“Unusual”、ふたたび。
糸井重里からデイヴィッドへの 7つの質問とその回答。  そしてデイヴィッドから糸井への6つの質問
 
アメリカ各地の実業家にお会いになっているデイヴィッドさんですが、 この『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』について、 よく理解を示す「地方」と、 そうでない「地方」があると思われますか?  アメリカ各地の実業家にお会いになっているデイヴィッドさんですが、 この『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』について、 よく理解を示す「地方」と、 そうでない「地方」があると思われますか?
5年後、グレイトフル・デッドは、
どうなっているでしょうね。
そして、あなたは? ブライアンは?

グレイトフル・デッドはいまも活躍しています。
数ヶ月前には、CD73枚組のボックスセットを450ドルで発売し、
4日間で7200セットが完売しました。

バンドメンバーたちもツアー活動をつづけています。
フィル・レッシュとボブ・ウィアーのバンド「Furthur」、
ビル・クライツマンのバンド「7 Walkers」、
ミッキー・ハートも自分のバンドを率いていて、
2011年現在、3グループともツアーをしています。
みんな演奏することが大好きで、
これからもできる限り活動を続けていくでしょう。

ブライアンの会社のハブスポットは、とても好調です。
すでに社員数は300人。
アメリカのビジネス誌「Inc.」 の選ぶ
全米成長企業500社の33番目にランクインするほど急成長しています。

私の方は、いつも音楽ビジネスと
自分の仕事の共通点について考え続けています。

昔は、音楽はレコード会社に独占されていました。
ラジオを通してしか、新しい音楽に出会うことはできませんでした。
しかし今では、主導権はアーチストにあります。
自分の音楽をどこで出すか自由に決められますし、
ユーチューブ、フェイスブック、ダウンロード配信、
ブログ、ツイッターなどのウェブ・サービスを利用し、
新しい音楽コンテンツをひろく紹介しています。

私は音楽ビジネスで起きていることを追い続け、
独立後の自分の仕事を組み立てながら、共通点を見いだしてきました。

私の「ツアー」は、講演活動です。
この4年は、平均すると年50回のライブ(講演)をしてきました。
今年はオーストラリア、スペイン、スウェーデン、オランダなど
各国に講演にでかけました。
いまも、バーレーンへ向かう道中でこれを書いています。

私の「アルバム」は書籍です。この10年で7冊出版し、
先日あらためて、電子書籍だけの新刊も発売しました。
『ソーシャルメディアの新しいルール
 (New Rules of Social Media)』シリーズのプロデュースもしていて、
こちらでは他の著者のものを5冊出しています。

まあ、私の講演は昼間ですし、会場は明るいですし、
観客はくそまじめで飲んでる人なんてほとんどいないんですが、
それでも私の仕事は音楽の世界と驚くほど似ているのです。

私はグレイトフル・デッドと音楽ビジネスから、
どれほど多くのことを学んだかわかりません。
音楽ビジネスが私におしえてくれたことをいくつか挙げてみます。

【粘り】
初めのうちは、講演させてくれるなら無料でもどこへでも出て、
経験をつみ、ファンをつくります。
たとえ講演料が無料だったり、タダ同然であっても、
まず何百本かやる覚悟が必要です。
それがないなら、収入につながるほど上手になれるはずがないので、
はじめからあきらめた方がいいです。
何か技術を本格的に身につけるには1万時間必要だと言われています。
まずその1万時間をやりとげることです。

【動機】
お金じゃないんです。
本1冊の印税なんて1ドルか2ドルだし、
講演料も、はじめたばかりのころにはほとんどもらえない。
お金のためだったら、いまでも大企業で勤めていますよ。

【クリエイティビティーの発揮】
私はロックスターになりたいけれど、音楽の才能がないんです。
でも幸せなことに、毎週、数百人、時には千人の聴衆の前でステージに立ち、
クリエイティビティーを発揮できるすばらしい機会を頂いています。
麻薬みたい。いや、麻薬よりいいですね。

【ファンとの交流】
ライブの後は観客との時間を大切にします。
最後のお客様が帰るまで残って、名刺交換し、
一緒に写真をとり、本にサインします。

【コンテンツを大量に創ること】
本を出すだけではなく、
ブログ、動画、ソーシャルメディアでの交流はマストです。
無料コンテンツは有料コンテンツへとつながり、ファンの拡大は講演依頼、
特に、フィーをしっかり頂ける企業向け講演につながります。
例えば私は、今年の始め、
ビースティー・ボーイズやレディオヘッドをまねて、
「クラウドソース」の動画を制作しました。
観客が撮ってくれた私の講演の動画を集めて編集したのです。
一工夫加えて、公演中に聴衆が発信したツイートも数百入れ込みました。
この動画のおかげで、世界中から講演依頼をいただいています。
これも、元は音楽の世界のアイディアです。
動画のダイジェスト版はこちら
 
【流通】
ビジネス書を出版するには、自費出版、インディーの出版社から出す、
メジャーの出版社から出すという3通りがあります。
私は3つとも経験していますが、著書7冊のうち最近4冊は、
アメリカ最大のビジネス出版社であるワイリー社から出しています。
なぜか? お金ではありません。儲けなら自費出版のほうがいい。
メジャーを選ぶ理由はただひとつ、流通です。
数ヶ月前アムステルダムで本屋にふらっと入ったら、
私の著書の英語版、オランダ語版を両方おいていました。
これは自費出版ではまず無理でしょうね。

【成功の秘訣】
ひたすら働くことです。
講演依頼は迷ったら受ける。飛行機に乗ってでも行く。
狂ったようにブログを更新する。次々出版する。
メディアのインタビューを受ける。
セス・ゴーディンやトム・ピータースなどが各地で講演を続けるのはなぜか?
それが大好きだからです。
彼らが成功しているのはなぜか?
一生懸命働いているからです。
ビジネス誌で頻繁に引用され、熱心なファン向けに
ブログで新しい話題を次々提供しているのです。

──以上のように、音楽ビジネスからはたくさんのことを教わりました。
今の自分があるのは、十代の頃から音楽が大好きで、
何十年もにわたって毎月数本のライブをみてきたからこそだと思います。
本当に幸せなことです。

往年のロックスターのように、
私も今の仕事を70歳を超えてもずっと続けていきたいのです。
そうなるように、今はこのペースでがんばらないといけないと思っています。


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2011-12-16-FRI
 

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