私たちは、2014年を
「ちいさな田んぼ」キットの開発期間とし、
まる1年かけて、
東京・青山のビルの屋上で稲を育てました。
都会のまんなかのビルの屋上で
本当に稲が育つのかなあと半信半疑でしたが
ごらんのとおり、
青々と、立派にたくましく生長したんです。
ご指南をお願いしたのは
福島県郡山市の農家・藤田浩志さん。
まず牛乳パックに肥料入りの培土を入れ、
種をまきます。
数日で、かわいらしい芽が出てきました。
ほんとにちっちゃいんですけど、
この段階で、こんなにもうれしいなんて
思ってもみませんでした。
なお、このときに使用した種もみと土は、
「ちいさな田んぼキット」と同じく
放射性物質検査を、クリアしたものです。
牛乳パックへの種まきから、およそ30日。
10センチくらいに育った苗のうち
元気の良いものを4~5本まとめて1株とし
バケツに「田植え」しました。
本物の田んぼで言うと、この状態の苗です。
か細い苗が、ぐんぐん育っていって、
どんどん茎を増やし、太くなっていくんです。
ぼくたちの稲は、ほとんど収穫できたのですが、
水やりを怠ってしまい、
こうして、枯らしてしまった稲もありました。
お水の大事さを知った、悲しい事件でした。
こちらは、藤田さんのところの田んぼ。
勉強がてら、遊びに行ったんです。
いやあ、本物の田んぼは、うつくしかったなあ。
春の気持ちいい陽射しのもと、
ぼくらの田んぼもがんばるぞと思いをあらたに。
ちなみに、ビルの屋上で栽培していたのは合計で9バケツ。
夏場になると、稲がたくさん水を吸うので
いちどの水やりで
これくらいの量のお水を、あげていました。
合計30リットル‥‥ほど。
10リットルのバケツを両手に下げて
屋上への階段を登り降りする姿は
さながら「若かりしジャッキー・チェンの
 きびしい修行シーン」
かのようだったはず(ホントか?)。
毎日、朝イチで水やりに行くんですが
どうしても、誰も行けない日も、ありました。
そんなときに活躍してくれたのが
頼れる相棒・自動水やり器「水やり豊さん」。
(動眼をつけたら名前がほしくなり
 当時、ほぼ日手帳の製作佳境だった田口が
 深夜、うわ言のように命名しました)
青空に向かって、ピンと背筋が伸びた稲!
8月初旬、夏真っ盛りのころの姿です。
出穂(しゅっすい)と言って、
稲穂が出ているの、わかりますでしょうか。
穂が出ているのを見つけたとき、
暑い盛り、毎朝の水やりが報われたようで、
本当に、うれしかったなあ。
この、稲穂についている白っぽいものは
なんだと思いますか?
これはですね、「稲の花」なんです。
出穂した日の朝9時から
「3時間くらい」しか咲かないそうです。
見られたら、ラッキーですよ!
8月下旬になると、
稲穂の「頭(こうべ)」が、垂れてきます。
このときも、かなり興奮。
その場で、チームのみんなに
「垂れてるんだけど!」ってLINEしたほど。
9月に入ると、じょじょに色づきはじめます。
「黄金色(こがねいろ)」って
ああ、こういう色なんだなあって思いました。
この段階まで来たら、
大きく失敗することはないと思いますが、
「台風」にだけはご注意を。
襲来時は、そのつど、
風の当たらないところへ避難させました。
出穂してから40日~45日。
ついに‥‥収穫。つまり、稲刈り!
ごらんください。
みんなの「やったぜ!」的な、この笑顔。
だって本当に、うれしかったんです。
じぶんたちで育てた
じぶんたちのお米がとれたんだーっ!
「こんなにうれしいものだとは、思わなかったなあ」
ほんと、ほんとに、こんなにもうれしいものだとは。
時を同じくして、福島の田んぼでも稲刈りです。
地元の小学生たちに混じって、
大きく育った、本場の稲を稲刈りしてきました。
気持ちよかったし、たのしかったー。
稲を「順手」で握り、根元をカマで刈り取ります。
「ザクッ!」という、音と手応え。
大げさじゃなく「獲物をとった!」感がすごくて。
プロの農家がつくったお米にも、ほれぼれ。
さすが、米粒が鈴なりで
ひと粒ひと粒がぷっくりと太っていました。
刈りとった稲は、根本でしばって
風とおしの良い場所で2週間ばかり乾燥させます。
(雨の当たらない屋外が良いそうです)
ぼくたちは、このようなふうにしました。
けっして、
子泣きじじいの後ろ姿では、ありません。
干してから、約2週間後。
稲穂からお米のつぶを外す「脱穀」をし、
すりこ木で、籾ガラをはずします。
ひとりが「すりこ木」ですり、
もうひとりが、息をフーっと吹きかけると
外れた籾ガラが飛び散ります。
あたり一面、このような感じになります。
けっこう疲れます。
最終的な「とれ高」を計ってみました。
玄米の状態で「300グラム」!
9つのバケツで、この量です。
あれだけ苦労したのに、2合に満たない量‥‥。
お米の大切さが、身にしみました。
もちろん、さっそく炊いて食べてみました。
じぶんたちが
種からまいてつくったお米なんだと思うと、
何だかすごく、うれしい味!
じぶんのお米を、じぶんでつくる。
たのしくて、うれしくて、おいしかったです。
太陽と水さえ欠かさなければ
むずかしいことは、ほとんどありませんでした。
みなさんもぜひ、トライしてみてくださイネ!