東京の子。オードリー若林さんからみた「東京」 東京特集
生まれも育ちも東京の方は、
東京をどんな街だと思っているのか。

お話を聞きに行ったのは、
お笑いコンビ、オードリーの若林正恭さんです。

ご出身は中央区入船。

下町で育ち、荻窪周辺で青春を過ごした、
まさに「東京の子」です。

銀座を自転車で駆け巡っていた幼少期から、
六本木はプロレスのリングだという話まで。

クスクス笑ってしまう、
若林さん独特の東京への視点を
全6回でおとどけします。
若林正恭さんプロフィール
第一回 東京出身にみられたことがない。
──
今日はよろしくお願いします。
若林
よろしくお願いします。
──
若林さんのご出身は、
東京のどちらですか?
若林
あのー、中央区の入船という地域です。

駅でいうと、八丁堀駅や新富町駅の近くで、
隅田川も近くに流れています。
──
築地の近くですよね。
若林
そうです。

僕、いままで地元を聞かれても、
入船だとどこかわからない人が多いので、
「築地です」と答えていたんですよ。

でも築地の近くでロケをしていたら、
「お前、築地じゃねぇだろう。入船だろう」って、
築地のおっちゃんに言われてしまって(笑)。
──
(笑)
若林
「入船だとわからない人も多いんですよ」と
言っても、許してくれなくて。

築地の人たちは築地にプライドを持っているから、
きちんとしてほしいみたいなんですよね。
──
では、ほぼ日では
きちんと「入船出身」と書きます。
若林
いいですかね。

よかったです、やっと、ちゃんと言えて。
──
ずっと入船に?
若林
いいえ。中学一年生のときに、
中央区入船から杉並区に引っ越しました。
──
入船での幼少期は、
どんな風に過ごされていたんですか。
若林
うーん‥‥。

入船って、
銀座まで歩いて10分ちょっとだったので、
小学生の時から意味もなく自転車で、
銀座をグルグル走っていました。
──
へえ!
若林
銀座は松坂屋とか三越とか松屋とか
デパートがたくさんあったので、
よく行っていましたね。


僕らの遊び場といえば、
デパートのおもちゃ売り場だったんですよ。

種類豊富な最新のおもちゃを
試しに遊べる場所があったので、
ミニ四駆とかファミコンとか、
たくさん遊びましたね。


デパートの屋上に友だちと行って、
ただただ座ってしゃべったり。
──
すごいですね。

とても都会的な遊び方ですね。
若林
いま思うと、そうですね。

あとは隅田川沿いでもよく遊びました。

ああ‥‥。

なんかいろいろ思い出してきました。

隅田川で凧揚げしたり、
晴海まで行って釣りをしたりしてましたね。

懐かしいなあ。
──
下町エリアが遊び場だったんですね。
若林
入船、築地、深川、門前仲町とか、
下町の空気が色濃く残る場所で遊んでいましたね。

当時は町内会の集まりがありましたし、
お祭りの日の神輿や縁日に、
気合いが入っている地域でした。


でも僕、東京出身にみられたことがなくて、
だいたい驚かれます。

YOUさんと初対面で出身地を聞かれたときに、
「東京です」と答えたら、
「え、島根っぽい」と言われて。
──
(笑)
若林
YOUさんのすごいところは、
僕の母親の出身地が島根なんです。
──
ええっ!
若林
知らずにおっしゃっていたので、
島根っぽさが全面に出ているんでしょうね(笑)。


僕が銀座の横の出身とは
まったく思えない感じだから、
「こんな服もダサくて田舎臭い人が、
 なんで東京出身なの?」とも
周りによく言われます。
──
そんな(笑)。
若林
あと、僕が東京出身だからって、
急に怒る人がときどきいるんですよ。


たとえば都会コンプレックスを持っている
地方から出てこられた方と話していたら、
急に「お前は東京だからそんなゆるいのか」って
怒られるんですよ。

ほんと、急に(笑)。


「東京の人はゆるい」とか、
「東京の人は冷たい」とか、
東京のイメージを押し付けられて、
何もしていないのに怒られるんです。


でも、どう言われても
僕は全然気にならないので、
それが逆に腹立たしいみたいです。

それで、そういう風に急に怒られると、
「ああ、自分は東京出身なんだ」と思います。
──
「東京の人」として怒られたときに、
あらためて東京出身だと思うんですね(笑)。
若林
そうですね。

まあ、でもパッと見でいうと、
一度も東京出身にみられたことがないので、
あんまり東京っぽくないんでしょうね。
(つづきます。)
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「勝っても負けても居心地が悪い」
「いつでもどこでも白々しい」
前作『社会人大学人見知り学部卒業見込』で、
若林さんが吐き出した社会への違和感。

それは、
「競争しなきゃ生きていけないシステム上での、
悩みに過ぎなかったのではないか」と
若林さんは気がついたそうです。

経験したことのないシステムで生きている人たちに
出会おうと、一念発起、キューバへ旅立ちます。

そこでみてきた、社会、人間の生き方、感性、
キューバを旅しながら感じたことを
書き下ろしたエッセイです。

旅の話だけでなく、
自分が暮らす街やこれからの生き方を、
皮肉も交えて語る若林さん独特の視点は、
クスッと笑えるのですが、
よみ終えたあと胸がじんわりとなりました。

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著:若林正恭

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2017-07-20-THU