Hobo Nikkan Itoi Shinbun
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン ゼネラルマネージャー塚越隆行さん✕糸井重里 対談
未来のしっぽを つかんでる。  糸井重里のスケジュールには、定期的に 「塚越さんとごはん」という予定が入ります。 塚越さん、というのは ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンの 塚越隆行さんで、糸井とは昔からのなかよし。 でも、その「ごはん」がなぜ定期的にあるのか、 ずっと謎でした。 いったいふたりで何を話していたのでしょうか。 ふたりからは、どんな「未来」が見えているのでしょう。
もくじ 塚越隆行 プロフィール
第1回 ソルーション。 2014-02-19 第2回 やること全体をどう思いましょうか? 2014-02-20 第3回 これが、広告の仕事? 2014-02-21
第4回 仕事の根っこを広げる言葉。 2014-02-24 第5回 自分の声が自分に返る。 2014-02-25 第6回 女神がクマになっちゃった。 2014-02-26
第7回 クラブ活動的なメンバー。 2014-02--27 第8回 広告が簡単になる商品。 2014-02--28 第9回 ふつうの人の役。 2014-03-03
第1回 ソルーション。
糸井 塚越さんとはいつもメシがてらふたりで話してるから、
みんなの前で、となると
ちょっとちがう気分だね。
塚越 でも、糸井さんとは
このところずっと仕事してなかったから、
ようやく「ほぼ日」と
何かできることになったのがうれしいんです。

ぼくらウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンも、
ここにきてすごい勢いで
マーケティングのしかたやいろんなチームとの組み方が
あたらしくなってきています。
まさにいま「ほぼ日」や「東北ツリーハウス観光協会」
いっしょにやってることは、
ぼくらのスポンサードの新しい形です。

糸井 スポンサードというのはつまり、
ツリーハウス1号のことですね。
(東北の「100のツリーハウス」の「1号」は
 『モンスターズ・インク』MovieNEXの協力で
 建設されました)
マーケティングとか経営とか、
そういうことを専門に研究している人たちに比べると
ぼくはずいぶん不勉強なんだけども、
実践としてやってきたことを見ると、
あんがいそうでもないんじゃないかな、という気がする。

世の中は少し前から
「ソリューション」という言葉を、
ものすごく言うようになってきたけど。

塚越 ソリューション。
うん、よく聞くね。
糸井 広告代理店の人たちも、
「社会に向けて何かを伝えることが
 代理店の役だと思っているかもしれないけど
 そうじゃない、
 うちは解決全部が仕事です」
という言い方をしたりします。
塚越 ぼくは、それは、ピンときますよ。
なぜピンとくるのかというと、
糸井さんにはこれまでいつも、
ソリューションを考えてもらってたから。

悩みがたくさんある状態で糸井さんに会って、
メシを食いながら話してると、
糸井さんはぼくの悩みの中から
「ソリューション」を出してくれるんです。
それ、ぼくはいつも感心するのね。
何に感心するかというとね。

たとえば、悩みが5つあるとする。
そうすると、ぼくらはたいてい
5つそれぞれのソリューションについて考えます。
だけど、糸井さんのソリューションは
1個のアイデアで、この5つの問題を解決します。
その「1個」というところが、すごいです。

でも、そのために、
すごく苦労していただいてる。
例えば
「前回のメシのときには考えつかなかったけど
 そのあと風呂に入ってるときに
 出てきたアイデアがあって」
とか言ってくれます。

糸井 ぼくは昔、そもそも広告を作る人間として
塚越さんと知り合いました。
アウトプットでお金をいただいてるのは
ほんとうはコピーライティングだったはずなんだけど、
実際にビジネスの責任者である塚越さんと直に話をしてたから、
お金をもらっても、コピーだけだと
無責任とは言わないまでも、実感がないと思ってました。

事業を興したり経営している人が
いったい何を考えてるか、
そしてぼくはどういう手伝いができるかを
どんどん考えるようになりました。
そうなると、しぜんに
会う回数が多くなっていくわけですが、
それはつまり、仕事じゃなくて会う、
ということになります。
いまみたいに、ただ会って
メシを食ってるように見える。

「このコピーで、こういう広告を打てばうまくいきます」
そんなふうに取引きしても、
その会社の何かが解決するように思えなかったんです。
総合的に、自分がそこの会社の人になったように
考えていたら、それがすごくおもしろかった。
塚越 あの、ディズニーDVDプレーヤーなんか
最たるものでしたね。
糸井 そうそう、あのとき(笑)。
塚越さんの会社でDVDソフトを
これから売っていこうというときに、
そんな品目もないのに、
「DVDプレーヤーをつくりましょう」
ということになって、つくるにあたって
OEM(委託製造)でつくってもらいましょうといって
そのメーカーに塚越さんとぼくが。

塚越 営業しにいったんだ(笑)。
コピーライターなのに、なぜ
ぼくとふたりで営業を。
糸井 意味がわからない。
しかも雨の中、ふたりでね。
塚越 そう。傘を持って。
向こうの社長は大喜びですよ、
「糸井さんとディズニーさんが来たのよ」
つって、工場にすぐ電話してた。
あのときって、まだ、VHS主流の時代ですよ。

糸井 そうですよね。
塚越 DVDは出はじめてたけど、
いわゆる「オタク」とか
オーディオビジュアル系にとがった大人たちが
買ってただけでした。
そんな状況で、ぼくらは
ファミリー、子ども向けのコンテンツを
提供していくことになりました。
そんな人たちはまずDVDなんて買わない。
ぼくらもDVDってよく知らない。
これから映画ソフトの供給方法が
どこへ向かうかわからない。
「糸井さん、どうしよう」と相談しました。

これらの、いくつかの悩みをそのときも
糸井さんはひとつのアイデアで返してきました。

「ディズニーのDVDが出るよ、という宣伝じゃなく、
 おおもとにあるDVDプレイヤーが、
 マニアしか使っていないものなんだったら、
 ふつうの人使いやすいものをつくっちゃいましょう。
 それが、いちばん消費者にわかってるもらえる話だし、
 DVDにつながる道のインフラになって
 宣伝にも使える」
糸井さんはそういうソリューションを
つくってくれたんですよ。
糸井 DVDプレーヤーというものが、
まずはすごく難しくとらえられていました。
だいたい何の頭文字か、いまだに知らないです。
塚越 デジタル・ビデオ・ディスクじゃないのかな。
‥‥Digital Versatile Disc?
糸井 なんだろそれ。
‥‥というくらい
ややこしいスタートだったということだね。

(つづきます)
2014-02-19-WED
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