「あっ、あれは、バルバじゃないかな?」

前回の取材で、たっぷりシャツを購入し、
シャツ・リテラシーがやけに高くなっていた
われわれ(男子)が、エスカレーター付近で、
めざとく見つけたコーナーがありました。
ちょうどこの取材時、
「イタリア・ウイーク」という
もよおしをやっていた伊勢丹新宿店。
その催事のひとつとして、
バルバの特設コーナーがあったのでした。

バルバ、さすがのかっこよさです。
イタリアのシャツは、身体にフィットして、
ラインをきれいに見せてくれる。
女性たちはこのシャツを、どんなふうに着るのかなあ。

「じつは、イタリアのかたは、こういったシャツの
 襟をしっかり立ち上げて着ることが、
 もう生活化しているというか、
 普通になっているんです。
 作りがしっかりしてますので、
 襟の立ちが、とても美しいんですよ」

えっ。
イタリア女性は、白いシャツの襟を立てる?!
うわー、かっこいいです。

みんなは、どう?
あ‥‥、ハードル、高そう。
そんなに困らないで。

年長のトミタいわく。

「シャツの襟、立てて、着たことがないんです‥‥」

そりゃそうですよね。
うまく説明できないけれど、
ぼくら、そういう文化には、生きていない感じがします。
もちろん日本でも、そういうふうにかっこよく着る女性は、
きっといると思うんだけれど。

「そうですよね。
青山界隈では、見かけることがありますよね。
そういう着方は、
とても“上級者”な感じがします!」

と、20代の、もも。

「もちろん、襟を寝かせても、カッコいいんですよ。
 スーツ使いでも、普段使いでもいい。
 やはりどうしても、バルバっていうのは
 最初は糊がしっかり付いてるので、
 張り感があるんですけれども、
 洗ってるうちに張りが落ちて来て、
 だんだんカジュアル使いになって、
 さらに洗濯を繰り返していくうちに、
 今度はちょっとお部屋で着ようかな、
 というふうに、
 ずっと長年使えるシャツなんです。
 その時々で味わいが変わってくるんです」

そう聞いて、30代のゆーないとが言います。

「わたし‥‥似合うか似合わないかはともかく、
 ちょっと着てみたいっていう気持ちはあります。
 普段着で着れるけれど、ちゃんとしている、
 そんなシャツがほしいから‥‥。
 ただ、それが、自分の身の丈には、合わないかも?
 そんな予感もしているんですけど」

なるほどなるほど。身の丈。
そこは大事かもしれないですね。

さらに、このコーナーでは、
同じくイタリアものである「オリアン」というブランド、
そして「バグッタ」というブランドも見せてもらいました。
そのちがいは、微妙だけれど、はっきり。
バルバよりもシルエットがゆったりしていて
すこしカジュアルな感じで着たい人はオリアン。
逆に、もうすこしデザイン要素がほしいな、
というかたは、バグッタを選ばれるそう。
ちなみに共通しているのは
「普遍的で上質」というコンセプトです。

「普遍的で上質! ああ、
 そうなりたいですよねー!!」

いつもカジュアル路線を突っ走っている
ゆーないとらしからぬ発言を胸に、
一同は本館3階に向かいました。

いろんなブランドの白いシャツがあるんだなあ。

本館3階に降りると、いちだんと
「デザイン」の空気が濃くなります。
このフロアは伊勢丹新宿店のなかでも
とりわけハイセンスで最先端のものが並んでいるのです。
ここを出発点にメジャーになっていくブランドも、
数多くあるとか!

一気に紹介していきますね。

たとえば、「ミナ・ペルホネン」。
「ほぼ日」まわりの女性たちに
とても人気のあるブランド。

「HYKE(ハイク)」は、
“服飾の歴史、遺産を
 自らの感性で独自にを進化させる”
ことをテーマにしていて、
すごーくスタンダードだけど、
かっこよさがある服作り。

ああ、ほんとうにいろいろある!

「このあたりのものは、
 デニムに合わせるだけでも
 カッコよく着れそうですよね」

と、トミタ。
たしかに「今どき」の空気があって、
おんなじようでいてぜんぜんちがう。
デザインってすごいなあ、って感じます。

「もっと存在感のあるようなシャツもありますよ。
 こんなふうに、最近、
 フロントにデザインがあるようなシャツも
 出て来ているんです」

なかなかすごい。これなら、
ちょっと華やかな場所にも、行けそうですよ。
ボタンに凝っていたり、
テープ使いがはなやかだったりもして、
デザインのたのしさ、存在感、
時代性のようなものを象徴する
「ファッション」のなかの、
1アイテムとしての、シャツですよね。

もっともっと、すごいシャツもある!

せっかくなので、もっと「デザイン」のものも、
見せてもらうことに。

「いま、勢いのあるブランドの『マメ』です。
 シルク素材で、レースがポイント。
 繊細なつくりで、普段づかいでもいいですし、
 ちょっとした場にも使えるアイテムですよ」

「こちらは日本のブランドで『ミヤオ』といいます。
 コム デ ギャルソンのパタンナーをしていた
 男性のデザイナーの手によるもので、
 パターンがすごく独特なんです。
 着ていただくと、肩のところにふくらみがあったり」

「こちらは『ミハラヤスヒロ』。
 日本のブランドです。
 ちょっと燕尾ふうに、前が短く、
 後ろが長くなっていますね。
 もう1枚は、後ろがフレアになっていたり。
 短いニットと重ね着をして、
 裾をのぞかせる着方もおすすめですよ」

「こちらは『ファセッタズム』。
 メンズの、ストリート系ファッションが好きな方に
 有名なブランドなんです。
 フリンジ使いがポイントですよね」

「『イーチ・アザー』。
 フランスのブランドです。
 いろんなアーティストとコラボレーションをして
 毎シーズン発表しているんです。
 このシャツは、ロバート・モンゴメリーという
 ロンドンの詩人のポエムが、襟の後ろに」

いやはや、すごい。
ほんとうにいっぱいあるんだなあ。

さあ、着てみようじゃないか!

長くなりました。じつは、もっともっと、
紹介しきれないほど、たくさん見せてもらったのです。
よりカジュアルな本館2階のフロアにも行きました。
取材時に伊勢丹新宿店の店頭にあった
白いシャツの、ほぼすべてを見たんじゃないでしょうか。

3人は、それぞれのシャツに感嘆の声をあげつつも、
あまりにも多様なシャツのかたちを知ったことで、
いったい何を基準に選べばいいのか、
ちょっと混乱をしていました。

いかん。
このままでは「ぼーっ」としたまま、
「よくわからなかった」という結論になっちゃう!

そこで、ちょっと提案です。
着るものってなんでもそうなんですけれど、
自分が好きだと思っても、
人から見たら似合わなかったり、
逆に、自分は関心がなかったけれど
着てみたらすごく似合ったということも、
やっぱりあるわけですよね。
だから「3人がそれぞれピンときたシャツ」に加えて、
おつきあいくださった伊勢丹新宿店の
スタイリスト(販売員)のかたに、
3人の好みを無視してでも
「着てみてほしい」シャツを、
試着用に混ぜておいてもらうのは、どうだろう?

「あっ! それはいいですね!」とトミタ。

「たしかに、じぶんでは選びきれないから‥‥」と、もも。

「意外な自分を見つけられるかも?」と、ゆーないと。

うん、決まり。そうしましょう。

「かしこまりました。
 いろいろお試しいただいたほうが、いいですものね。
 ボトムも合わせて提案させていただきますね」

3人は、これまで見たシャツのなかから、
「あれがいい、これが着たい」というものを挙げ、
そこに、スタイリストの方からの
オススメを加えたラインナップで、
試着室に向かうことになりました。

さあさあ、肝心なのはこれからですよー。
次回、さらにすこしシャツ選びをしたのち、
「試着編」に、まいりまーす!

015-06-25-THU