知っているだけでなく、
想像力を突き詰めていかなければならないことが
あるように思うんです。