- 糸井
- おおーー(笑)。
こーれは、たのしいんじゃないですか。
できましたね。
- ──
- はい、できました。
長い時間がかかってしまいましたが。
- 糸井
- そういうタイプの仕事も、なかにはありますね。
- ──
- ようやくここまできました。
ティーテーブルをつくろうと最初に思ったのが
もう2年以上前のことですから。
そこから長い試行錯誤の期間があって、
「家具をつくるのは、ぼくらには無理かも」と、
あきらめかけていたある日、
糸井さんがポンッと手を叩いて
「そうだ、三脚を使おう」と。
- 糸井
- 「ちょっと三脚もってきて」と。
- ──
- あのとき、なぜ「三脚」と思ったんですか?
- 糸井
- それは、どこから話せばいいか‥‥。
あの、「脚のある家具」がありますよね。
たとえば椅子とか、テーブルとか。
そういう家具に接するときって、
みんなが意識しているのは
面積の広い、からだに触れる部分なんです。
椅子だったら背中の部分とか肘かけとか。
テーブルなら天板。
- ──
- たしかに。
そういう場所に目がいきます。
- 糸井
- ところが、いろいろ見てきて思うのは、
テーブルとか椅子の場合、
「脚がどういう考えで作られているか」
ということが
ものすごく大事なんです。
- ──
- 脚が大事。
- 糸井
- つまり、どのくらい脇役になるのか、
もしくはどのくらい「俺もいるぞ」と言うのか。
「主張」と「謙虚さ」、
「押し」と「引き」。
このバランスをどうとるかが、
ものすごくむずかしいんですよね。
- ──
- ええ。何度も壁にぶつかりました‥‥。
- 糸井
- ぼくら、最初の動機はばっちりなんです。
「小鳥たちがエサをついばみにやってくる
バードテーブルみたいな、
みんなで集えるティーテーブルがほしい。
ピクニックとか、ちょっとしたミーティングに
ひょいっと持っていける、
コンパクトでかわいいテーブルがほしい」
この動機は、たのしくていいものです。
でも、試作を横から見ていると‥‥
やっぱり「脚どうする?」で苦労をしている。
- ──
- はい。
- 糸井
- 一方で、上にのせる天板の部分は、
案外ぼくら、どんどんできるんですよ。
すてきなデザインを誰かと組んで考えるのは
うちの得意なことなんですね。
- ──
- そうでした。
デザインの候補がどれもかわいくて、
絞り込むのがたいへんなくらいで。
- 糸井
- でしょう? そこは得意なんです。
だったら、
そういう得意なことをしっかりやって、
むずかしい脚の部分については
もっと軽くできないかな? と考えました。
とは言ってもねぇ‥‥
どうすれば軽くできるのか。
なかなか答えは見つからないですよ。
その見つからない期間がこれまた長かった。
- ──
- はい。
- 糸井
- で、同じ頃、
うちのリビングにずーっと長いこと
三脚が置いてあったんです。
なぜあるのか、理由はよくわからない。
たぶん家の中で写真を撮ったり、
あるいはセルフタイマーに
使うかもしれないと思って、買って、
置きっぱなしにしてたんだけど‥‥
なんていうの?
置きっぱなしにしてても三脚って、
「私はいませんから」(三脚の声で)。
- ──
- ははははは。
三脚が言ってる。
- 糸井
- うん(笑)。
自然音みたいなものなんですよね。
川のせせらぎがずっと聞こえてるんだけど、
いつのまにか意識から消えているような。
そこに三脚があるのは認識してるんだけど、
「ないことになってる」っていうのが
おもしろいなぁと思ってて。
- ──
- 黒子みたいです。
- 糸井
- そうそう、文楽の黒子。
「誰もいないから見ないで」
という約束ですよね、黒子は。
- ──
- 黒い三脚も同じですね。
- 糸井
- だから、
考えが重なったんですよ。
「テーブルの脚を軽くしたいなぁ」と、
「三脚って黒子みたいだよね」という考えが
あのとき自然に重なって‥‥
- ──
- 「そうだ、三脚を使おう」と。
- 糸井
- うん。
で、その方向で試作をしたら、
案の定いろんな問題が解決しましたよね。
- ──
- 「脚どうしよう?」から開放された上に、
他にないテーブルが誕生しました。
- 糸井
- 三脚はどこにでも置けます。
酷使できる道具です。
だから、どこにでも置けるテーブルになった。
車に積んでおいて公園で使ってもいいし、
ベランダとリビングとか、
家の外と中を行き来もできる。
マグカップをのせても、植木鉢を置いてもいい。
なんなら、
カメラをのせて写真も撮れる。
- ──
- はい(笑)、
もともとはそのための道具ですが。
- 糸井
- 久々に、
「ほぼ日」発の新商品ですよね。
- ──
- ええ。
見たことないものです。
- 糸井
- こんな感じでね‥‥(コップを乗せる)。
- 糸井
- いいんじゃなーーーーい?
- ──
- はい(笑)。
- 糸井
- 撮影は? もう終わったんですか?
- ──
- ええ。
公園とか家のなかで
モデルさんが使っているカットを
いろいろ撮りました。
- 糸井
- いいですねぇ。
とにかく、かわいく使ってるシーンを
届けたいよね。
なんかこう‥‥
たとえば本当にあるすてきな会社とか、
なにかのグループの人たちが
これを手にとってさ、
驚きながら、わいわい使ってみるみたいな。
そういう写真も、あるといいですよね。
- ──
- あー、いいですね。
実際に使っているところの写真。
- 糸井
- バンドの人たちもいいな。
ほら、たとえば、チャットモンチーとか。
- ──
- ‥‥え?
チャットモンチー?
- 糸井
- いや、たとえばですよ。たとえばの話。
彼女たちみたいな女の子が
このテーブルで遊んでる写真が撮れたらさ、
うれしいじゃない?
- ──
- それは、かなりうれしいです。
あのふたりがこれを‥‥。
- 糸井
- ま、むずかしいでしょうから気にしないで。
とにかく、
完成しておめでとうということです。
あとはこれを、たのしく届けましょう。
- ──
- はい。
ありがとうございました。お疲れ様です!
- 糸井
- おっつかれーーーっす!!
※この糸井へのインタビューから2週間後のことでした‥‥。
▲このふたりは?! そしてふたりの前にあるテーブルは?!