しりあがり寿 原作・宮藤官九郎 初監督作品
映画『真夜中の弥次さん喜多さん』
〜映画館へ行こうぜベイべー〜
今日の宿(映画の紹介)  

第4回
夢がちいさくって、いい!


 (この座談会は、映画『真夜中の弥次さん喜多さん』
  公開直前の3月某日に行われました。)


糸井 宮藤さんは、脚本を書くのは
はやいほうですか?
宮藤 はやいってよく言われますけど、
だんだん遅くなってきてますね。
今はせっつかれたら
1週間に1話ぶんくらいは
書けるんですけど。
糸井 1週間に1話書くっていうのは、
けっこうたいへんなことですよね。
ふつうは
何本かぶんのネタをためておいて
出すんですよね?
宮藤 そうですね。
ぼくの場合は、すぐ出します。
いっこずついっこずつ。
糸井 宮藤さんのつくるものって、
テーマはなに? って聞かれたら
困るようなことばっかりですよね。
宮藤 そうなんですよね。
なんなんでしょうね。
「言いたいことがわかんない」
というようなことを
言われることがあるんですけど、
正直、あの、
言いたいこと、ないんですよ。
糸井 くー。
そこがぼくのね、内臓にくるんですよ。
オレ、若いときからずーーっと
「お前には言いたいことはないのか」
って言われ続けてきたから。
言いたいことがあってね、
紙に書けるんだったら
習字で書いてますよね。
宮藤 そうですよね。
習字で書いて壁に貼っときますよね。
糸井 暫定的にはね、
その都度言いたいことはありますよね。
宮藤 そのときそのときありますよね。
言いたいことはいちおうあるんだけども、
かならずしもその言葉には
永久的な責任はもてない、
というノリですね。
ただ、やりたいことは
かろうじてあるので
まだ続けられると思うんですけど。
糸井 あとね、宮藤さんは
「恥ずかしさ」についても
すごく考えてる人だなと思うんですよ。
酔っぱらって若い子に説教するとか
野球見に行って、じぶんのこどもに
あのピッチャーがいかにだらしがないかなんてことを
とうとうと聞かせたりするようなことはしまいと
すごく気にしてるでしょ。
宮藤 見ちゃいますよね、そういうの。
そういう恥ずかしいことは
いつでも、だれでも
やりかねないですから。
若い子に説教しちゃうとか、
気をつけないとやっちゃいますよね。

ドラマで描くことによって
ぼくはじぶんに
言い聞かせてるというか(笑)。
これはやっちゃいけないことだって
じぶんを律してるところが
あるかもしれないです。
じぶんがしたことで
後からじぶんにからかわれるのが
いちばん腹立ちますから。

ぼく、喫茶店に行くと
そこのマスターに
ぜんぶ見られてるような気がして、
『マンハッタンラブストーリー』
というドラマを書いたんです。
主人公である喫茶店のマスターは
店内では
ひと言もしゃべらないんですけど、
お客さんたちの交わす会話に
どんどん感情移入していく(笑)。
糸井 ふふふ。
で、宮藤さんの描くドラマの主人公は
いい具合に夢がちいさいんですよね。
どう言ったらいいんだろう、
主人公は、べつに世界も日本も
相手にしてなくて
今、じぶんの前にいる人たちが
いい方へ向かえばいいな、
ということだけを思って
行動していくんですよね。
しり
あがり
それ、すごいほめ言葉だなぁ。
宮藤 たしかに夢、ちいさいですねぇ。
町内で完結してますからね。
 
糸井 古典的な言い方でさ、
ドラマっていうのは
対立のなかから生まれるんだ、
という言い方がありますよね。
宮藤さんの作品を見ていても
それはあるんだけど
あれについてどう思います?
宮藤 いやぁ、なきゃないでいいのにな、
って思いますよ。
糸井 使えるときは使うっていう感じなのかな。
宮藤 そうですね。
いちおう1時間の話を書くときは
40分くらいのところで
だれかとだれかがぶつかり合わないと
納得いかないでしょ、という、
うすい起承転結の意識はあります。
20ページから30ページくらい書いたときに
ここで、だれかがだれかにキレて、
てんてんてん‥‥、
みたいなことがいっこあれば
みんなドラマだって思ってくれるかな、とか。
平気でそういうのがないまま
書いちゃうときがあるんで。
糸井 でしょうねぇ。
しりあがりさんも、
言いたいことがないといけないっていう
風潮に困ってた人ですよね。
『弥次喜多』はさらに、
描いているシチュエーションも
「おいおい!」っていうものでもあるし。
しり
あがり
ぼく、よく言われるんですけど、
ぼくの漫画には
話を進めるエンジンみたいなものが
ないんですって。
先を読みたくならないって。
宮藤 えっ、それはだれに言われるんですか?
しり
あがり
‥‥編集者とか。
宮藤 え! え!? 今も言われるんですか?
しり
あがり
言われますよぉ。
だってオレ、じぶんでも
途中で読むのやめちゃうくらいだもん。
(と言って、持っていた
 『弥次喜多 in DEEP』を机に戻す)
宮藤
・糸井
(爆笑)
しり
あがり
たしかに、
エンジンないなぁ、と思うんですけど。
宮藤

でもエンジンってかならずしも
必要なものじゃないですよね。
松尾(スズキ)さん*の芝居も
けっこうそうですよ。
わりとたんたんとしてる。
*編集部註:
 宮藤さんの所属する劇団「大人計画」を立ち上げた人物。
 劇団の作、演出、
俳優をつとめる他、
 映画監督、作家としても活躍中。
 映画『真夜中の弥次さん喜多さん』では「ヒゲのおいらん」役 )

糸井 「謎」があれば、エンジンじゃなくても、
たとえば、馬の目の前にぶらさがる
にんじんが見えてれば行けるんですよね。
宮藤 そうなんでしょうね。
しり
あがり
今新たに
真夜中のヒゲの弥次さん喜多さん
という漫画を連載してるんですけど、
そこではそのエンジンを
練習しようと思って。
で、どうしてるかって言うと
かならず最初に人が殺されるの。
宮藤 あはははははは。
しり
あがり
その謎を解くことにしようって。
でも、どうしても
うまくいかないんですよ、それが。
宮藤 ものすっごい
無理してるのがわかりますね。
しり
あがり
むりやりミステリーにしてるんですよ。
だってぼく、そういうの
ぜんぜん好きじゃないんですもん。
えへへへ。
糸井 ‥‥でしょうねぇ。
しり
あがり
本当はちいさな伏線を
はるのが大好きなんですよ。
宮藤 え、大好きなんですか?
しり
あがり
もう、伏線はりまくるの。
で、その伏線を、
散らかしたまんまにしちゃうんだけどさ。
 

(つづきます)


※この連載は、TBS『NEWS23』、
 TBSラジオ『ザ・チャノミバ』でのトークと
 「ほぼ日」での座談会をまとめたものです。



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『真夜中の弥次さん喜多さん』って、どんな映画?
弥次さんと喜多さんは、ペラペラな江戸を離れ、
お伊勢さまを目指す旅にでます。
このコーナーでは、2人の旅のようすを
毎回ちょっとずつお伝えしますね。
おたがいの腕が一体化してしまった
弥次さんと喜多さん。
つながったまま到着したのは
アーサー王が経営するとろろ汁屋さん。
なぜかその店の前には
「DNAを断ち切る伝説の名刀・
 エクスカリバー剣」が
突き刺さっている。
アーサー王
「夜でも、アーサー!」
「この伝説の名刀エクスカリバーを
 引き抜く者はおらんのかなっ?」

(C)2005YAJI×KITA

2005-04-22-FRI

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