第2回 読売新聞社・須賀幸峰さん     主催、制作進行の仕事。

東京での「ミヒャエル・ゾーヴァ展」は、
本日から開催です。
貴重な機会、ご興味のあるかたは
ぜひ足をお運びくださいませ。

さて今回は、
展覧会をぶじ開催まで導く制作進行のお仕事について、
『読売新聞』須賀幸峰さんのお話をうかがいます。

── 須賀さんのお仕事は、制作進行ということですが
具体的にはどのようなことを
されているのでしょうか。
須賀 まず、『読売新聞』主催ということで、
今回の展覧会を主催している会社の人間として
現場にはいるわけですが、
実作業としては、広報ですとか事務作業、
いわゆる裏方のお仕事ですね。
高橋 須賀さんにはいちばんつらい部分を
担っていただいたんですよ。
須賀 いやいや、そんな(笑)。

── つらいお仕事。
たとえば、どのような‥‥。
須賀 いや、まああの、作品の収集実務ですとか、
契約書を交わしたり、
作品の情報について事実関係を確認したり。
走り回る毎日でした。
── ドイツとのやりとりも。
須賀 はい。英語で大丈夫でしたので。
── 約130点を集めるとなると、
やはりたいへんでしたか。
須賀 そうですね。
紆余曲折というか、
どたばたもありまして。
── どたばた、というと?
須賀 あの、高橋さんもおっしゃってましたが、
ゾーヴァさんの絵は、変化してますでしょ。
── はい、上塗りをするので。
須賀 「卵問題」ですとか。
── 「卵問題」(笑)。
『ちいさなちいさな王様』ですね。

『ちいさなちいさな王様』より
© Michael Sowa
須賀 よくよく見たら、
「あれっ? 卵がないぞ」って(笑)。
── (笑)
須賀 気づいたからよかったんですが、
図録やチラシとかグッズ関係にも、
「卵あり」の絵が使われていたので。
── あ、それはたいへん。
須賀 修正修正、差し替え差し替えで。

── 卵1個で大騒ぎですね。
須賀 そういうのは他にもありまして、
たとえばこの『ケーラーの豚とアヒル』。
Kohlers Schwein mit Ente
ケーラーの豚とアヒル
© Michael Sowa
── 豚がジャンプしてますね。
須賀 これとは別の絵で
『ケーラーの豚』というのがあるんです。
前回の展覧会で展示されたのですが、
それがこの絵とほんとにそっくりで。
てっきり今回もそれがくると思ってたんです。
でも、よくよく見たら、
なんですか左の方にアヒルがいる。
前回の『ケーラーの豚』には、いなかった。
確認しましたら、別の絵だったんです。

── 危なかったですねー。
チラシやポスターで
メインに使われている絵ですよね?
須賀 はい。それをまちがえたら、
たいへんなことでした。
さいわい早い段階で気づいたので
よかったんですが‥‥。
ええと、こちら、こちらは土壇場で。
Geburtstag-Pinguine
ペンギンバースデー
© Michael Sowa
── ペンギン。かわいいですね。
須賀 これが最後のどんでんがえしでした。
── どんでんがえし。
須賀 バースデーカードの絵ですが、
これにメッセージの文字が
「英語版」のものがあって、
その英語版をチラシに印刷していたんです。
── 展覧会に来るのは「ドイツ語版」なのに。
須賀 そう、ドイツ語のほうなのに。
あわてて印刷会社に電話して‥‥。
── ‥‥お疲れさまでした。
須賀 あとは‥‥
── まだあるんですね(笑)。
須賀 この並木道の絵にも混乱しました。
Schone Allee im Osten von Berlin mit Frau
ベルリン東部の並木道
© Michael Sowa
須賀 もともとよく知られている
2作品の並木道の絵があったんです。
その2点を並べて展示したい
ということになりまして
ドイツの方にリクエストしましたら、
来ることになったのが、これと(上の画像)
それからこの絵の2枚になったんです。
Schone Allee im Norden von Berlin
ベルリン北部の並木道
© Michael Sowa
── リクエストしたのとは違ったんですね。
須賀 そうですね、
モモンガらしきものが飛んでいるのは、
ぼくらも知らない新バージョンで、
日本側が混乱してしまって。
── これも、上塗りでしょうか?
須賀 だと思うのですが、謎が多くて‥‥。
この新たなバージョンが、
前の作品に上塗りされたものなのか、
はたまた第三の作品なのかは
今のところわからないのです。
── たいへんだったのでしょうが、
うかがっていてすごくおもしろいです(笑)。
須賀 あとはこういうパターンも。
Die Frau in der Schiffahrt
航海中の女たち
© Michael Sowa
── これも上塗り?
須賀 いや、上塗りだと思い込んでいたら、
新たに描かれた別の絵だったんです。
──
ああ、そういうパターンも。
須賀
あと、こちらも混乱しました。
──
まだある(笑)。
Uberfahrt
渡航
© Michael Sowa
須賀
最初の頃、ドイツから送られてきた一覧表には、
これが「サーファー・シープ」
という名前でリストアップされていたのです。
──
シープ。
「ひつじ」ということですね。
須賀
はい。
ところがこのちいさく描かれた動物。
どうみても、豚なんです。
── あー、ほんとだ、豚です(笑)。
須賀 はい(笑)。
── もう、まちがい探しですね、これは。
いやはや、お疲れさまでした。
須賀 でも終わってみれば、
とても楽しかったなと思っています。
高橋 須賀さん、
まだ終わってないですよ(笑)。

須賀 そうでした(笑)。
まだ、開催前ですからね。
(お話は4月上旬にうかがいました)
高橋 届いていない絵が、まだ1枚ありますし。
── あ、そうなんですか。
須賀 そうそう、そうなんです。
開催の直前に、ゾーヴァさんが
ご自分で持ってくる1枚があるんです。
── ご自分で? なんでまた‥‥。
須賀 ぎりぎりまで、上塗りをしたいそうで(笑)。
── すごい(笑)。
須賀 ぶじ届くようにと、それが心配で‥‥。
ぜったいに欠かせない1枚なので。
こちらなんですが。
Plakat "lieber lesen!" 30 Jahre Kunstmann Verlag
クンストマン社30周年記念のポスター“読書のほうがまし!”
© Michael Sowa
── ポスターの原画ですね。
須賀 じつは今回の展覧会の「あいさつ文」に、
ゾーヴァさんが、
「この展覧会には、ある間違いがあります。
 それを探してみてくださいね」
というようなことを書かれているんですね。
── またそんな、ちゃめっけのあることを(笑)。
須賀 で、言ってしまいますが、
その答えは、ゾーヴァさんが自分で持ってくる
まさしく「その絵の中」にあるんです。
── うわあ、それは欠かせません!
須賀 はい。
まあ、そういう心配もありますが、
きっと大丈夫だと思いますので(笑)、
このゴールデンウィーク、
ぜひ多くの方にゾーヴァさんの原画を
観に来ていただきたいと思っています。
高橋 ほんとに貴重な機会ですので。

高橋さん、須賀さん、
現場のお話を、ありがとうございました。
ちなみに先日、須賀さんからこんなメールが。
「ぜったいに欠かせない1枚は
 ぶじゾーヴァさんと一緒に来日しました!」
どんなふうに「上塗り」されているのか、
観てみたいですよねー。

さて次回は、展覧会の会場だけで販売される
「図録」を編集された方のお話をうかがいます。

(つづきます)
2009-04-29-WED

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