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2024年4月24日 第181号
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このたび177号~182号は特別に、WEB公開版を作成することになりました。恩田陸さんのインタビューをおたのしみください。今回は第5回。変わらないためには、どうしたらいい?
ここだけのお話
ほぼ日通信WEEKLYオリジナルの読みものです。
~恩田陸さんインタビュー
本を読むたのしみは。
vol.5 変わらないために、変わり続ける
前回は「見えにくい感情も、芸術にしてしまえば昇華され、芸術作品になる」と教えてくださった、作家の恩田陸さんです。


恩田陸(おんだ りく)
1964年、宮城県生まれ。小説家。1992年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞と第2回本屋大賞を受賞。2006年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞、2017年に『蜜蜂と遠雷』で第156回直木賞と第14回本屋大賞を受賞。最新作は2024年3月に発売された『spring』。


──:
バレエには、すごく長い歴史がありますよね。

恩田:
そうですね、はい。

──:
長い歴史を持つものの宿命として、廃れた時期もあったのかもしれないですが。


恩田:
『spring』にも書きましたが、バレエはフランス発祥なんです。じつはそのフランスで、低調だった時代もあったようです。しかし、ロシアをはじめ諸外国からダンサーが来て、盛り返したという歴史があるんですって。

──:
バレエ発祥はロシアと思っていました。


恩田:
バレエのダンスはフランスが最高峰と言われています。しかし外から入ってきた人たちが新しい血を注ぎ込んで盛り返したという歴史があります。
『spirng』の主人公たちは東洋人ですが、東洋の人たちも、これから新しいものを持ち込んで、反映させることができるんじゃないかな、と思っています。そのあたりの思いは、わりとこのお話に込めたつもりです。

──:
歴史の長い活動には、たしかにそういう面がありますね。


恩田:
そうですねぇ‥‥第3章に出てくる七瀬のセリフに〈変わらないために変わり続ける〉というものがあります。私もふだん、小説を書きながら実感しています。これは芸術であれなんであれ、あらゆる分野に通じる「真理」なんじゃないかなと思います。

──:
「いま」を継続するために、変わり続けなきゃいけない。


恩田:
私は、自分で書いてて、なるべく縮小再生産にならないようにと思っています。

──:
ああ、そうなんですね!


恩田:
同じような作品は続けて書かない。ある程度チャレンジしながら書いていきたい。そうしなければならない。これは実感です。

──:
私たちほぼ日も、変わり続けないといけないです。


恩田:
‥‥じつは日本って、老舗の企業が多いと言われてるんですよ。

──:
そうなんですか。


恩田:
老舗って、よく見ているとすごく柔軟です。同じことをやってるようでも、つねにすごくバージョンアップしています。と思ったら逆に、「絶対に変えない」という部分もきちんと持っています。
長く生き残ってきたところは、だいたいそうなんじゃないでしょうか。伝統を守りながらチャレンジし続けることが、何事に関しても「続けていく」コツなんじゃないかと思います。

──:
なるほど、ほんとうにそうです。ありがとうございます。
変わり続けるためには、いろんな刺激をインプットをしなければいけないと思うのですが、恩田さんはふだんは何をたのしんでいらっしゃるのでしょうか。最近はバレエだったのかもしれないのですが‥‥。


恩田:
やっぱり読書ですね。

──:
仕事もたのしみも、本!


恩田:
人の本は最後までできあがってるし(笑)、自分で考えなくてすみますからね。読書がいちばんです。

──:
小説が多いのでしょうか。


恩田:
なんでも読みます。小説も読むし、ノンフィクションもビジネス書も好き。人の作品を読んでるとね、とてもたのしいです。

──:
ほかの人の作品を読んでいるときには「読み手」として読んでおられると思いますが。


恩田:
はい。完全に、そうですね。

──:
書くときはどうでしょうか。「書き手の自分と読み手の自分」がどういう割合で存在するでしょう。

恩田:
うーん、どうでしょうね‥‥「作家は読者のなれの果て」って言葉があるんですけども。

──:
作家は読者のなれの果て。


恩田:
きっとある意味で、自分の書いている本の読者である、というところが、私にはあると思います。こうしてご質問を受けてみるとたしかに、私は読者人格が大きいほうかもしれません。まさに書きながら自分の作品を読者として読んでいるし、人の本を読んでいるときは完全に読者ですし。

──:
では、いちど原稿を書いて提出したらもう、ゲラ(校正刷り)がたのしみだったり‥‥。


恩田:
ゲラ、嫌いなんです。

──:
えっ、そうなんですか!


恩田:
ゲラって校正が入るじゃないですか。

──:
あーーーなるほど。


恩田:
ゲラで間違いを指摘されると、「あ、そうだっけねぇ」って、世界一、無力になった気がするんです。書いたらそばから完成しているのなら、作品を突き放して見られるのに。



──:
ゲラは作品じゃなくて、問題解決の紙になっちゃうんですね。

恩田:
そうなんです、ほんとに苦手で。いろんな疑問が指摘されて、一気に落とされます‥‥。

──:
それが校正という段階ですから。


恩田:
そうなんです。しょうがないんですけどね(笑)。だからこそ、本ができたときの喜びがひとしおです。




恩田陸さんへのインタビュー、次回につづきます。次回は最終回。
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写真:金川晋吾

恩田陸さんの新著
『spring』(スプリング)

8歳でバレエに出会い16歳で海を渡ったある少年を中心に、ひろがっては集結していくストーリー。いつもとらえどころのない視線で彼が見つめようとしていたのは「この世のカタチ」だった──物語に次々に登場するのは、彼と同時代に生きた4つの視点。芸術とは何か、創作とは何か。何度でも読みたくなる、構想・執筆10年、恩田陸さん渾身のバレエ小説です。

今週の一枚
やぁ、カワイコちゃん。

たびさん

いったい何を注視していてこうなった? 「ぜひうちにきてくれと言われたから来てあげた」という、かわいがられまくりの、たびさんです。

たびさんのドコノコブック
最近の「今日のダーリン」をご紹介
糸井重里が毎日書く ほぼ日目次ページのエッセイです。
「晴耕雨読」って、ひとつの基本のように感じられたけど、実際にはほとんどの人は、そんなことやってない。
雨の日なら雨の日なりの「耕」のかわりの仕事をする。ドラマ『北の国から』の有名なセリフに、「夜になったらどうするんですか?!」「夜になったら眠るンです」というかけあいがある。しかし、ほんとに夜になったら寝るという人はいない。

仕事の成果物は、「貯めておける」と考えられている。また、仕事の準備は「仕事の生産性を上げる」と思われる。だから、雨が降っても、夜が暗くても、できるときにはできることをやっておくほうがいい…とみんなが思っている。
こう書いているぼく自身が、ついついそうやっている。しかし、なにか手仕事の内職でせっせと一本で何円の手間賃仕事をしているわけではないのだから、仕事の成果が「貯めておける」とはかぎらないし、細部まで念入りに準備したことだとしても、まるごと採用されずに無駄になることだって多いはずだ。
世の中、努力の尊さは大いに語られるが、数多くの努力賞をもらって成功した人はいない。名言っぽいから、もう一度言おう。『世の中、努力の尊さは大いに語られるが、数多くの努力賞をもらって成功した人はいない。』

ほんとは、「晴耕雨読」だとか、「夜になったら眠るンです」のほうが、うまく行くことが多いのではないだろうかと、このごろつくづく思うのだ。
取引先のわがままにぜんぶつきあうような仕事だとか、夜の目も寝ずに仕上げたプレゼンテーションだとか、そういうものでの「努力賞」をもらおうとしなければ、それなりにけっこう「健康」な日々が送れるように思う。あの業界やさる業界の人は、早死が多いとかいうけれど、ちょっとそれを自嘲気味に得意そうに言ってなかったか? でも、なんか、それはあんまりよくなかったんじゃないか。

「晴れの日にまじめに耕して、雨の日は本を読む」、そして「夜になったらよく眠る」で、かなりいけると思う。こんな夜中に原稿書いてるぼくが言うのも、矛盾だけど。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「雨読」って、愉しむであり学ぶでしょう。いいことだよね。


──2024年4月20日の「今日のダーリン」より
糸井重里の
ひとことあとがき
じつは、これは難問でもあります。ひっきりなしに仕事のことを考えて、さらに生きやすくしようというのは、だれにとっても当たり前の気持ちかもしれません。しかし、それはもしかしたら、じぶんのできることを過大に見積もっているのかもしれません。102点を求めている可能性もあります。だれかがいつも200点を出しているように見えるから、じぶんもがんばって、と。でーもねー、ちゃんと寝て、雨の日には「雨読」して80点を出し続けていれば、そうとうたいしたことになるんですよねー。それができる「体力、知力、気力」を備えましょうと、先生は言ったんですよ、きっと。
「下手の考え休むに似たり」という、あいたたたなことばもありましたっけねー。

(糸井重里)

今日の「今日のダーリン」もぜひごらんください。
※糸井重里の「今日のダーリン」は、ほぼ日刊イトイ新聞で毎日更新しています。
いまのほぼ日
おすすめのコンテンツを紹介します。
いまのほぼ日、どうなってる?
読みのがしたら、もったいない。
Z世代は、なぜZなのか。
このところよくメディアに登場する「Z世代」はまさにいま就職しようとしている若者たちあたりのことを指すようです。「新人類」などもそうでしたが、社会に出たところでその世代にスポットがあたる気がします。で、いま社会全体が「相手にしている」のがこの「Z」。未来を担っていく人たちがなぜZなのか。どんな気持ちでいるのか。どんな環境で大きくなったのか。うまくつきあうにはどうしたらいいか。Zの次には何が来るのか。ぜ~んぶ、原田曜平さんが教えてくださいます。「初めて世界中の若い世代を同じ呼び名にしていい世代」というところに私(菅野)は大納得しました。
おいしいものが見られるぞ。
私は前から思っていたのですが「おいしい」にはかなり個人差があります。「雑誌に載っていたけどいまいち」とか「友だちの大好物だけど、自分はあんまり」という場合が往々にしてあるのです。逆に自分が大好きでみんなに食べさせているのに「ぽかーん」とされてしまうことのなんと多いことか。で、待ってました、このCLUB。誰かのおすすめがバンバン登場するのです。もちろん合う合わないは、ある。でもポイントは「たくさん」で選択肢が広く、しだいに好みの合う人がわかってくる、そして「しがらみなし」なこと。いつかおすすめメール募集があったらぜひ参加してください。
ほぼ日のページへ

今週のおたより
恩田陸さんのインタビュー、次回が最終回です。


筑摩書房の『ちくま』の連載で恩田陸さんの作品をはじめて読みました。菅野さんの言う「かっこいいけど薄っぺらくない」主人公、良いですよね! インタビューを読んで作品の圧倒的なライブ感の理由が少しわかったような気がしました。おくればせながら『蜜蜂と遠雷』もぜひ読んでみたいと思います。
ほぼ日(この通信も!)などで自分がいままで知らなかった世界を知るのはほんとうにたのしい。でも自分が知ってる世界の話題が出ると知り合いがTVに出たようにうれしいものです。
(てん


『六番目の小夜子』目の前にあります。表紙を見ただけで読んだ気になっちゃうんですよね。なんか、吉田秋生さんの『吉祥天女』とダブっちゃって。これから読みますね。今回の「今日のダーリン」もとてもよかったです。
(かなえゆい)


メルマガを読んでいると、「今週菅野さん、疾走しているなぁ」と思える回がありまして。恩田さんによって化学反応を起こしている菅野さんを文章の中に感じてキャーってなっています。恩田陸さんがすごい。芸術にしちゃえるんだもの。芸術作品を観る意義と話されてるけど、その芸術にしちゃえるんだもの。
(ミウラ)


恩田陸さんのインタビュー、読めば読むほど『spring』が気になっています。どんなふうに物語を紡ぎだしているのか、恩田さんのお人柄も見えるようなインタビューですね。『蜂蜜と遠雷』にも心揺さぶられましたが、私は何度もすれ違い、巡り合うふたりの物語、『ライオンハート』が好きです。
(ひるね)

 

毎回「今週の一枚」たのしみにしてます。カワイコちゃんたちでほっこりします! 「福さん」すばらしい背中で、頼りがいがありますね。もふもふの背中に、ガシッと抱きつきたいです。来週はどんなカワイコちゃんが出てくるのかなぁ?
(ナッツ)


「今週の一枚」をドコノコの写真から選んでいる私も、選ぶ行為じたい、とてもたのしいです。


糸井さんの「今日のダーリン」と菅野さんのあとがきを読んで、ふむふむと考えてしまいました。学ぶ=遊ぶ=生きる そう思うと人生はすばらしい! と。私はこの歳で薬膳を学びはじめ、知識が身につくことの喜びを知りました。でも、ふと立ち止まってみるといまの自分は「学びて思はざる」にかなり偏っているような‥‥薬膳、ひいては中医学の心得は中庸、ほどほどです。まさにバランスですね。
(うつぼ)


金曜日に十数年ぶりに高熱を出して寝込みました。コロナか? インフルか? と思いましたが、幸い、いずれも陰性でホッとした半面、ここ1か月前後の私はひとりでがんばりすぎていたなぁと反省しました。そんなところに「最近の『今日のダーリン』」を読み、さらに自分の状態を振り返ったところです。
新年度がはじまり、力が入りすぎていたように思います。体調を崩すまで止まれなかったなんて、ほんと情けない‥‥。けれど、これも「学び」ですよね。自分の気づきを肯定してくれる内容に、「痛い」けど「納得」です。
(よしゆみ)

今週の「最近の『今日のダーリン』」にもありましたが『世の中、努力の尊さは大いに語られるが、数多くの努力賞をもらって成功した人はいない。』なんですね。私はこれ、耳が痛かったです。猪突猛進するのもいいのですが、自分に正直になって地に足つけてやっていくことだけで、いやそのほうが、いいところに行けるんですね。

今週の恩田陸さんへのインタビューをお読みいただきありがとうございます。私はこの回を読むたびになんだか「うっ」となってしまいます。「伝統を守りながらチャレンジし続けることが、続けていくコツなんじゃないかと思います」そう恩田さんはおっしゃいました。
変わらないために、変わり続ける。こんなパンチラインが『spring』の中にはたくさん出てきます。私は私の、ほぼ日はほぼ日の、変わらないことを続けるために、変わり続けます。そうでなければ、変わってしまうから。次回、最終回となる「恩田陸さん」をおたのしみに。
(ほぼ日 菅野綾子)

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