HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

yacmii刺繍展 しぜんなふしぜん

「yacmii(ヤクミィ)」という名前で刺繍をしている
ひとりの女性がいます。
彼女がつくる刺繍は、
何色もの糸が何重にも重ねられるのが特徴です。
なにもそこまで‥‥と思わせるほど何針も、
縫い固められてうまれる作品のなかには
立体的にたちあがり「自立」するものもあります。
丹念に、繊細に、
刺繍という表現・技術と向き合う彼女のことを
勝手ながら敬意を込めて、
「刺繍人(ししゅうびと)」と呼びます。

そんな刺繍人との出会いについて、
まずは糸井重里が話します。
続くインタビューは、浜松にある刺繍人のアトリエにて。
たっぷりと、うかがってきました。
どうぞゆっくりと、お読みください。

yacmii プロフィール

プロローグ
yacmiiさんとの出会い

10月27日からTOBICHI②を会場に
刺繍作品の展覧会、
「しぜんなふしぜん」がはじまります。
ほぼ日にははじめてご登場の、
yacmii(ヤクミィ)さんがつくり手です。

ことの発端を最初にお話すると、
この展示のきっかけは
yacmiiさんご自身の
いわゆる「持ち込み」でした。
※基本的に、TOBICHIではほぼ日がお声がけして
作家やグループにコンテンツを持ち寄っていただいています。

「好きな人とか好きなものとは
自分から関わって
一緒にお仕事していきたいな、
っていう思いが強いんです。」
と話すyacmiiさん。
3年前に京都にある
minä perhonen arkistotにて
作品展を開いたときも
ご自分から「やりたい」と発信し、
そのときに見せた作品が
デザイナーの皆川明さんの目にとまったことで
展示が実現したそうです。
「うみのむれ」というタイトルで、
海のいきものたちのブローチが
minä perhonenの棚に並びました。

今回は糸井が彼女の作品を見て、
「やろう」と即決しました。
決め手はどこにあったのでしょうか。
yacmiiさんの刺繍になにを感じたのでしょうか。
糸井に聞きました。
するとグラフのようなものを書きながら
話しはじめました。

じぶんの歌を歌っている

ここに書いた分布図は
横軸の右の方向にいけば
「趣味としての手芸」で、
その反対に左の方向にいけば
「表現」になります。

縦軸は「技術」です。
上は「技術が高い」、反対に下は「技術が低い」。

たとえば幼稚園のバザーとかに
出店される手づくり作品は
この「趣味としての手芸」に入ります。
技術の差はあるだろうと思うので
このあたりでしょうか。

それっていわば、カラオケみたいなものですよね。

彼女の作品を見たときに、
カラオケじゃなくてじぶんの歌だとおもったんです。

もちろん、趣味としてたのしむ手芸を
悪く言っているわけでないのは
当然のこととして、ですが。

yacmiiさんの作品は、
「表現」の側にあるな、と。
このグラフで言うと
この位置ですよね。

「お花はきれい」というような一般的な美意識や
ふつうの価値観でつくられた作品は、
手に入れようとか見に行こうとか
わざわざ動こうとは思いにくいですよね。

「趣味としての手芸」ではなく、
この「表現」の領域にあるということが
すごく重要なんです。

ただし、たとえ「表現」側にあっても
技術が低かったら‥‥
それはもう「困ったちゃん」ですから(笑)。

彼女の作品はそうじゃない。
技術はもちろん高いし、
きちんと「表現」の作品なんです。

最初にぴんときたあの直感は
正しかったな、と思ってます。

糸井が「ぴんときた」のは
昨年2016年の7月のこと。
それから1年以上の準備期間を経て、
TOBICHIでの展示が
実現することになったというわけです。

次回からはyacmiiさんの
インタビューがはじまります。
浜松にあるアトリエにおじゃましてきました。

(つづきます)

2017-10-24 TUE

yacmii(ヤクミィ)

静岡県うまれ。多摩美術大学大学院 彫刻科卒業。
2011年よりyacmiiとして刺繍作品を制作。

作家名、yacmiiの由来は
「じぶんのつくる作品が日々の“薬味”になれば」という思いから。

これまでの展覧会には
「ひびの ことこと」展(2013 京都 恵文社)
「うみ の むれ」展(2014 京都 mina perhonen arkistot kyoto)
「けだま」展(2014 東京 銀座月光荘)
「おやすみ おはよう」展(2016 岡山 倉敷意匠アチブランチ)
などがある。

yacmii HP:http://yacmii.com/