はちみつ探検隊 あんづえのおじいちゃんに会う、の巻。 1万年以上前から人が食べていて、いまも変わらない食べかたで親しんでいるもの、それは、はちみつです。ある日、わたしたちはひと瓶の、花のかおりあふれるはちみつに出会いました。それは作家の塩野米松さんからいただいたものでした。日本の花と蜂がもたらすめぐみをもらう旅。はちみつ探検隊、一歩ずつ進みます。 はちみつ探検隊 あんづえのおじいちゃんに会う、の巻。 1万年以上前から人が食べていて、いまも変わらない食べかたで親しんでいるもの、それは、はちみつです。ある日、わたしたちはひと瓶の、花のかおりあふれるはちみつに出会いました。それは作家の塩野米松さんからいただいたものでした。日本の花と蜂がもたらすめぐみをもらう旅。はちみつ探検隊、一歩ずつ進みます。
安杖彪さん、1927年生まれ。角館の桜のはちみつを採る養蜂家。/はちみつ探検隊ほぼ日乗組員3人、S 蜂が好き、O 花が好き、T 酒が好き
全1回 桜のはちみつ。

私たちはちみつ探検隊は、
作家の塩野米松さんから
「訪ねてみて」と教えてもらった
あんづえのおじいちゃんの家を訪ねることにしました。

塩野さんちのほぼ真裏なので、
歩いて3分ほどの距離でした。
あんづえさんは、この土地でずっと、
桜やトチ、アカシアのはちみつを
採っていらっしゃるとのこと。
大手の会社にも納品しているけど、
自分の家にも少しだけ置いていて、
近所のみなさんがときどき買いに寄り、
とても人気があるらしい。
(それを塩野さんがてみやげに
糸井重里に持ってきてくださったことが、
はちみつ探検隊の活動のきっかけになりました)
問題は、秋田の言葉を、
ほぼ日の探検隊の3人それぞれが
あまり理解できないだろう、ということです。

おじいちゃんは昭和2年生まれ。
ディック・ブルーナさんと同じ年のはずです。

いったいどんな方なんだろう。
東京からこんな3人組がやってきて、
驚かないだろうか。
私たちは少し不安になりながら、無言で、
小雨が降る角館の道を3分歩きました。

そして、「安杖」という札がかかった家の
ベルを押しました。
迷いなく押しました。
なぜなら。
家の入口に、かわいいみつばちの
ステッカーが貼ってあったからです。

ピンポーンという音のすぐあとに、
インターフォンごし+奥から直接、
「はいはいー」という元気な声が聞こえてきました。

▲ドアにはみつばちのステッカーが。
▲あんづえのおじいちゃんです。
▲ものすごくパワフルな方です。

見えない。
90歳代に、思・え・な・い!!!
すごくしゃんとしてて機敏で、若い!
60歳くらいの人の動きではないでしょうか。
おしゃべりも早口で反応がよくニコニコで、
もしかして、はちみつによるパワーかしら‥‥?

安心した私たちは、あんづえさんと話をしました。

▲話すときはいつも笑顔のあんづえさん。
▲じまんのはちみつを見せてくださるあんづえさん。

しかし、ここでの会話は、
前半1時間、ひじょうに難航しました。
なぜなら私たちは
おじいちゃんの話す言葉が
覚悟していた以上にわからなかったからです。

「クリスマスはいずもでやるべ?」

いずも‥‥出雲でクリスマス? 
すぐにそれは「いちご」だとわかりましたが、
あんづえのおじいちゃんの、
ものすごくお元気なお声をどうぞお聞きください。

この、おじいちゃんの声を2時間くらい、
シャワーのように浴びていると、
だんだんと言葉がわかるようになってきました。

おっしゃったことをくり返すように
「こういうことですか?」
と訊くと、「んだ」「んだ」と
あんづえさんは応えてくださいました。
そして、蜂の知識のない私たちに対して、
ていねいに教えてくださっていることが
わかりました。

▲いろんな養蜂の資料も見せてくださいました。

最近、昆虫全体が少なくなってきていること。
花粉交配のできる虫が減っているから、
養蜂家はその役目も責任もあるということ。
あんづえさんの蜂はなるべく数を減らさないように、
環境の影響も配慮しながら、
いろんな場所に避難したり移動したりしていること。
角館の桜の季節は必ず、
この場所で花蜜を採っているから、
来年の春はぜひおいで。
自分は年を取ったから、
知っていることをみんなに教えたいんだ、と。

帰るころ、私たちはみんな、
あんづえのおじいちゃんのファンになっていました。

▲すっかりうちとけて。

そして、塩野さんが持ってきてくださったのと同じ、
「角館の桜」のはちみつを、
おみやげに持たせてくださいました。
ひとなめ味をみてみたら、
ふわりと桜のかおりがひろがって、
たいへん華やかなはちみつでした。
これから私たちがはちみつに親しくなるのに、
ぴったりのかわいい味です。
白パンのトーストやヨーグルトに
よく合いそうです。

この桜のはちみつは、きっと人気者になる! 
私たちはそう確信しました。
なんといっても秋田角館の、
あのみごとな桜並木のはちみつです。

▲サンプルでいただいた桜のはちみつです。
中身を検査して、クリアしたのちに瓶詰めします。

でも、今年の春に採れた桜のはちみつは、
大部分を大きいはちみつの会社に納品したし、
近所の人にも配ったし、
残りは「大きな缶ふたつ」しかないとのこと。
そのふたつとも、ほぼ日が分けていただいても
いいものでしょうか?

おじいちゃんは
「ああ、いいよいいよ。残りぜんぶいいよ」
と、言ってくれました。

その貴重な桜のはちみつは、
インターネット販売はせず、
六本木ヒルズアリーナで開催する
11月15日~19日の「生活のたのしみ展」店頭だけの
限定販売となります。

きっと来年の春は、おじいちゃんといっしょに
角館でいっぱいはちみつを採って、
ほぼ日ストアでも販売できるようになるといいなぁ。
それまでに、養蜂のこともたくさん
勉強しようと思います。

あんづえさんに別れを告げ、外に出ると、
雨があがって、虹が出ました。

▲虹が出た。

はちみつ探検隊にいいことがありそうな予感。

(あんづえのおじいちゃんの巻、おわり。
次は、盛岡に移動して、
蜂名人の藤原誠太さんにお会いします。
そこでは、あんづえさん以上に
はちみつパワーを感じることになる、
アドベンチャーが待っているのでした)

 
おしえてBEEKEEPER!
蜂が人にもたらす大きな役割は?
人は、みつばちの食料であるはちみつを
いただいています。
しかし蜂たちは、もっと大きな役割で、
私たちに恩恵をもたらしています。
それは「受粉」です。
多くの植物は、
メシベとオシベの間の受粉ができないと、
実を結実し種を残すことができません。
みつばちは、花を訪れることで
花粉の媒介者となっているのです。
蜂以外に植物の花粉を媒介するのは、
風、蝶や蝿、ハナムグリ、鳥、コウモリなどです。
しかし、貢献度は蜂がいちばん!
もしこの世界から蜂がいなくなったら、
たいへんな食糧難になるとも言われています。
アメリカでは、ミツバチの一種である
マルハナバチが絶滅危惧種に指定されました。
ミツバチがいなくならないように、
養蜂家だけでなくみんなが配慮するような
環境づくりが必要だと思います。
(こたえ:藤原養蜂場 藤原誠太さん)
2017-11-10-FRI