自立的思想の形成
について

  • 時間

    63
  • 音質

    岐阜大学での講演。
    音源は客席から録音されたもので
    音質はあまりよくない。

  • 講演日時:1967年10月30日
    主催:岐阜大学
    場所:岐阜大学
    収載書誌:勁草書房『吉本隆明著作集14』(1972年)




私どもの考えでは、〈経済的範疇〉、
いいかえれば〈自然的範疇〉というものは
必ず〈幻想的な範疇〉を生み出していきます。
人間が外部の〈自然〉に関わると、
必ず〈幻想性〉を発生させるわけです。
人間の意識にやってくる〈自然的範疇〉は
必ず〈幻想性〉を伴うから、〈国家の経済的範疇〉は、
必ず〈共同幻想としての国家〉を生み出します。
そういう国家の共同幻想性と本質的に対決しうる
唯一のものは、個人幻想です。
文学芸術に属する個人幻想というものだけが、
本質的な意味で、国家の共同幻想性というものに
対峙することができるわけです。
知識人が、「法的言語に対して〈沈黙の意味性〉でもって
服従している大衆」を、
自分の思想のなかに組み込むという問題が可能であるとき、
かろうじて知識人の共同性としての集団というものが
反体制的でありうるわけです。