おいしい店とのつきあい方。
七冊目

002 外食産業で働くということ。その4
サービスってなんだろう?

あなたはお客様に「何を約束」しましたか?

コンサルタントとしてのボクのところへ
相談にいらっしゃるお客様に、
昔からこう問いかけていたものでした。

約束を守るコトでお客様からの信頼を得る。
信頼が人気になって、
それが売上になっていくから
人はいろんなことを約束しようとがんばります。

営業時間をはっきりさせて開店、閉店の時間を守る。
今でこそ当然だけど、
飲食店が産業として認められる以前は
当たり前ではなかったこと。
定休日を決め守るコトもそう。
提供できる料理を価格と一緒に明記して、
メニューを作ること。
そしてそのメニューに、どういう形の商品なのか
ひと目で分かるように写真やイラストをのせること。
どれもお店の人たちがお客様にする約束です。

そのうち、飲食業はサービス業なんだから、
サービスをよくしなくちゃいけないと
言われるようになります。

挨拶の仕方。
お客様の出迎え方、そしてテーブルへの案内方法。
接客用語に料理の提供方法。
中には、お冷の交換方法や、交換のタイミング。
お勘定の行程から、
「ありがとうございます」とお見送りするまでの
一連の約束。

お客様との約束の集大成が「マニュアル」。
それらの約束をお店の人みんなで共有し、
徹底することが「教育」。
そして、店で働いている人たちみんなが
無理をしないで果たせる約束のことを
「スタンダード」と言うんですよ‥‥。
なんて説明を、飲食店の人にしていた。

みんな、ちょっとでもたくさんの約束をして
お客様をよろこばせようとする。
飲食店同士の競合が激しくなりはじめた1990年代から、
お店の人たちは特に「他のお店が約束しないこと」を
好んで約束するようになりました。

「差別化」をしなきゃいけないという気持ちが、
結果、「できないことも約束する」ようになっちゃった。
特にチェーン店にいくと、料理の提供が遅れたり、
サービスが行き届かないと
お客様から叱咤をうけるコトが多くなって、
レストランの人たちは疲れて果てていたりする。

「外食チェーンの中で、
サービスがいいと感じるお店はどこですか?」
という質問をさまざまな調査会社がおこなっています。
ここ10年ほど。
その結果はおどろくほどに似ていて、
その上位に必ず顔をだすのが「スターバックス」。
飲食店の人たちはその結果にびっくりします。
だって、スターバックスはセルフサービスのお店。
注文するのも立ったままなら、
お金を払って商品ができるのを待つのも
立ったままという店。
出来た商品をお客様みずからとりにいき、
テーブルまで運んで飲んで、飲み終わったら片付ける。
どこにもサービスの要素はないのに、
なんでそれでも利用する人は
「サービスがいい」と感じるんだろう‥‥、って。

理由はスゴく単純です。
だって、スターバックスは
そういうサービスをすることを
一切「約束」していないのです。
お客様に出来た商品を運びますと約束してない。
使い終わった食器を片付けますとも約束してない。
約束していないことをしなかったからといって、
サービスが悪いといわれるはずもなく、
かわりに彼らはお客様と会話をかわす。
とびきりの笑顔で接客を心がけるし、
なにしろコーヒーに対する知識や経験が豊富で、
自分たちが扱っている商品のことを
好きで仕方がないのが伝わる。

料理を運ぶことはただの作業であってサービスじゃない。
使い終わったテーブルを片付けることも
作業であってサービスじゃない。
本当のサービスというのは、
「お客様とのコミュニケーション」を
丁寧にするということであって、
だからスターバックスのサービスがよいと思われる。

しかも時折、忙しくないときなんかに出来た商品を、
お待たせしましたとテーブルにまで運んでくれたりする。
食器を片付けようとしていると、
そのままにしておいてください、
片付けておきますからと言われたりする。
あぁ、なんてサービスがいいんだろう‥‥、
って感動したりするのです。

出来ることだけ約束をする。
そして時折、約束したわけじゃないことをしてあげる。
ほら、「何をお客様に約束するか」は
とても大切なことでしょう‥‥、って、
相談の第一段をしめくくる。

ところで、次の3つのお店の中で、一番いいお店はどれ、
そして一番ダメなお店はどれでしょう‥‥、
と、次の話題へと向かっていきます。

●いつも同じようにおいしいお店。
●いつも同じようにまずい店。
●おいしかったりおいしくなかったりするお店。

さて、どの順番でいい店なのか‥‥、
来週答え合わせをいたしましょう。

2017-11-16-THU

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