斉吉さんと、八木澤さんと アンカーコーヒーさんと、糸井重里で 六花亭を訪問しました。
 
第2回 原材料に「シークレット」を。
小田 たとえば、斉吉さんの「金のさんま」にも
「原材料」というものが、ありますね。
純夫 ええ。
小田 みりん、お醤油‥‥いろいろ書いてある。
ここの、原材料のラベルのところに。
和枝 はい。
小田 僕らにもね、まだ親父の時代に
みりん業者さんとの出会いがあるんです。

白扇酒造とおっしゃる‥‥。
河野 岐阜の。
小田 ああ、さすがはご存知だ。
河野 いちおう、味噌醤油屋なので(笑)。
小田 白扇さんのみりんは
三年、寝かせてつくるんですけれども
なかなか売れなくて
やめようかと思ってらっしゃったときに
親父が、たまたまご一緒してね。

話をうかがって、
ちょっとうちで使わせてほしいと言って
カステラで比較したら、
もう、明らかにちがったんですよ。
糸井 へぇー‥‥。
小田 でも、その話というのは、
うちのカステラの
原材料表示のラベルには書かれていない。
糸井 ‥‥というと?
小田 つまり、原材料の表示欄には
小麦粉、みりん‥‥としか出てませんけど、
白扇さんという「シークレット」が
潜んでなきゃダメなんですよ。

ここの、原材料表示のラベルには。
和枝 はぁー‥‥。
小田 まあ、斉吉さんのさんまの佃煮にも
たぶん入ってるんでしょう。

長く、やってこられてるんですから。
純夫 うちのさんまの佃煮には
二十年以上、継ぎ足してきた「返しだれ」を
使っているんです。
小田 そうですか。
和枝 こんどの津波でも、何とか残りまして。
小田 それはよかった。お醤油も、地元で?
和枝 そうです。
小田 それは、いいね。

味噌やお醤油は「土地の味」だから
やっぱり土地のものを使わないと、残念だ。

帯広には、お醤油屋さんいないんですよ。
大豆の産地なのに‥‥。
糸井 小田さん、小田さん。
ここに、味噌醤油屋さんの人がいますよ。
小田 あ、九代目。
一同 (笑)
小田 先ほどおっしゃってた「返しだれ」は
うなぎのたれのような‥‥。
純夫 そうです。
小田 ようするに、天ぷらの油とおんなじで
使った油に足していかないと、
新しい油に足したんじゃダメなんだね。
和枝 ええ。
小田 ぬか床みたいに。
糸井 やはり、そんなに違うもんですか。
和枝 新しい調味料を足しただけですと‥‥
ぜんぜんダメです。
小田 それ、僕らの商売で言うと「小麦粉」だなあ。
あれも、寝かせないとダメなんです。
糸井 小麦粉って‥‥寝かせてるんですか?
小田 たぶん、ワインなんかと同じで
寝かせるという作業は、たぶん味を‥‥。
和枝 (純夫社長に向かって)
あの、あの、しゃべっていい?
純夫 いいよ、いいよ。
だんだん我慢できなくなってきたな。
一同 (笑)
和枝 私たちの「金のさんま」という商品は
冷蔵で売ってるんですが、
常温でも扱える商品にしたいなと思っていて
取り組んでいるんです。

で、今は、保存性を調べるために、
できあがったものを
冷蔵庫でずっと、保存しているんです。
小田 ええ。
和枝 で、そうやって冷蔵しておいたさんまを
社長と母が食べて、
「すごーく美味しくなってる!」と言うんです。

「どうも、おいしい」と。
小田 はい、はい。
和枝 もともと「金のさんま」のつけだれは
祖母の代のものを
母が私に教えてくれたものなので、
味はたしかなんですけど
それでも「なにやら、おいしいぞ」と。

そのことで、昨晩、
盛り上がったばっかりだったんですよ。
小田 ぜひ、そこを売りにしないとね。
和枝 そうでしょうか?
小田 だって、ラベルの原材料表示を見て
真似できちゃうようじゃ、困りますでしょ?
和枝 ‥‥はい。
小田 それが「さいきっつぁん」とこのさんまの
付加価値ですよ。

「50円高いけど、
 ひとあじ違うからこっちにするべぇ」と
思ってもらえなかったら、
やり甲斐、なくなっちゃうじゃないですか。

安く買い叩かれちゃったんじゃさ。
純夫 ‥‥気仙沼の水産加工業というのは
ずっと、そうだったんです。

量販店に流れていく商品しか
つくることができてなかったと思うんです。
和枝 うん。
純夫 うちは、それじゃダメだということで
特化した商品をつくろうと
いろいろ試行錯誤してきたんですけど‥‥。
小田 でも、冷蔵保存のさんまがうまくいったら、
他との差別化になりますよね。
旬の時期に出さないで、
寝かしときゃあ、いいわけだから。

お歳暮に使ってもらったりとかさ。
和枝 そうですね。
純夫 実は「金のさんま熟成」みたいな構想は
ずっとあったんですが
ようやく今、手につきはじめていて。

もう、冷蔵保存はじめて200日くらい
経っているんですけど
10日に一度、消費テストをするんです。

そろそろまた食べる時期なんですが
‥‥うまいんです、これ。
糸井 俺、それ、興味あるなぁ。
純夫 美味しかったんで
手帳に「very good」とか書いたりして。
一同 (笑)
純夫 最終的に「excellent」まで
いったんですが
その上の英語表現がよくわからないので
「excellent」のままですが‥‥
どんどんどんどん、おいしくなってます。
小田 寝かせるというのは、すごいものですよ。
純夫 はい、そう思いました。本当に。

<つづきます>
2012-10-04-THU
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