バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。


2 2 2

「パリの路上生活者は
 日本とおお違い?」

 
     
バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
2 2 2
「パリの路上生活者は
 日本とおお違い?」

バブー

今日はパリのSDF(sans domicile fixe)
=ホームレス(住所不定者)のお話。

あまり明るい素敵な話題ではないけれど、
パリに住んでいたら毎日どこを歩いていても
目にするのが、ホームレスなんだ。

とのまりこ

『花の都パリ』と呼ばれるパリ。
美しく素敵な観光地パリを紹介する
という主旨の雑誌やテレビでは
絶対に出てくることのない風景だけど、
実際は、日々の生活のワンシーンを
ホームレスなしで切り取ることはできないほど
あちこちで見かけます。

パン屋の前、スーパーの前、教会の前、
銀行のATMのそば、郵便局の前、
メトロの入り口やホーム。

シャンゼリゼ通りにも、オペラ座にも
サンジェルマン・デプレにも、
ノートルダムにも。
観光地はもちろん、住宅地でも
とにかくいたるところに。

きっと一度でもパリを歩いたことがある方は
この光景を目にしたことがあると思いますし、
まだ雑誌やテレビで紹介される
パリしか知らない方がパリを歩いたら、
かなり衝撃を受ける光景だと思います。

バブー
路上や店の前で座っている人たちは
「小銭が欲しい」と道行く人に声をかけたり、
ダンボールに書いた
メッセージボードを掲げたり。

スーパーに出入りする客のために、
ドアを開け閉めして挨拶をして
小銭の施しを求めたり。

メトロの各車両を回る人たちは、
「私はバブー(仮名)、35歳です。
 仕事も家もありません。
 今晩の食事を得るために、
 どなたか小銭やレストラン・チケットを
 (企業が従業員に配布するランチ用の券)。
 それではみなさん良い旅を‥‥」
などと演説をして小銭集めにまわったり。

色々なタイプがあります。

とのまりこ
このようなパリのホームレス達は
本当に家や仕事がなくて困っている人たちと、
あえて自分の意思で
路上生活をしている人たちと
(なぜならけっこう稼げるから)
2つのパターンがいるということですが‥‥。

今回は細かい社会的背景や事情などは
置いておいて。
日本という世界から、
パリで暮らすようになった一日本人としての
こういうパリの光景を毎日目にして、驚くこと。

それは、パン屋、スーパー、郵便局。
街のあちこちにいるホームレス達が
お店の人に追い出されたりしない、
ということ。

それどころか、
むしろお店の人たちとは顔見知りで
タバコ休憩中の店員たちと
(店の入り口前に出てきてタバコ休憩という
 おフランスあるあるな店員の姿にも
 ビックリ仰天ですが!)
仲よさそうに
おしゃべりを楽しんだりしていること。

そして道行く人たちも
かなり多くの人がホームレス達の
「ボンジュール」という挨拶に答えたり、
小銭を渡したり、スーパーで買ったばかりの
袋の中から食料品をわけたりすること。

もちろん、路上でもメトロでも
無視したりする人もたくさんいます。
でもあからさまに避けたりする人はいないのです。
(この街中でホームレスに遭遇するパリで
 避けずに歩いていたら、
 いつまでも目的地につかないけれど。)

なんだか「あまりジロジロ見ないのよ。」
と大人に言われて育ったり、
どちらかといえば
避けて歩くような雰囲気がある日本とは
全然違うのです。

バブー
小さな子供連れでも、
小銭をポケットから出したり、
言葉を交わしたりする姿も
たくさん見かけるし。

若い女の子がおじさんホームレスに
優しく声をかける姿もよく見るしね。

とのまりこ
パリに住んで14年たとうとする今でも、
日本では見ることのないこの日常の光景に
色々な思いが心をよぎります。

ああこれがパリだなあ‥‥って。

語彙力不足で、どういう感情かは
うまくあらわせないのが
ちょっとモヤモヤ。

バブー

今日のお話は、
特にオチがあるわけでもないし
結論があるわけでもないのですが
毎日の生活の中で通り過ぎる
シーンを眺めながら
まりこちゃんがふと色々なことを考える、
パリのホームレス事情のお話でした。

 


※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!

 

フランス雑貨のお店オープンしました。
バブーくんは日本滞在時に、お店にいます。

「Boîte」(ぼわっと)
東京都杉並区西荻北4丁目5−24
【地図】 【駅からの道順はこちら】

 

2016-10-11-TUE


まえへ
トップへ
つぎへ
illustration:Jérôme Cointre