その4
それでも地球は回っている。
岩立さんも鈴木さんも、
ラオスの現場のことを言って下さいましたけれども、
私、たぶん、かなり負けず嫌いなんだと思うので、
自分がこうやって生み出していくものが、
環境がいろいろ変わっていくなかで悪くなっていくことに
耐えられないんですね。

それで、もうやめちゃおうかな、とも思うんですけど、
鈴木さんも岩立さんも、
いろんな思いをお持ちになりながら、
長く続けていらっしゃる。
何で続けられるのかなっていうことを、
今日お尋ねしたかったんです。
岩立
やっぱり「大事」だから。
もしそれがなくなっちゃったら、
希望も何もなにもなくなっちゃって、
地球がどんどんどんどん汚れてきて、
痛々しい感じになっていくでしょう?
それでも地球は、回っているんですよ。

だから、諦めたらいけないんじゃないか、
と思っているんです。
つらいですよ、やっぱり。
だって、現実的にやっぱり手仕事っていうのは
どんどんどんどんね、
時代にそぐわなくなってしまって、
普通の人も鈍感になってきちゃって、
どんなものでも平気で使ったりする。
それが元凶というのかな。

もっと普通の人たち、
特別なアートがわかるとか、
そういう人じゃない普通の人たちも、
もうちょっと、手仕事の状況が
変わってきたということに敏感にならないと、
それこそ加速して、
地球が終わるのが加速してっちゃうようで、
すごく怖いように感じるんですね。

こういう仕事ってね、
たとえば「クリエイティブ」とかって、
口では言うじゃないですか。口だけではね。
その「クリエイティブ」って、
どうやった時にできるのかなと思うと、
やっぱり「手」から
出て来るんじゃないかと思うんですよね。

その「手」がおろそかになってしまったらば、
クリエイティブなものはできなくなっちゃう。
コンピューターを使ってもできません。
やっぱり、今、みんながちょっと、
本末転倒してるところがあるかなと思います。

だから、谷さんには、やっぱり大変でも、
見栄だけでもいい、
やってるようなふりでもいい、
手仕事を続けてもらいたいと思ってるんです。
みんなの未来のためにと思って。
鈴木
谷さんとこの間も2人で話したんですけど、
谷さんは今、現地の状況とか、
非常に大変な時期なんだと思うんですよね。
それで、みんなに問いかける気持ちも
とても強くあるんだと思うんです、ほんとうに。

どんな仕事でもそうだと思うんですけど、
ものを作ってる人間、
ある程度自覚的に仕事をしてる人間にとっては、
難しすぎる時代だと思うんですよ。

本気になって仕事をしようと思うと、
ありとあらゆる面で
先が見えない状況になってしまいます。
苦しまないものづくりというのは、むずかしい。

谷さんは、私がすごい意志を持って
耐えてるように言われるけど、
私は根性がないほうで、
そもそも根性というものを
持ってもいないと思うんですけど、
じゃあどうやって続けられているかって言うと、
私は非常に支えられて
幸せな状態だからだと思うんです。
すごく苦しそうにしてると、
いろんな人に手伝っていただける。
それで、いまも存在してると思うんです。
私はほとんど注目されてもいない、
されたいとも思ってないものづくりなんですけど、
なぜか手伝ってくれる。

その人たちは、
私に対してストレートに助けるんじゃなくて、
なんかちょこっと、でもすごく何かを感じてくれて、
その体験の上に立って、
何か、仕事の手伝いをしてくれる。

みんなそれぞれ体験は違うけれども、
なにか一点、支え合える、
そういう輪のようなものがあって、
私は存在してると思うんですね。

自分の気持ちだけで、耐えてるとか、
そういうことではなくて、
支えられているんですよ。
2016-02-11-THU
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN