ウェブマンガ座談会 with 南伸坊さん 僕たち、私たち、デビューはインターネット!
2015年に大好評だった企画
「マンガ家座談会」の第2弾です! 
糸井重里が注目するマンガ家3名をお呼びして、
ご自身の作品のことはもちろん、
いまのウェブマンガに秘められた可能性などを、
たっぷりとおしゃべりしていただきました。
今回はスペシャルゲストとして、
マンガ雑誌「ガロ」の元編集長・南伸坊さんにも
お越しいただきました。
マンガを中心にすえた座談会でしたが、
クリエイティブ全般に共通する話が満載ですよ。
毎日すこしずつ、のんびりおたのしみください。
第3回:読者は誤解する権利がある
糸井
ぼくはながしまさんのことを、
マンガ家として認識してるんですが、
じつは本職が別にあるんですよね。
ながしま
本職はデザイナーです。
会社勤めをしながら、
販促物のデザインをしています。
カメントツ
あ、そうなんですね。
せきの
へぇー。
糸井
ながしまさんについては、
ちょっと説明が必要なんですが、
ほぼ日の企画で
ほぼ日の塾」というのがあって、
ながしまさんはそこの卒業生なんです。
カメントツ
へぇ、そんなのがあるんですね。
その塾では、
具体的になにを教わるんですか?
ながしま
主にライティングのことです。
あと、ほぼ日のコンテンツのつくりかたとか。
糸井
いわゆる文章講座のような場なんですが、
ながしまさんは最後の自由課題で、
「マンガを描いてもいいですか」と
いったそうなんです。
もちろん授業でマンガのことなんて、
まったくふれていないのに。
カメントツ
へぇーー。
糸井
ながしまさんはあのとき、
なんでマンガを描こうと思ったの?
ながしま
うーん、そうですね‥‥。
私、本業がデザイナーなので、
なにか仕事の役に立つかもという気持ちで、
塾に応募したんです。



塾では課題が3つあるんですが、
授業を受けるたびに、
もうどんどん楽しくなってきて。
で、最後の課題のときに
「あぁ、もうこれで終わりかぁ」と思ったら、
もうすべてを出し切りたくなって
「よし、マンガを描こう!」って。
いまのじゃ、よくわからないですね(笑)。
糸井
マンガをやりたかった?
ながしま
たぶん、そうだと思います。
昔に一度だけマンガを
描いたことがあったんです。
そのとき、まわりの人が
ものすごくほめてくれて。
糸井
あぁ。
ながしま
「こんなにほめられたことないかも」
というくらいほめられて‥‥。
そのときの記憶があったんだと思います。
糸井
ほぼ日の連載以外では、
マンガのお仕事はやってないんですか?
ながしま
最近になって、
燃え殻さんの連載の
挿絵を描かせていただいてますが、
基本的にはやってないんです。
出典:文春オンライン「燃え殻さんに聞いてみた。」より
糸井
ながしまさんのマンガを読んで、
伸坊はどう思った?
南
ぼくは糸井さんの書いた文章が、
ああいうふうにまとまるのが、
すごくおもしろいと思ったよ。
だって、糸井さんじゃないみたいだもん。
ながしま
あぁ、そうか。そうですよね。
南
ながしまさんが
「あぁ、いいなぁ」と思った
糸井さんのフレーズから発想を広げて、
ストーリーにしてると思うんだけど、
そのつくりかたはすごくおもしろいと思う。
ながしま
ありがとうございます。
糸井
みんな同じように読んでると思っても、
本当はそれぞれちがうんだよね。
南
そうそう。でも、それがいいんだよ。
糸井
そう、それがいいんだよね。
「ここは重なるな」とか、
「へぇー、こうなるのか」と
思うところがあったり。
南
それに、ながしまさんのマンガって、
なんかホロっとさせるじゃない。
俺、ふだんの糸井さんと話してて、
ホロっとしたことなんて一度もないもん。
ながしま
えぇ、そうなんですか(笑)。
糸井
ぼくがハードボイルドの
つもりで書いた文書でも、
ながしまさんのマンガでは、
一輪挿しみたいに飾られて
「さぁ、ご飯でも食べましょうか」
みたいになったりね(笑)。
ながしま
え、そうなんですか!
すみません、なんか勝手に‥‥。
南
いやいや、それでいいんだよ。
みんなそういうふうに、
それぞれの感性で受け取ってるんだから。
糸井
それにあらゆる読者は、
ながしまさんと同じだと思うよ。
だから、ながしまさんのマンガは、
たくさん共感されてるわけだし。
ながしま
でも、なんだか自分勝手な
解釈をしてしまっているような気も‥‥。
南
読者っていうのは、
いくらでも誤解する権利があるんだよ。
それに、あのマンガはやっぱり、
ながしまさんがつくったものなんだから。
糸井
うん、うん。
南
だって、他の作家だって、
みんななにかを見たり読んだり、
なにかを経験することで、
自分のマンガをつくりだすわけでしょう。
ながしまさんの場合は、
それを「糸井さんの言葉」に限定してるから、
わかりやすいだけで。



登場人物のシチュエーションもいいよね。
離れたところにお父さんがいて、
ちょっと切ないというか、
ホロッとさせるなにかがいつも漂ってる。
その感じがすごくうまいと思うな。
糸井
ながしまさんを担当する乗組員が、
ながしまさんのマンガでよく泣くんです。
「今度の話も泣けるんです」って。
それを聞くたびに
「俺はもともとの文章で、
この子を泣かせてないなぁ」って、
ちょっと嫉妬するもんね。
ながしま
そ、そんな(笑)。
南
でも、ながしまさんのマンガは、
ほんと、なんかホロっとさせますよね。
カメントツさんの「こぐま」も、
最後はホロっとしたんだけどさ。
2人ともそのへんがうまいというか、
いいと思う。



ま、せきのさんの本には、
まったくホロっとしなかったけど。
一同
(笑)
糸井
したら、逆に困る(笑)。
せきの
ホロッとするのは、
母親の書いた帯くらいです‥‥。
糸井
返しがうまい(笑)。
せきの
(笑)
糸井
じゃあ、ちょうど話に出たところで、
最後はこの謎の男をご紹介しましょうか。
ながしま
謎の男(笑)。
せきの
よろしくお願いします。
(つづきます)
2018-04-27-FRI