HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN × ORIX Buffaloes
		野球の人・田口壮の新章 はじめての二軍監督
4 しっかり答える野球のQ&Aシリーズ
ピンチのときは、どうすれば?
Q

こんにちは田口二軍監督。

日本とメジャーでプレイをした方に相談できるなんて
夢のようです。

試合中のメンタルについてご相談します。

息子は四年生から軟式野球を始めて、今年は中学進学。
一緒にプレイした仲間と
中学でも一緒に軟式野球を続けます。
昨年のチームの勝率は6割でした。
3回くらいまでは有利に試合を展開していても
いったん崩れるとずるずる点をとられて負けてしまいます。
息子は投手で、応援していても、
動揺が手にとるようにわかります。

プレイ中ピンチをチャンスに変える、
あるいはピンチの時の心持ちは
どうすればいいのでしょう。

(akiko)


A

ご子息、うちの寛と同じ歳ですね。
残念ながらこの年頃まではまだ、生まれ持っての性格が、
ピンチの時ほどそのままプレーに出てしまいます。
むしろ息子さんが動揺を見せるのは、
年齢的にごく自然なことと思います。
もう何年かのち、自分で自分の感情を
コントロールできるようになってきたら、
少しずつ変化がみられますよ。
その子によって違いますが、
だいたい中学の終わりくらいからでしょうか。

僕らプロだって、大きな舞台では脚が震えます。
以前、ワールドシリーズでバントを決めた時は、
手まで震えて試合後のコーヒーが波打っていました。
当時、わたくし、アラフォーです。
なので今は、緊張感のある試合ができるなんてラッキー!
と、親子で喜んでみてはどうでしょうか。

なにごとも、一足飛びにいきなりうまくはいきません。
たとえば今日の試合で息子さんが「プルプル」震えていたら、
次は「プル」くらいでいけたらすごいやん、
万々歳という気持ちが本人にも、そして親にも必要です。
昨日は怖くて投げ込めなかった渾身のストレートを、
今日は、じゃあ、一球だけ投げてみよう、と、
段階を踏むことが大切だと思っています。

「これができへん、あれがアカン」
というマイナス査定ではなく、
どんなに小さくても、できたことをまず喜ぶという姿勢を、
本人にも周囲の大人にもお勧めします。
まずは気持ちの持ちようから変えていきましょう。

もし僕が息子さんの試合の場所にいたら、
きっとこう言うでしょう。
「俺がここにおる! だから大丈夫や!」
根拠はないのです。
けれど、自分のために誰かがいてくれるんや、と思えば、
案外心が落ち着くものなのです。
だからおかあさん、
そう、おかあさんが落ち着いていてください。
こと少年野球では、
親の動揺はダイレクトに子供に伝わります。
子供がピンチの時、たいていの場合、親はパニック状態です。
それを感じた子供は、試合がピンチで
見ている親もピンチという中で、
(あーもうアカン打たれるー)
(そんでもって、家帰ってなんか言われるー)
などと、踏んだり蹴ったり、
いえ、踏まれたり蹴られたりみたいな最悪の気分になります。

どっしり、ゆっくり、いきましょう!



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